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見習い冒険者になります…

 そうこうしていると冒険者ギルドにはすぐについた。

 入り口は平屋の西部劇に出てくる酒場のような外観で、奥には3階立ての頑丈そうな石造りの建物があり、酒場風の木道建造物とつながっている。

 中に入ると、飲食できるスペースの奥に受付窓口が並んでおり、夕食時と言うこともあり、仕事帰りの冒険者で賑わっている。

 受付窓口は全部で8つあり、番号札をとって空いたところに受付順に呼ばれるようだ。

 自分と同じような見習い冒険者の子供も何人かおり、薬草や達成報告書をもって列に並んでいる。


 酒に酔って絡んでくるような冒険者はおらず、私は番号札をとるとヘンリー隊長と最後尾に並ぶ。


 10分ほど並ぶと私たちの順番が来た。

「こんにちは、今日この街についてアリアといいます。見習い冒険者登録をお願いします」

 受付に座っている白髪白髭のおじいさんに話しかける。

「ほいほい、それじゃあこの登録板に必要なことを書きなさい」

 おじいさんは街に入るときにヘンリー隊長に提出した板よりも少し広い薄い板を取り出した。

 見ると書くべき項目がかなり多いし、名前と年齢と戦闘方法は端に同じ内容を書く欄がある。

「これ、全部書いて埋めなきゃダメですか?」

 私が聞くとおじいさん職員はニコニコしながら教えてくれた。

「ステータスは書きたいところだけ書けばいいのじゃ。ステータス測定は手間とコストがかさむから自己申告じゃよ」

「分かりました」

 本当の数値を書くわけには行かない。

 私は普通の7歳児とおもわしき数値をねつ造する。

 どうせ誰も測定器で確認しないようなので、5歳のステータス測定時の2倍くらいにする。


 名前 アリア・ベル  名前 アリア・ベル

 年齢 7歳      年齢 7歳

 戦闘法 剣、風魔法  戦闘法 剣、風魔法

 体力  39

 魔力  55

 力   32

 素早さ 28

 賞罰 なし

 出身地 ルフルの森


 本当は風魔法ではなくサイコキネシスと書くか悩んだが、5歳から教わった魔法の先生の話では、この世界の魔法は地水火風の4属性に空間魔法の5種類しかないそうだ。


 ちなみに空間魔法には離れたところを見る遠視や、瞬間で遠くに移動する転移があるが、消費魔力が大きいためか使い手はほとんどいない。

 特に転移は難しいと言われている。私が生まれる前から使っていたクレヤボヤンスやテレポーテーションは空間魔法に属するという分類だ。

 月の裏側まで頻繁にお出かけしている私には何故転移が難しいのか理解できないが、今世の人々のイメージ力が関係いているのだろうか。


 各魔法を発動できるかどうかはその人次第であり、複数の属性を扱える人もかなり多い。


 しかし私は、この世界の魔法が転生前の超能力に近い存在のように感じている。

 実際に魔法を覚えたときに脳内アナウンスされる謎音声にも、地球の超能力の呼称がある。


 魔法の先生に聞いたところ、こちらの人は脳内に「風魔法ウインドを習得しました」というように、魔法の属性と魔法名がアナウンスされるのだそうだ。

 私に言わせれば風魔法は空気の分子をサイコキネシスで動かしていることと同義である。


 ここは悪目立ちしないためにも申告用の登録板には風魔法と書き、テレポーテーションやパイロキネシスが使えることは伏せることとした。


 私の現在のステータスは、2年間の鍛錬もあって更に伸び、本当は

  体力1211

  魔力9999+

  力1002

  素早さ930 となっており、体力と力はついに三桁の壁を突破している。


 普通の成人10倍であり、下手をすると伝説の勇者並みになってしまったかも知れない。


 ちなみに剣術の先生に聞いたところ体力や力が1000を超えている強者は騎士団長クラスではないかということだった。

 7歳で騎士団長並みなどと知られれば、この国でも実験動物コースは不可避となるであろうことから、私は差し障りがないであろう数値にして登録板を受付のおじいさんに渡す。


「これは驚いた。7歳にしてはとても優秀な数値じゃ。魔力などは下手な新米冒険者よりも多いみたいじゃな。将来が楽しみじゃ。それでは冒険者カードができるまでに冒険者の心得を説明しようかのぉ」

