ランホリンクス運搬準備…
昼食をサンドイッチのお弁当で済ませ、私たちはテレポーテーションで移動する。
人気のない草原にテレポートアウトし、そのまま南門に急ぐ。
南門につくと私たちはヘンリー隊長に取り次いでもらった。
5分ほどして、衛兵の控え室からヘンリー隊長があくびしながら出てくる。
どうやら昼食後に昼寝をしていたようだ。
「アリアちゃんたち、今日は早いな…。もう上がりか?」
「いえ、ヘンリー隊長。違います。大きくて変な鳥を捕まえたので、報告とギルドまで運ぶ荷車をお借りしたいと思ってきました」
私は敢えて飛竜とは言わなかった。
あらかじめカスミちゃんと打ち合わせた作戦だ。
あくまでも、偶然突撃してきた飛竜が自爆した事にするためには、少しとぼけて飛竜と気がついていないことにした方がいいと思ったからだ。
「また、何か捕まえたのか!どれくらいの大きさだ?」
ヘンリー隊長はウサギの時の教訓から大きさを先に尋ねてきた。
「ええっと…。カスミちゃん。ちょっと向こうに行って!」
「えっ?何で??」
「あの鳥の大きさは私たちが手をつないで広げても足りないくらいよ。説明するのに協力して」
「あっ、そういうことね」
さすが、精神年齢29歳の転生者仲間だ。
察しがいい。
カスミちゃんは、私から離れるようにてくてく歩くと、15メートルくらい離れたところで立ち止まってこちらを向いた。
「これくらいでいい?アリアちゃん!」
「いいよー。ちょうどそのくらいだと思う」
私たちが何をしているのか分からずにヘンリー隊長は頭の上にクエッションマークを浮かべているような表情になっている。
「アリアちゃん…、何をしているんだい?」
「えっとですね。さっきの鳥ですけど、羽を広げるとここからカスミちゃんのところまでくらい大きかったんです」
今度はヘンリー隊長の頭の上にビックリマークが見えたような気がした。
「なっ、何だって!そんなに大きいのか?」
「しかも今度は生け捕りです」
私が追加情報を提供すると、ヘンリー隊長はいつもの部下に慌てて声をかけた。
「ジョン、一番大きい荷車を出して一緒に来てくれ!」
「はい、隊長」
さすがヘンリー隊長、ビッグラビットの時の轍は踏まない。
今度はジョンさんと一緒に来てくれるようだ。
10分も待つと、前回の時より二回りほど大きい荷車をジョンさんが引いてきた。
道すがら、私たちは鳥を捕まえた経緯を打ち合わせ通りに説明する。
「片足に牛をぶら下げた大きな鳥が私たちも掠おうと急降下してきたんです。ねぇっカスミちゃん」
「そうなんです。それで、私たちがよけたときぶら下がっていた牛が暴れ、鳥が頭から地面に突っ込んだんです。ねっアリアちゃん」
「そうそう! それから頭に大きなたんこぶをつくって伸びている鳥を、近くにあった 蔓や 蔦で縛って報告に来たんです」
「そうか、それはラッキーだったな。君たち」
ジョンさんは信じてくれたみたいだ。
「何にしても怪我がなくてよかったよ。それにしてもアリアちゃんは大きい獣や魔獣によく遭遇するねえ…」
ヘンリー隊長は心配してくれているようだ。
「最近は鍛えてかなり強くなっているから、簡単に怪我なんてしませんよ」
私は少し強がって見せた。
ランホリンクスの風魔法で吹っ飛ばされた事なんて、おくびにも出さない。
「そうか、それは頼もしいな」
ヘンリー隊長が愛想笑いをしながらいう。
あまり信じてくれていないのだろうか。
まあ、7歳の子供が言うことだから、確かに眉唾に聞こえるかも知れない。
私たちはそのうちビッグラビットを自分で仕留めてギルドに納入するのが当たり前と思われるくらいになる必要がある。
そうしないと、せっかく捕ったビックラビットを売りさばけないのだ。
後々のためにも、そろそろ強さの片鱗をのぞかせるべきだろうか。
そんなことを考えていると、ランホリンクスを縛り付けている岩にたどり着いた。
ランホリンクスは全身をがんじがらめにされて、転がっていた。
まあ、あれだけきつく縛り上げたのだから、逃げたくても無理だったろう。
そして、その姿を見た衛兵隊長とその部下は硬直していた。
「たっ隊長……、あれって……」
「ああ、間違いない……。飛竜だ……」
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