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リベンジ… 

 私とカスミちゃんは装備を確認する。

 しっぽの一撃で吹き飛ばされないように、敢えてスピードが落ちることは気にせず、普段訓練用につけている重り付きの装備を装着する。


 両腕に200kgずつ、胸当てに300kg、背中に300kg、ヘルメットが50kg、両足が175kgずつだ。

 合計すると一人あたり1400kg、二人併せて2800kg


 これくらい重ければ、いかにギガノトサウルスのしっぽといえども簡単には飛ばされまい。

 逆に私たちは、もはや人外とも言えるステータスのおかげで、それほど動きを阻害されない。


「カスミちゃん、用意はいい?」

「大丈夫よ。アリアちゃん」


 私たちは互いにうなずくと恐竜エリアに移動し、ハクウンとセキホウをつれてテレポートした。

 もちろん2頭には戦闘用の角ケースを装着済みである。


 目標の脇腹に傷痕があるギガノトサウルスの群れは意外と簡単に見つかった。

 どうやら縄張りがあるらしく、3年経っても同じエリアにいたようだ。

 相手もこの3年で繁殖したのか数が増え、5匹になっていた。


 若い2匹はあの後に生まれた個体のようだ。

 ということは母竜の敵は残りの3匹。


 私たちを見つけると、5匹のギガノトサウルスはごちそうが来たと言わんばかりによだれを垂らしながらこちらに迫ってきた。


「かすみちゃん。とりあえずリベンジに関係ない2匹には退場してもらうわよ。私が右端の奴を飛ばすから、カスミちゃんは左端の奴をお願い」

「分かったわ。打ち合わせ通り、無関係な奴はサイコキネシスで遠くに飛ばせばいいのね」

「ええ、いくわよ」


 私とカスミちゃんは有り余っている魔力を使ってまずは両端の2匹を遙か彼方へと移動させる。


 このエリアから肉食恐竜がいなくなると、食物連鎖が壊れて生態系に影響するかも知れないので全滅させるわけにはいかないのだ。


 残り3匹。


 私たちはハクウンとセキホウに指示を出し、二頭の背中から地上へと飛び降りる。

「いい、ハクウンは残りの右の奴、セキホウは左の奴に角で突撃よ。」

「「キュイッ」」

 2頭が分かったと言わんばかりに返事をする。


 私とカスミちゃんは真ん中の傷跡がある個体へとダッシュする。


「「「ガウ、ガガァァ」」」

 咆哮を上げながら3匹のギガノトサウルスが迫る。


 私たちが正面で対峙すると、傷跡付きはくるりと反転し、しっぽの凪払いを仕掛けてきた。

 3年前になすすべもなく吹き飛ばされたあの攻撃である。

 私と、カスミちゃんは抜剣せずに地面を踏みしめる。


 ドスゥン


 重い音がして恐竜のしっぽが止められた。


 さすがに体重27トンのしっぽである。総重量2800kgの私たちも、踏ん張っていなければ飛ばされただろう。


 私たちの足は10センチほど地面にめり込んでいた。


 突然自慢の一撃を受け止められ、何が起こったか分からず振り返ろうとする傷跡付きギガノトサウルス。


 その両脇からは、残り2匹のギガノトサウルスが周り込んで背後から私たちを襲おうとしてくる。


 まさに2匹が後ろに回り込んだそのとき、ハクウンとセキホウの角がそれぞれのギガノトサウルスの脇腹に斜め後ろから突き刺さった。


「今よ!アリアちゃん。

 私が押さえておくからやっちゃって!!」

「わかった!」

 私はしっぽをカスミちゃんに任せると抜剣し、ちょうど真ん中辺りからギガノトサウルスのしっぽをたたき切った。


「ギャーーース」

 ものすごい絶叫がした。


 もちろんしっぽを切られたギガノトサウルスの声である。


 しっぽを切られたギガノトサウルスは、かなわないとみて逃げ出した。

 半分しっぽを失ったせいで、上手くバランスが取れないのだろうか。

 よたよたしながら逃げていく。


 脇腹に傷を負った2匹も、リーダーの戦線離脱をみて逃げ出した。


 完全勝利である。

 私たちは最初からギガノトサウルスを殺すつもりはなかった。

 ハクウンたちの敵とは言え、食物連鎖の一部、即ち自然の一部なのだから。


 リベンジはこれにて完了なのだ。


 戦利品は切れたトカゲのしっぽのごとくぴくぴく動くギガノトサウルスのしっぽである。

サイズはでかいけど…


「これ、美味しいのかな…」

 カスミちゃんがしっぽを見ながらつぶやく。


「食べてみれば分かるんじゃないかな…」

「そうだね…

 持って帰って焼いてみようか…」



 私たちは巨大なしっぽを抱えて月面コロニーへと帰還した。


これにて恐竜編は一応終了です。


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