新クラスが発表された件について…
火曜日の朝、1年生の教室が並ぶ廊下に新クラスが発表された。
5枚の木の板にそれぞれAからEまでの表示があり、そこに名前が書かれている。
本当に安価な紙がないのは不自由だ。
そういえば昨日のテストも、担当の先生が黒板代わりの白い板に黒いチョークで問題を書き、解答用紙ならぬ解答木板に自分で解答欄を製作して答えを書いていくという手間のかかるものだった。
領地の紙生産はまだ始まったばかりで、未だに厚みを一定にすることができず、品質は満足いく状況ではない。
大量生産もできていない状況で、価格も羊皮紙よりは安いが、決して前世の紙ほど安価ではない。
A4のコピー用紙が500枚で200円程度だった前世の製紙産業は偉大だと思う。
私は寮からカスミちゃんと一緒に登校し、新クラス発表掲示板の前で固まった。
この世界では個人情報とかプライバシーの保護は明文化されていないらしい。
新クラスは成績順に発表されており、私とカスミちゃんがワンツーフィニッシュを決めていた。
ご丁寧に総得点も記載されている。
アイネリア・フォン・ヘイゼンベルグ 6596点
カスミ・レム・ワットマン 6595点
キャスバル・デル・アルタリア 2417点
アーサー・ド・ガリアン 2121点
ロバート・フォン・ヒュッテンバーグ 1958点
………
「アイネちゃん……
これって……」
「ええ、やらかした感あるわよね……」
何がどうなってこんな点になったのか採点基準が分からないので何とも言えないが、3位のキャスバル王子の2倍を軽く超え、3倍に迫る得点である。
めでたく乙女ゲームの登場人物はA組に集まっているが、貴族クラスの一般生徒は1000点を超えるか超えないかした辺りに集中しており、1500点を超えているのは上位の5人だけのようだ。
A組とB組の境界は1002点だったようで、私たちに絡んでくる悪役令嬢2人は、ナターシャさんが1011点、イリアさんが1029点で何とかA組入りを果たしている。
いっそB組に落ちてくれれば学園生活に平和が訪れたかも知れないのにと思いつつ教室に向かうと、更なるショックが私たちを待ち構えていた。
なんと、席順までもが成績順で、好成績な生徒ほど席が前列となっているのだ。
なんと言うことでしょう。
A組は25人、B組の25人、C組D組が33人、E組が34人という構成で、A組は5列の各列5人で座席が決まっている。
当然最前列に私とカスミちゃん、キャスバル王子、アーサー君、ロバート君が座ることになった。
ナターシャさんとイリアさんは最後列だったようだが、教室に入ってきたときわざわざ私たちの席の所まで来て絡んできた。
「あなたたちいい気にならないことね!
所詮平民や冒険者風情のあなたたちに最前列は似合わないわ!!」
「そうよ、ホントはC組以下に行くべき人がA組の最前列にいるなんて許せないわ!
すぐに蹴落としてやるから覚えていらっしゃい!!」
二人ともえらい剣幕であったが、キャスバル王子たちが教室に入ってきたので忌々しそうに私とカスミちゃんを睨みながら自分たちの席へと向かった。
その途中で、王子たちへの挨拶も忘れない。
「キャスバル様、すぐに次のテストでお隣に移動しますので、しばらくがまんしてくださいませ」
「あの山猿たちと一緒で本当にお気の毒です」
「いや、むしろ二人の近くで嬉しいのだが…」
王子の言葉は、二人には届いていないようだった。
かくして私とカスミちゃんは、仲良く二人の悪役令嬢のヘイトを稼いだのである。




