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更に儲かった件について…

 私たちと王子とのやりとりを見ていた他の生徒や先生方まで、私とカスミちゃんの特性サンドイッチと肉まんに興味を示し、ことの経緯を見守っていたのだ。

 そしてその決着を見て、すぐに大銀貨を握りしめ、私たちの所に押し寄せてきた。


「アイネリアさん、カスミさん。私にも売ってください」

 担任のキャスリーン先生まで銀貨を差し出してきた。


 もはや後戻りはできないようだ。


 気がつけばクラスメイトを中心に列ができている。


「カスミちゃん、いくつくらいサンドイッチ作ってきた?」

「お父さんのお昼の分を少し残して、後は全部持ってきたから、あと30個はアルト思うけど…

 アイネちゃんは肉まんいくつあるの?」

「調子に乗って作った分を全部持ってきたから3種類合わせると50個はあったと思うけど…、足りるかな…」


 そうしている間にも、他クラスや騒ぎを聞きつけた他学年の生徒まで混じっているように見える。

 先頭付近の生徒は早く売れと騒ぎ出している。


「仕方がない。売り切れゴメンで、無くなったら勘弁してもらいましょう、カスミちゃん」

「分かったわ、アイネちゃん」


 私とカスミちゃんはとりあえず手持ちの肉まんとサンドイッチをあるだけ販売することにした。


 それから10分もしないうちに、私の肉まんとカスミちゃんの照り焼きサンドは売り切れた。

 しかも、最悪のタイミングで売り切れたのだ。


 目の前の生徒が最後の1個を買ったことを理解し、怒りの炎を目に宿しているのは、ナターシャさんとイリアさんだった。


「せっかく私たちが買ってあげようと思ったのに、本当に使えない人たちね!」

「所詮は平民や冒険者の粗雑な食料だけどクラスメイトのよしみで売り上げに貢献してあげようなんて思った私たちの好意を無にするとは、覚えてらっしゃい!」


 二人は捨て台詞を残すと私とカスミちゃんを睨みつけながら踵を返す。

 そのとき、最後の肉まんを美味しそうに食べているレイモンド王子をうらやましそうに見ていたように感じたのは私の気のせいではないだろう。


 意地とプライドを捨ててまで私たちの肉まんと照り焼きサンドが食べたかったのだろう。

 結果として、私たちはまたしても二人の公爵令嬢のヘイトを稼いでしまったのだろうか。



 結局、二人以外の買えなかった生徒や先生方からは、学園に帰ってからあらためて作って販売することを約束させられた。


 そして当然のように、私も、カスミちゃんも最初に交換して食べた分しかいただけなかった。

 まあ、私たちにしてはただ歩いただけで、魔獣討伐などの運動もしていないので、それほどお腹が減っていたわけではないのだが、カスミちゃんの照り焼きサンドをもう一個食べておきたかった。

 カスミちゃんもカレー味肉まんをもう一つ食べたかったようで、残念がっていた。


 どうしてこうなった…



 遠足で商売することになるとは思ってもみなかったが、この学園ってアルバイトはしてよかったんだろうか…


 こうして混乱と喧騒の中、私たちはお腹よりも懐が温かくなり、お昼休みは終わりを告げたのである。



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