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新入生歓迎遠足のお弁当を作ってみた件について…

 月面コロニーの自分の部屋で、今私は本気で悩んでいる。

 議題は明日のメニューである。


 今世では、未だにお米を見つけていない。

 サラセリアでもアルタリアでも、惑星半周で立ち寄ったいくつかの国でも、お米には出会えなかった。

 そのくせ、小麦は普通に普及しており、小麦粉を材料としたパンやパスタ、ピザなどは存在する。


 今、一番作ってみたいのはおにぎりだが、米がない以上諦めるしかない。


 となると、パンに合うものを作るか、パスタにするか、それともピザにするか…

 買ってきたお肉と野菜を眺めていると何かできそうな気がする。


 カレーに似た香辛料もあるが、ライスがない。


 持ち運びしやすく美味しいものが何かできないか。


 食材とにらめっこすること30分、少し小腹が空いてきたところでひらめいた。

 肉まんはできないものか。


 この世界にはイーストはあってもベーキングパウダーはないので、蒸しパンのたぐいは見たことがないが、できあがりだけ見ればベーキングパウダーを使った蒸しパンも決して不自然な異界の食べ物と言うことはないような気がする。


 ベーキングパウダーの主成分は炭酸水素ナトリウムNaHCO3である。


 これは海水と二酸化炭素があれば何とか自作できそうな気がする。


 従来はアンモニアソーダ法で、食塩水にアンモニアを溶かし、二酸化炭素をバブリングすることでできるはずだが、残念ながらアンモニアがない。

 しかし成分を考えるとアンモニア抜きでも、成分抽出と化学結合操作でできそうな気がする。


 私は早速海岸へテレポートし、食塩をたっぷり含んだ海水を組み、水分を蒸発させ、飽和に近い濃度の食塩水を作る。

 続いて空気から二酸化炭素を抽出して飽和食塩水に無理やり溶かす。


 NaCl+H2O+CO2→NaHCO3+HCl


 本来、強酸性である塩化水素HClが存在する限り、この反応は左へ進むのだが、サイコキネシスで無理やり塩化水素HClを気体として取り出すことで、炭酸水素ナトリウムを合成することに成功した。


 これで蒸しパンができる。


 私は月面コロニーに帰ると、小麦粉約1キログラムを水で練って、作ったばかりのベーキングパウダーを入れる。

 小麦粉が1キログラムなので大さじ4分の3くらいの割合だろうか。

 大さじがないのでカンである。上手くふくれることを祈ろう。


 続いて野菜とお肉を細切れにしてよくこねる。


 味付けはオーソドックスに塩こしょうでつけたものと、トマト風の野菜を入れたもの、そしてカレーのような香辛料を入れたものの3種類を作った。


 キジに包んで原型を整える。

 塩こしょう味は普通に丸く、トマト味は少し角をつけて三角に、カレー風味は長く楕円形に成型し、区別がつくようにしてみた。


 蒸し器は、暇なときに作っておいた銅製のものを使う。


 パイロキネシスで水を沸騰させ、蒸すこと20分。

 蓋を開けるときれいに蒸し上がっていた。


 私は早速オーソドックスな蒸しパンを1つ試食する。

 懐かしい肉まんの味がした。

 何だが久しぶりの前世の味に涙が出そうだ。

 明日はカスミちゃんにもこの感動を味あわせて上げよう。


 私は気合いを入れてドンドン肉まんを作り、蒸して柔らかくしたバランの葉に一つ一つ丁寧に包む。


 気がつくとリュックに入りきれないほど作ってしまっていた。


 入りきれない分は、ヘンリー隊長との夕食にすることにした。


 この日のサラセリア時間の夕方、帰宅したヘンリー隊長は3種類の肉まんに感動していた。


「旨い!これを全部アリアちゃんが考えたのか!」

「いえ、記憶を失う前の故国の料理のようなんです。

 何となく覚えていたので再現してみたんですけど、喜んでもらえてよかったです」


 半分は嘘で半分は本当のことを混ぜ説明した。

 ヘンリー隊長は肉まんの店を開けばそれだけで生活できるのではないかとまじめに提案してきた。

化学式や反応式中の数字が小さくできませんでしたので、ご容赦ください。

よろしくお願いします。

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