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作るのは大変でも壊すのは一瞬な件について…

高さ1メートルほどの砂の城に集中していたとき、それは起きた。


 突然30センチほどの砂の塊が飛んできて、私とカスミちゃんの作品に直撃したのだ。


「あーら、ごめん遊ばせ!コントロールが狂ってしまいましたわ」

「素材の砂を土魔法で飛ばして移動させていただけですのよ。決して他意はありませんわ」


 ナターシャさんとイリアさんだった。


 二人によると、自分たちの作品に砂が足りなくなり、波打ち際の濡れた砂を土魔法で飛ばして移動させているときに起きた不幸な事故だと言い張っている。


 明らかにおかしい。


 こんなにそこもかしこも砂だらけなのに、なんでわざわざ私たちの近くの砂を取る必要があるのだろうか。

 しかも、魔法で飛ばして…。


 「アイネちゃん、やっちゃってもいいよね。こんなことするのはローミラール星人とおんなじだよね…」

 カスミちゃんはぶつぶつと物騒なことをつぶやきながら怒りをたぎらせている。

 私もひどいと思うが、カスミちゃんの切れっぷりがかえって私を冷静にさせた。


 さすがにここで親友を殺人犯にはできない。

「落ち着いて、カスミちゃん。私も頭にきているけど人殺しはダメよ。

 とりあえずきちんと言葉で抗議しましょう」


 私はカスミちゃんを落ち着かせると、二人の公爵令嬢に抗議する。

「ナターシャさん、イリアさん。さすがにこれはあんまりです。

 私たちが一生懸命作った作品を壊すなんて…

 きちんと謝罪してください」


「あら、さっき謝ったじゃない」

「それにそんなに怒らなくてもいいでしょ。

 所詮、子供が砂遊びで作った程度のお城や町が、ちょっと壊れただけじゃない」

 明らかに確信犯だ。全く反省の色がない。


「そんなに怖い顔しないでよ。私たちの砂はすぐに回収するわよ」

 二人はそう言うと、衝突からかろうじて生き残っていた部分もごっそり掻き取って、私たちの城を作っていた砂まで持って行ってしまった。


 隣を見るとカスミちゃんが限界だ。

 今にもブラックホールに全てを吸い込ませてしまいそうな形相である。


 私も怒り心頭に発してはいるが、とりあえず親友によるこの惑星の崩壊を食い止める必要がありそうだ。

「カスミちゃん、落ち着いて!

 あの二人には後でたっぷりお仕置きすることにして、この場は耐えましょう」


 私が声をかけると、カスミちゃんの両目からぽろぽろと涙がこぼれた。

 ローミラール星人に赤い月コロニーが破壊されて以来のことだ。

「アイネちゃーん。うっうっ」

「よしよし、悔しいのは私も一緒よ」


 私は3分ほどカスミちゃんを抱きしめて落ち着くのを待った。


「とりあえず、できる限り作り直しましょう。

 まだ、20分以上あるわ」

 カスミちゃんが落ち着いてきたので、提案する。

「そうねアイネちゃん。やれるだけやりましょう。

 こうなったらサイコキネシス全開にしてもいいよね」

「私もそのつもりよ」


 私とカスミちゃんは頷きあうと、壊された砂の城があったところに意識を向け、サイコキネシスで一気に城を再建する。


 怒りと悲しみで力が制御できず、思わずかなり大きいサイズの城ができてしまった。

 カスミちゃんも人が入れるくらいのサイズになっている。


 突然現れたドイツの古城とバッキンガム宮殿に、私たちを見守っていた周囲の生徒は感嘆の声を上げた。

「すげーっ」

「土魔法でこんなことができるなんて…」


 一度作ってイメージが完成していたので、それを再現するのは意外と簡単だった。

 残りの時間で細部を仕上げるとしよう。


 結果、私たちはクラスの代表に選ばれ、何故か二人とも最優秀賞を獲得した。

 講評で受賞作についてコメントした学園長によると、甲乙つけがたい完成度だったので、最優秀賞を二つにすることとしたそうだ。


 どうやって作ったのかサマンサ先生とエンドラ先生から問い詰められたが、怒りにまかせて魔力が増大したことにして何とかごまかした。


 私たちを妨害した二人は、作品を壊したにも関わらず、私たちが壊されたものより更に巨大な作品を仕上げ、さらには最優秀賞をダブル受賞してしまったことに、むなしく呆然としていた。


 そして、帰りの道のりは、私たちの災難を聞きつけて憤るキャスバル王子やアーサー君たちのおかげで、カスミちゃんもかなり冷静になれたようだった。

 やはり、他人が怒っているのを見ると自分は冷静になるのだろうか。


 しかし、これであの二人を許すつもりはない。


 遠足が終わって寮へ帰る道すがら、私とカスミちゃんは夜中に集合して復讐を決行することを約束するのだった。



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