黙っていてごめんなさい…
ヘンリー隊長とジョーイさんがフリーズ状態から抜け出すまでたっぷり10分はかかった。
その間、私たちはひたすら黙って動物を飼っていたことを謝り続けた。
動物と言ってもトリケラトプスだけど…
結局翌日にお二人を連れて森に行き、ハクウンたちを紹介することになった。
ついでにギルドにも届けて、一緒に狩りをするための猟犬登録をしておくことにする。
ホントは恐竜だけど、この世界では冒険者と行動を共にする動物は、それが猫であってもネズミであっても猟犬登録しているので問題ないだろう。
翌朝は、隊長が起き出す前にコロニーへテレポートし、2頭をつれてルフルの森にテレポートする。
滅多に人が来ないところだが、狩りに来た冒険者と鉢合わせしないとも限らないので首輪と木製ネームプレートを2頭につけさせる。
ネームプレートには
『ハクウンです。とってもいい子です。かみつきません』
『セキホウです。とってもかしこい子です。角で突いたりしません。』と書いておいた。
これで大丈夫だろう。
寒がりの2頭のためにサイコキネシスで風よけの土壁をつくり、そこで待つように指示してヘンリー隊長たちを迎えに戻る。
最近は2頭とも体が大きくなったせいと毛が伸びたせいで多少の寒さには耐性ができているようだ。
そういえば前世の科学論文で恐竜が恒温動物だったという説を見たことがあるような気がする。
体温を維持するために大型化したという説だ。
確かにハクウンたちは体温が気温より高いようなのだ。
この現象が全ての恐竜に当てはまるのかは分からないが、少なくともこの世界のトリケラトプスは恒温動物なのかも知れない。
私たちは4人で合流すると、まずはギルドへ猟犬登録しに行く。
今日の受付はギルドマスターの娘、ターシアさんだ。
猟犬登録の薄い板に私とカスミちゃんがハクウンとセキホウの名前と種類を記入する。
《猟犬登録証》
使用冒険者 アリア・ベル
猟犬名 ハクウン
猟犬種族 地竜
《猟犬登録証》
使用冒険者 カスミ・ワットマン
猟犬名 セキホウ
猟犬種族 地竜
二人で一緒に登録証を提出すると、ターシアさんの顔色はみるみる悪くなり、ちょっと待つように言うと席をたつ。
タッタッタッタッタ
「おとーーさーーん、大変よ!!!!!」
階段を駆け上がる音とターシアさんの叫び声が聞こえてきた。
「なにーーーーー!」
二階から男性の叫び声が聞こえる。
ドタドタドタッ ズル ドドドドドドッ
「グァッ」
階段をすべり落ちるような後に、うめき声がする。
受付の奥から腰をさすりながらギルドマスターが出てきた。
「二人とも、ちょっと詳しい話を聞かせてもらおうか…」
保護者の二人と一緒にギルドマスター室に案内され、そこで用意した言い分けをよどみなく説明し終わるとランバさんはあきらめたようなため息をついて指示を出した。
「ふぅー。仕方ない。
ターシア、父さんを呼んできてくれ」
「えっおじいちゃんを?」
「そうだ」
「なんで、おじいちゃんなの?」
「お前も知らないのだろうが、父さんは元特級冒険者で、昔地竜確認を報告したグループのリーダーをしていた冒険者だ。」
「「「「えっ」」」」
その場にいた全員が声を揃えて驚いた。
「地竜を確認するには最適の人選だ。
今から、アリアちゃんたちに同行してもらい状況を報告してもらう。
だから、すぐ、元特級冒険者ジルバ・ランザックを招聘してくれ」
改めてランバさんがいうと、ターシアさんはすぐに行動した。
「分かりました。
ただちにおじい…じゃなかったジルバ・ランザックを呼んで参ります」
幾ばくもしないうちにギルドマスター室にジルバさんが現れた。
「アリアちゃんたち、また大変な猟犬を手に入れたようじゃの」
「たいへんって、セキホウたちはとっても可愛いですよ」
「そうです。それにおとなしいし、基本的に草食なんで人間は食べません」
カスミちゃんと私がすぐに反論する。
「それは、見てから判断するとしよう。
とりあえず案内してくれ」
私たちはターシアさんとジルバさんを加え、総勢6名でルフルの森へと向かった。
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