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お友達もまさかの転生者…。



『な…に…これ……。あ…たま…が……、わた…しは……。』

 カスミちゃんは途切れ途切れの意味不明な日本語をつぶやきながら頭を抱えて丸くなる。

 転生前の記憶を思い出しているのだろうか。

 転生後の記憶はどうなるのだろう…。


 心配しているとカスミちゃんは自分に言い聞かせるようにゆっくりと日本語でしゃべり始めた。

『私は霧野香澄、たしかトラックにはねられて…、いえ、わたしはカスミ・ワットマン。画家の父と一緒に旅を…』


 どうやら前世の記憶が戻り、今世の記憶と混乱しているようだ。カスミちゃんは私の方を見ると日本語で続ける。

『あなたはアリア・ベルちゃん。トモ…ダチ。』

 間違いない。カスミちゃんも転生者だ。崖から落ちたショックで、今、前世の記憶を取り戻したんだ。

 私も日本語でカスミちゃんに答える。

『そうよ、私はアリア・ベル。あなたの友達よ。カスミちゃん大丈夫。記憶が混乱していない?』

『えっアリアちゃんも日本語…』

『そう、私も転生者なの。びっくりしたわ。私以外の転生者とあったの初めてよ。』


 それから私たちは溝の底で長いこと話し込んだ。

 お互いの前世と今世をお互いに説明したのだ。

 カスミちゃんとは、この世界に今のところたった二人しかいない日本からの転生者ということで、お互い協力していく約束もした。

 話しあった内容から、カスミちゃんは私とほぼ同じ時代の神奈川国立大学4年生の時に子供をかばって軽トラとぶつかり、そこで前世の記憶が途切れているそうだ。

 経済学部で経営経済を専攻し、起業やマーケティングの研究をしていたそうだ。

 高校までは空手で鍛えており、格闘少女だったそうで、私が古武術をしていることを告げると、今度手合わせする約束をさせられた。

 私が家出する原因になった乙女ゲーム『花園でつかまえて!』は、やったことがないそうで、残念ながら私の今後の方針に役立ちそうな情報は持っていなかった。

 私は、運命を変えるために名前を変えて家出していることをある程度説明すると、そこまでやらなくてもヒロインをいじめなければいいんじゃないかと言われた。

 しかし、私が読んだことのあるファンタジー系の異世界転生小説ではゲームの強制力が働く場合があり、状況から言って私にも強制力が働くことも十分考えられる。

 私がそう言うと、

『もしそんなことになったら私が助けるよ。』と笑って協力を約束してくれた。


 話していく中で、私が魔法を使えることを説明すると、カスミちゃんはものすごく食いついてきた。

『わたし魔力は高いはずなのに、未だに魔法を発動できないの。アリアちゃん良かったらコツを教えて!』

 そこで私は説明のために、今の私のステータスがトレーニングと超能力の練習で異常に高まっていることを告白し、一般的な7歳児にしては魔力が高い程度のカスミちゃんにまねできるか分からないと伝えたのだが、

『異世界転生と言えばやっぱり魔法は外せない』とますます闘志を燃やされた。


 私はとりあえず、この世界の魔法は前世の超能力として理解していることを伝え、呪文よりも明確なイメージやビジョンが魔法の発動に有効だと教えた。

 魔法の説明はこちらの言葉にはない表現で説明した方がイメージをつかみやすそうなので、日本語で説明する。

 知らない人に見られても何を話しているのか理解できないだろう。


 何から練習を始めるか迷ったが、二人で話した結果、比較的イメージしやすそうなサイコキネシスによる石つぶてから練習してみることにした。


 まずは私が小さい石をサイコキネシスで空中に浮かべ、飛ばしてみせる。

 石はあっという間に視界の彼方に消えた。

 次にカスミちゃんが同じ事をやろうとする。

 最初は手間取ったが何とか石を浮かべ、ゆっくりと移動させることができた。

 疲れ切った表情で『やった…。』といったカスミちゃんはその場にへたりこむと壁にもたれかかって眠ってしまった。

 どうやら魔力切れのようだ。

 魔力の総量が少ないせいか、30分ほど眠るとカスミちゃんは回復し、目覚めた。


 その間に私は薬草を採取する。


 目覚めたカスミちゃんは再びサイコキネシスにチャレンジする。

 今度はさっきよりも早く石を飛ばすことができた。

 なれたせいもあるのだろうが、魔力総量が少し上がったのかも知れない。

 結局この日の午前中に4回、私が作った兎肉サンドのお弁当を食べて、夕方までに更に6回の魔力切れをおこし、カスミちゃんのサイコキネシス練習は終了した。

 最後の方は魔力総量が上がったせいか、回復までに1時間程度眠っていた。

 私は、夜、寝る前にもう一度魔力切れを起こさせると更に魔力が上昇し、上達することをアドバイスした。

たくさんのブックマークありがとうございます。

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