 受付のおじいさんは私が書いた登録板をカウンターの奥の人に渡すと説明を始める。

「見習い冒険者にランクはなく、基本は採集と店や民家の手伝いの依頼が中心で、討伐依頼は受けることができない。採取中に偶然討伐対象の魔物に遭遇し倒すことができた場合は、報酬や素材は受け取ることができ、15歳になって正式な冒険者登録ができたときに討伐数としてカウントできる。しかし、見習い冒険者が無理をして討伐しようとするとほぼ間違いなく大けがか悪くすると命を落とす。

 正式な冒険者は初級、中級、上級、最上級、特級の5ランクで、15歳の新米は普通初級ランクであるが、見習い期間に討伐した魔物や達成した依頼によっては、中級ランクからスタートできた人もいた。ちなみに討伐依頼にも初級、中級、上級、最上級、特級の推奨ランクがあるが、別に初級ランクの冒険者が特級ランクの依頼を受けても問題ない。失敗して怪我をする可能性が増えるだけだ。あくまでも自己責任の世界だ。上級ランク以上の冒険者になるには、依頼の難易度が上級ランクより高い討伐を安全にこなせるようにならないと、上級ランクの冒険者と認められない。だいたい以上だ。わかったかね?何か質問はあるかな?」

「はい、複数の人で依頼を達成したときはどうなるんですか?」

「そのときは、報酬は本人たちで相談して分配する。依頼達成の貢献度が高かったメンバーに多く配分するか、平等に配分するかでよくもめるから、討伐に行く前に決めておく方がよいじゃろう。ランクについては集団でのランクが同様に初級、中級、上級、最上級、特級という風にあり、達成した依頼によってランクが上がることがあるが、個人のランクには影響しない。パーティーのメンバーが1人でも入れ替わったり増減したりすると初級ランクからやり直しじゃ。最も引き受けることのできる依頼はランクと無関係じゃから、自信があるなら特級難易度や最上級難易度の依頼を中級や初級のパーティーや個人が受けても問題ないのじゃ。死んでも自己責任じゃがな」

「分かりました。説明ありがとうございます」

「おう、ちょうど冒険者カードができたみたいだ。これは身分証明にもなるからなくさないようにな。再発行するには5000マールかかるからな。それと、他の街のギルドで仕事をしたときは達成証明をもらってうちに提出すると達成数にカウントされるから忘れんようにな」


 受付のおじいさんはそう言うと先ほどの登録板の右側に私が書いた2つめの名前、年齢、戦闘法を切り取って、文字の部分を火魔法で焼き付けしたと思われる木のカードを渡してくれた。

 戦闘法の欄の下には剣と盾に炎をデザインしたマークも焼き付けられている。このマークが冒険者ギルドの紋章のようだ。そういえば入り口の看板にも同じマークを見たような気がした。


