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早く食事がしたいと思いました…

 3時間ほどして目を覚ますとなにやら館が騒がしい。

 クレヤボヤンスで周囲を確認すると畑で見かけたおじさんが冷凍焼きイノシシを荷車に乗せて館に入ってくるのが見えた。


 イノシシはこんがりミディアムレアに焼けた上、表面を見る限りまだ凍っているようである。


 更に人間という比較の対象がある状態で見ると、このイノシシの巨大さが分かる。

 3メートルはあるのではないだろうか。


 珍しいもの見たさに、屋敷中の人が中庭に乗り付けた荷車周辺に集まった。


 折しも夕方であり、帰宅した父も一緒である。


 どうやらおじさんは冷凍焼きイノシシ出現という異常事態に不安を感じ、領地一の知識人である父母に意見を聞きに来たらしい。


「突然畑の隅で炎が上がって、慌てていって見たら、荒らされた畑の端っこにこいつが転がっていただよ。

 ご領主様、これはどういうことだべか?」

 おじさんの説明に両親が考え込むがもちろん答えは出てこない。


 そもそもこの世界の常識では人の3倍もあるような巨大なイノシシを丸焼きにする強力な火魔法や冷凍魔法は存在していないと思われている。

 物質の熱運動に働きかけた私のやり方が、この世界の魔法常識を覆したのだ。


 結局苦し紛れに父は神様のせいにした。

「これはきっと、まじめに働いているヨサクに神様がご褒美を与えたのだ。

 畑を荒らすイノシシを懲らしめ、美味しく焼き上げ、肉が傷まないように凍り漬けにしておまえに与えたのだろう。

 ありがたくもらっておきなさい」

「ありがたい話だがや、こんなに食い切れないだよ。

 ご領主様、よかったらもらってくれねーだがや」

 どこの方言か分からない語尾でヨサクが話す。


「分かった。おまえのところで食べきれない分は私が買い取るとしよう」


 父は料理長にイノシシを解体してヨサクと分けるように指示すると、代金として金貨を何枚かヨサクに渡した。

「こんなにもらっていいだか?

 ありがとうごぜいますだ」

 ヨサクは恐縮しながら礼を述べて厨房へイノシシを運び込んだ。



 その日の夕食はイノシシ三昧だった。

 イノシシのステーキ、イノシシのスープ、イノシシのリゾット、イノシシ入り野菜炒め。見るからに美味しそうである。


 しかし私は胎児。

 美味しそうにイノシシを食べる家族の笑顔をうらやましく思いながら、眺めていることしかできない。


 そもそもあのイノシシは私が倒したのだ。

 焼いたのも冷凍したのも私だ。


 でも私だけが食べられない。


 どうしてこうなった……。


 私は一刻も早くきちんと生まれて、美味しく食事ができるまで成長したいと強く願ったのである。


 話のきりが良いところで区切りましたので短くなってしまいました。

 文字数が安定しませんがご容赦ください。

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