新入生歓迎遠足に向けて準備した件について…
ステータス測定後は何事もない学園生活が3日ほど続き、放課後は王子たちと毎日のように、訓練と称して私とカスミちゃんによる指導が行われている。
火曜日は最後の授業が剣術・体術の授業なので、放課後は剣術、水曜日は魔法の授業後なので魔力の扱いや無詠唱の練習をした。
そして今日は、木曜日。
明日の新入生歓迎遠足に備えてカスミちゃんとお買い物である。
といってもこの世界では前世より体力のある人間が多い関係か、鍛錬遠足ではないかと言うくらいの距離を歩くそうだ。
しかも、遠足の最後には何かのテストもあり、次の席替えに影響するという。
今年の目的地は郊外の砂浜で、片道15キロメートルほども離れており、これを早足で2時間半ほどかけて歩ききるそうだ。
往復30キロは12歳のお子様には少々長いように感じるが、例年脱落者が出ることはほとんどないという。
といっても、普段から鍛えまくっている私とカスミちゃんなら、全力で走りきり片道1時間もかからずに目的地へ到達することができる距離でもある。
テレポーテーションでズルする必要も無いだろう。
放課後に、王子たちも一緒に来たがったが、女の子の買い物についてくるのかと嫌そうな顔をしたら諦めてくれた。
ナターシャさんたちに絡まれる前に早々に教室を出る。
余談だが、あれからも毎日のようにナターシャさんとイリアさんから嫌みを言われたり、馬鹿にされたりしているが、成績でも体力でも魔力でも負けていないので全く気にならない。
唯一私とカスミちゃんが後れを取るのはマナーの授業ぐらいだろう。
相変わらず貴族的な作法は苦手なのである。
「アイネちゃん。とりあえず何を買う?」
カスミちゃんに尋ねられる。
「そうね。私はバッグを新調しようと思うの。
今持っているのは冒険者用の肩掛け鞄とリュックサックだけど、7歳のときから使っていたものだからかなりくたびれちゃってるのよね…」
「そういえば私のバッグも古くなってきてるわ。
私もバッグを買うことにするわ」
私たちは二人で街の鞄屋さんに行くことにする。
予算は、土曜日に取ったオオカミの売り上げがあるので、資金に余裕があるのだ。
私たちが入った鞄屋さんは、冒険者もよく使うという実用的な商品を多く取りそろえている老舗だった。
さすがに王都の鞄屋さんは品揃えが豊富だ。
大小様々なサイズとデザインがある。
可愛いデザインのものが少ない代わりに丈夫でしっかりとした作りのものは充実している。
「カスミちゃん、このお店でいい?
もっと可愛いバッグが多いところの方がよくない?」
「ううん、ここがいいと思うわ。
この前の土曜日みたいに冒険者として活動することが今後もあると思うから、見た目よりも実用性を取りたいの」
「そうね、私もその方がいいと思うわ」
私たちはリュックサックとベルトに通すタイプのポーチを購入する。
二人でお揃いの紺色で統一した。
服装は剣術のときにも着る動きやすい服装でパンツルックであるため、ポーチとリュックなら両手がふさがることはないだろう。
続いて、水筒の大小をセットで購入する。
大きい方は1リットル半ほど入るもので、リュックに入れておく予定だ。
小さい方は300ミリリットルほどでポーチに入れておく。
他に、ポーチにはハンカチと財布、飴などすぐに取り出したい品を入れておく。
リュックにはタオルや弁当などを入れておく予定だ。
お弁当用にサンドイッチとお肉の唐揚げを二人で作ることにし、食材も購入しておく。
足りないものは月面コロニーの保管室に取りに行ってもいいが、やはり遠足と言えばお買い物を楽しみたいので、できる限り街で購入していく。
いろいろ考えて買っていたら二人のリュックは食材でいっぱいになってしまった。
これを果たして食べきれるのだろうかと思いつつ、お買い物を終了した。
寮に帰ると、二人で手分けして調理し、お互い明日の遠足のときに分け合うことにした。
カスミちゃんは早速寮の簡易キッチンで調理をするそうだ。
私は、サラセリアでの活動があるので、合間を見て月面コロニーの毎ルームで調理することにした。
明日が楽しみだ。




