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世界の真実… 

 長い廊下の両側にはいくつもの扉が並んでいる。 

 老人は入って10メートルほどにあった2番目のドアの前に立った。

 ドアは自動で音もなく開く。

 この世界に来て初めて見た自動ドアだ。


 ドアの中は応接室になっていた。


 老人からソファーを勧められる。

 私たちは並んでふかふかのソファーに腰を下ろした。


「では、何からお答えしようか?」

 老人が問う。

「まず、あなたが何者なのかを教えていただけますか…」

 私が1つめの質問をする。 


「私はジョージ・ゴードン5428世。

 このシステムを構築したジョージ・ゴードンの記憶を引き継ぐ5428代目だ」


「あなたは人間なの?」

「君たちの言語で言えばアンドロイドだ。

 初代のジョージ・ゴードンは人間だった」


 私が聞くとゴードンさんはあっさりと答える。

 この世界にアンドロイドを作る技術があったとは納得できないという気持ちもあるが何よりも驚きの方が大きい。

 しかも5428代目といっている所を見ると、かなりの昔からアンドロイドは作られていたということだ。

 しかし、この世界で今まで生活した記憶には、アンドロイドはおろか機械すらほとんどない。

 単純な構造の装置はあるが、動力は人力が中心で、よくてバネかゼンマイだ。

 ますます訳が分からない。


「なぜ、日本語で会話できるの」カスミちゃんが聞く。

「旧世界の言語は一通り記録されている。

 現世界の言語は未発達だ。

 この状況を説明するには、旧世界の言語でないと表現できない部分も多い。

 君たちが入り口のインターフェースで日本語を選択したので、旧世界の言語の内日本語を使って会話している」


 アンドロイドのゴードンさんは旧世界と言った。

 なんだかドキリとする。

 この言葉に深い意味がありそうだ。


「旧世界って何?

 どういうこと?」私は聞かずにはいられなかった。


「旧世界とは君たちが宮川藍音や霧野香澄として生きていた世界だ」

 ゴードンさんは当然だというように答える。


「私たちが生きていた前世の世界が旧世界ということはこの世界は何?」

 カスミちゃんも言葉の裏に隠されたものに動揺したように聞く。


「この世界は君たちの世界から3億23万6521年後の世界と言うことだ」


 ますます訳が分からない。

 異世界だと思っていた現世が3億年以上未来の世界だったとは…

 しかし、この星のサイズは明らかに地球とは違う。

「では、この星は人類が移住した先の星と言うことなの?」

 私が聞くと更に衝撃的な言葉が返ってきた。


「それも違う。

 ここは間違いなく君たちのいた地球の未来の姿だ」


「けど、サイズも違うし、月の数も違うし、色も違う。

 何もかも違うじゃない」

 ゴードンさんの答えに思わず私は声をあららげる。


「順を追って話そう。

 君たちが暮らしていた地表はこの星の地下深くにある。

 現在の地表は人工的に過去の地表の上に造成されたものだ。

 そして、現在の地表を造成するために、旧人類は月を使用した。

 君たちの知っている月は今や資源として利用し尽くされ、その破片が小惑星帯を形成し地球の輪となっている。

 更に、それでも足りない資源を他の惑星から衛星を移動させ、利用した。

 現在の地球の月は、かつてガリレオ衛星として知られていた木星の衛星のなれの果てだ。

 赤い月がガニメデ、青い月がカリスト、最も外側で連星のようになっているのがイオとエウロパだ。

 資源として利用した後のため、元のサイズよりかなり小さくなっている。

 特に表面が氷に覆われていた衛星は、氷の成分がメタンハイドレートだったために、資源として取り尽くされた。

 それらの天体を資源として、人類は汚染された旧大地を地下深くに封印し、現在の大地を形成したのだ。

 今の地球の地殻は厚みがおよそ10キロメートルだが、その下は支えの柱以外は中空になっているのだ。」


「それなら、なぜ、今の地球は文明が衰えているのよ」

 そんなスーパーテクノロジーを持ってた人類が何故滅びるにいたったのか全く理解できない。

 わたしは聞かずにはいられない。

「人類はあまりにも傲慢だったのだよ。

 旧大地を温暖化や有害物質で埋め尽くし、住めなくなれば上空に新大地を造成し、果ては新大地までも住めなくしてしまう。

 君たちのこよみで西暦8653年に人類は後戻りできないところまで環境を破壊し尽くし、滅亡以外の選択肢がなくなったのだ。

 そしてそれでも地球に再び生命を満ちあふれさせようとしたのが、私のオリジナルとなった初代のジョージ・ゴードンだった。

 初代は第17世代ディープラーニング自己進化型コンピュータを頭脳にし、私を設計した。

 人類に貢献し、人類を守り、人類を導くものとして。

 私は初代によってロボット三原則をはじめ、いくつもの指令を与えられた。

 人類や地球生命が絶滅した後、どれだけの時間をかけてもいいので、この星を再び住めるようにし、保存しているDNAから、生命を再生させ、この星を命で満たすこともその指令に含まれていた。

