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魔法の実践でやらかした件について… 

「それでは、魔法実習室へ移動します。

 皆さんついてきてください。」

サマンサ先生は先頭に立ってみんなを誘導する。


 実践練習の前にカスミちゃんと打ち合わせがしたい。

 私は移動中の廊下で話しかけることにした。

「カスミちゃん、どの程度魔法を使えることにしようか?」

「様子を見ながらみんなに会わせたらどうかな…」


 カスミちゃんも、昨日の剣術でかなり目立っているから私と同じ考えのようだ。

 ここはあまり目立たない方がよいだろうが、実力を完全に隠すのもどうかと思う。

 私たちが冒険者をしていたことは昨日既に明らかになっているのだから、超能力(魔法)についてもある程度使えた方が自然な気もするのだ。


「それじゃあ、一番上手な子と同じくらいかそれよりちょっと使えるくらいにしておきましょう。

 あまり使えないふりをするのも不自然な気がするわ」

「分かったわ。

 加減はアイネちゃんに任せるね」


 私たちは周りに聞こえない程度に声を小さくして相談を終えた。



 サマンサ先生に案内されて着いた部屋は武道の練習場と同じくらいの広さの縦に長い部屋だった。壁は石づくりでかなり頑丈にできているようだ。床は地面がむき出しになっている。


「全ての魔法の中でもっとも発動しやすいのが土魔法だと言われています。

 それでは私が今から見本を見せます」

 サマンサ先生はそう言うと土魔法の呪文を詠唱した。


「真理の探究者たる我が名をもって命ずる。

 万物の真理より土壁を取り出し、我が前方2メートルの地を高さ1メートル幅3メートル厚み30センチの土壁となしたまえ。

 我が名はサマンサ。エドモンズ伯爵家が三女にして王立学園の教官なり。土壁よ出でよ!」


 サマンサ先生が詠唱を終わると地面が盛り上がり高さ1メートルの壁が出現した。

「どう、みんな分かった?

 それじゃあ次は皆さんに挑戦してもらいましょう。

 皆さんの中で既に魔法を習得している人は手を上げてください」


 サマンサ先生の呼びかけに、私とカスミちゃんは挙手する。

 周りを見るとキャスバル王子とロバートという生徒が手を上げている。

 ロバート君は確かロバート・フォン・ヒュッテンバーグというフルネームで、宮廷魔術師長の次男だったはずだ。

 記憶が不確かだが、アーサー君とロバート君は攻略対象に入っていたような気がする。


「あら、今年は最初から使える人が4人もいるのね」

 サマンサ先生は予想より多い生徒数にご満悦のようだ。


「それでは、カスミ・ド・ワットマンさん。

 皆さんに魔法を見せてあげてください」


 いきなりカスミちゃんが指名された。

 まずい。この事態は想定していない。

 そもそも貴族のエリート子女がこれだけ集まって、4人しか魔法を使えないということ自体予想していなかった。

 更にいきなりカスミちゃんがあたるとは…

 他の人を参考にしようにも魔法を披露したのはサマンサ先生だけなのだ。


 カスミちゃんから狼狽の感情が伝わってくる。

 しかし覚悟を決めるしかない。

 私はカスミちゃんと視線を合わせると頷いた。


 カスミちゃんが一歩前に出る。

「分かりました。やってみます。

 えいっ!」


 かけ声とともにカスミちゃんの前方2メートルに高さ1メートル幅3メートル厚み30センチの土壁が出現した。

 サマンサ先生が作った土壁と全く同じサイズである。


 それと同時に皆は凍ったように固まった。

 最初に口を開いたのはキャスバル王子だった。

「すごいな…

 いきなり無詠唱とは…

 さすが冒険者をしていただけのことはある」


 サマンサ先生が続く。

「カスミさん。魔法はどこで習ったのですか?

 無詠唱で私と同じ壁を瞬時に構築してみせるとは…、私でも無詠唱は学校を卒業してからやっとできるようになったのに、12歳で既に一流の域に達しているのかも知れませんね」


 カスミちゃんは、ことここにいたってやらかしたことに気がつき、なんと返事をしてよいのか途方に暮れている。

 どうする。私は自問自答し答えを探した。


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