 再発行手数料の5000マールは日本の5000円に近い。小さい金貨1枚の価値だ。


 お金については、この世界では金属の価値と貨幣の価値がほぼ等しくなっている。

 銅、銀、金の3種類が貨幣として存在し、その大きさで価値が決まる。

 各金属の価値は地球と近いが、少し銅が地球より高い。


                 1マール=1円

銅貨 小(1円玉より小さい 1g) 日本の1円相当

   中(10円玉サイズ 10g) 日本の10円相当

   大(500円玉サイズ50g) 日本の50円相当

銀貨 小(1円玉サイズ  2g)  日本の100円相当

   中(100円玉サイズ10g) 日本の500円相当

   大(中の2倍の重さ 20g) 日本の1000円相当

金貨 極小(1円玉より小さい1g) 日本の5000円相当

   小(極小の2倍の重さ 2g) 日本の10000円相当 

   中(10円玉サイズ 20g) 日本の10万円相当

   大(500円玉より厚い100g)日本の50万円相当

金板 小(重さ200g)    日本の100万円相当

   中(重さ1kg)     日本の500万円相当

   大(重さ10kg)    日本の1000万円相当

 貨幣の価値はだいたい以上だ。


 登録も無事に終わったので、宝石店へ査定の結果を聞きに行くことにする。

 ヘンリー隊長は親切にもまだつきあってくれるようだ。

 再びチークの扉をくぐると、店長がニコニコしながら迎えてくれた。

「これは、ギモス様、ベル様。ちょうど査定金額が決まったところです。この価格でいかがでしょう」

 店長が見せてくれた白い板には宝石ごとに金額が書かれている。

 

 水晶クウォーツ 50マール×3個=150マール

 紫水晶(アメジスト) 80マール×2個=160マール

 ローズクウォーツ  80マール×3個=240マール

 ルビー小      3000マール×4個=12000マール

 ルビー大      20000マール×3個=60000マール

 サファイア小    4000マール×3個=12000マール

 サファイア大    30000マール×4個=120000マール

 ダイヤモンド小   50万マール×3個= 150万マール

 ダイヤモンド大   500万マール×5個=2500万マール

        合計 2670万4550マール

 水晶系の安さとダイヤモンドの高さが際立つ鑑定結果である。

 ちなみに1cmの宝石が小、2cmの宝石が大と評価されたようで、この世界でも大きい原石は希少価値があるためか、価値が高い。


 予想以上の高評価に満足していると、店長が声をかけてきた。

「アリア・ベル様、当店でご売却と言うことでよろしいでしょうか?クウォーツ類は大きな宝石が産出されやすいためあまり高値は付きませんが、ダイヤモンドに関しては精一杯頑張らせていただきました」

「はい、よろしくお願いします」

 私が答えると、店長はうれしそうに代金の入った布の袋を取り出した。

「では金額の確認をお願いします」

 大金貨53枚、中金貨2枚、大銀貨5枚、中銀貨1枚、大銅貨1枚、一気に大金持ちになってしまった。

 金貨だけでも26kg以上の重さがある。

 体積も1(リットル)を超えるため、入れ物の布袋はある程度の大きさがある丈夫な袋だ。


 私は数えた金貨を布袋に戻すと、背中に背負っていたリュックに布袋ごとお金を入れた。

 もちろん重そうなふりも忘れない。

 私が冒険者ギルドで書いた体力と力では、かなり重くかんじるはずの重量だからだ。


「アリアちゃん大丈夫かい?」

 ヘンリー隊長が心配そうに聞いてきた。

「はい、何とか背負えます」

 ホントは軽すぎて『小指一本でも持てます』とは、口が裂けても言ってはいけない。

「そうか、では店を出よう。店主、世話になったな」

「またのご利用をお待ちいたしております。ベル様、ギモス様」

 店長と店員一同の見送りを受けて、ヘンリー隊長と宝石店をでる。



 戸口を出たところでヘンリー隊長から質問された。

「ところでアリアちゃん、今日はこれからどうするつもりだい」

「はい、予想以上にお金が手に入ったので、冒険の起点になる宿を決めて長期宿泊の手続きをしようと思っています」

 私が答えるとヘンリー隊長は少し考えていたが、すぐに私を優しそうなまなざしで見つめ、びっくりするような提案をしてきた。



 評価、ブックマークありがとうございました。

 ブックマークが100を超えたようで驚いています。

 これからもよろしくお願いします。


 前回から、見習い冒険者編に入りましたので、作品の雰囲気がかなり変わってしまっていると思います。

 悪役令嬢としての活躍を期待されていた読者の皆様には申し訳ありませんでした。

 当分の間、冒険者を続けさせる予定です。

 

 今回は通貨の話が出てきました。

 スマホ、携帯で読んでくれている方々、すいません。通過の説明のところをパソコン画面で表に見立てて作っていますので見にくいかと思います。ご容赦ください。

 通貨単位は現地の金貨、銀貨、銅貨で書くか悩みましたが、日本円と同じ価値のマールという単位にしてみました。

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