 採取したDNAは化石のものも含めると天文学的種類となる。

 恐竜もかなりの種類を再生することができた。

 その過程でオリジナルの生命体とサイズが違う個体が多数生まれたが、この世界に君たちの時代にいた動物が多いのはそのせいだ。

 ちなみに2種類以上の生命からキマイラの製造も試みられたが、残念ながら繁殖することができず一代かぎりとなることがわかったため、架空の動物ににた新生物を作ることは断念された」


 あまりのことに思考が追いついていない。

 ここが未来の地球?

 カスミちゃんからも混乱の感情が伝わってくる。


「それなら、私たちの体の前世に比べると異常な能力は何なの?」

 私は感じたままに疑問をぶつける。

「それに、ESPも私たちの前世では未確認な能力のはずよ」

 カスミちゃんも続く。


「ESPはたましいの力。

 旧世代の人類も持っていたが、それを発現させることはほとんどできていなかった。

 一部の人がその能力のほんの一端を解放することができても、周囲の人から信じてもらえず、あるいは阻害されることを恐れて秘匿されていた場合がおおい。

 この時代では私の知識で強化された遺伝子の影響で、肉体は以前の人類よりも強くなり、魂の力であるESPを発現させやすい状況も作り出すことができた。

 もっとも個体差があり、ESPがあまり使えないものは、魂は強い力を持っていても能力の解放には至っていない場合と、魂の力そのものが少ない場合が有る。

 君たちの能力が解放された際に脳内に聞こえるメッセージは、私の遺伝子研究のたまもので、解放された魂の力を知覚させる情報をDNAに乗せることができたためできたことだ。

 もっとも、その伝わり方はその人によって異なる。

 君たちはどのように聞こえていたのかね?」


「私はチャイムとアナウンスでした」

「えっ、そうだったの?

 私はブザーとアナウンスだったよ」


 なんと、ここに来てカスミちゃんと私で魔法獲得アナウンスに違いがあったことが判明した。


「それは、その個人にとってもっともなじみが深い音や言語として認識されるようになっているはずだ。ちなみに言語は何だったかね?」


「私は胎児のときから日本語でした。

 そういえば、この世界の言語を覚える前に超能力を覚えたから、なじみと言えば日本語と言うことになるのかしら…」

「私はアイネちゃんと出会う前に覚えた魔法はないから比較でいないけど、そういえば日本語だったような気がします…」


 どうやら、私もカスミちゃんも脳内アナウンスは日本語として認識していたようだ。


「ちょと待って!

 それじゃあステータス表示とステータスを表示する石版はいったい…」

 私は前世であり得なかった、ステータスの確認画面を思い問いただす。


「ステータス画面についても遺伝子の研究の成果じゃな。

 魂に刻まれた新しい力を知らせる遺伝子の働きを少し強化してみたら、そのときの能力をその人に最適な状況で表示してしまうようになってしまった。

 何にしても、数値で能力が分かれば、数値差のあるもの同士が無駄な争いをしなくなると考えて作った能力じゃ。

 ステータス表示の石版は、一部気がつかれたようじゃが、触れたときの生体電流から情報を構築して表示させておる。

 表示に液晶プロジェクターを導入したのもワシじゃ」


「それでは、各国にあるステータスの石版はもしかして…」

「そうじゃ、ワシが作業用アンドロイドと作ったものじゃ。各国の為政者にかけ合ってな」


「他の、文明器具を人類に与えなかったのはなぜ?」

「文明が発達しすぎると再び人類は環境を汚染する可能性が高かったからじゃ。

 ちょうど中世程度の文明段階に固定できるように色々なところを調整した」


 なんと、この世界の文明は全て管理されていたと言うことなのだろうか。

 それなら何で、異星人の襲来に、このアンドロイドの老人は対応できなかったのだろうか。

 あるいは能力的にはできても、ローミラールに対して実力行使をできなかった理由があるのだろうか。

 謎が謎をよぶ展開に、次々と疑問がわき出してくる。


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