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南半球へ…

 戦後処理も順調に進み、ローミラール兵の生存者は、金品と引き替えに私のテレポーテーションで母星に送還した。何人か行方不明者がいるが、発見しだい送還する予定である。


 ゲルマノイルは皇帝が失脚し、現在は幼い5歳の男の子が皇帝として担がれている。

 終戦の協定で、摂政としてレオナルド殿下が派遣されることになったので、ゲルマノイルは実質我がアルタリア王国の属国となった。

 アルタリアとの国境も大きくゲルマノイル側に食い込み、新たにアルタリア領となった地域は王家に加えてヘイゼンベルグ家とワットマン家の分割統治となっている。

 飛び地ができたお父さまとジョーイさんは大変そうだが、お兄様も力を貸しており、何とか体制が整いつつある。


 反乱を首謀した二つの公爵家は取りつぶしとなり、ナターシャさんとイリアさんは反乱のときに父親をいさめているところが目撃されていたことも有り、処刑を免れ修道院に入ることとなった。

 公爵領は王家の管理となっているが、一部は功績のあった臣下へと下賜されるという話だ。

 こちらにも飛び地ができた場合、我が家やカスミちゃんの所はますます忙しくなるかも知れない。大丈夫なのだろうか。


 私たちは取りつぶしとなった二つの公爵家の残党を駆逐するために多くの時間を費やした。

 それと同時に、ゲルマノイルのように暴走する国が現れないように、国際連盟の設立を提唱している。

 アルタリア王国主導で話を進めているが、実質ゲルマノイルを傘下に収めたアルタリアの発言力は増しており、各国は前向きに検討している。

 国際連盟会議への対応が遅れている国が判明すれば援助を惜しまず、私とカスミちゃんが直接出向いて対応する。

 テレポーテーションの能力が白日の下にさらされた今、各国への遠距離移動はもっぱら私の能力が頼られることとなった。


 カオリーナもテレポートできるのだが、まだ7歳の妹にあまり負担はかけたくないので今のところ私がカスミちゃんを連れて頑張っている状況だ。


 ローミラールに関しては、今回進行してきた第2師団の降下部隊は反乱軍に混ざって地上戦を仕掛けてきたが、市街戦になると一般の人を盾にされたとき本当にやっかいだと痛感した。

 あのレーザー兵器などの科学技術をもった兵士たちがゲリラ戦を仕掛けてくれば、私とカスミちゃんの二人だけで対応することはまず不可能だろう。

 とりあえず協定は結んだが、彼らがそれを遵守するかは不明である。

 王子たちの他にも、無詠唱で強力な魔法が使える人材を育成する必要があるだろう。


 それに、現状で行方が分かっていないローミラール星人は協定の存在そのものを知らずに潜伏している可能性が高い。

 彼らはシャトルを使っていたことから、惑星のどこにでも潜伏できる能力を有している。

 一刻も早い残存ローミラール星人の確保を目指しクレヤボヤンスで調べているときに、私はそれを発見した。


 人跡未踏の地であるはずの南半球のある島に、明らかに人工建造物と思われる入り口が、山の中腹に存在していた。

 私は早速、カスミちゃんと合流し、すぐにテレポートでこの島に飛んだ。

 実は、この建造物の中を透視できなかったからである。


 クレヤボヤンスが届かないのは扉の前に立っても同じことであった。

 過去にも鉛の箱の中はクレヤボヤンスで透視しにくかったことはあるが、ここまで完璧に中が見えないのは初めてである。


「異星人の技術とは違うようだわ」

 私がつぶやくように言うと、カスミちゃんも同意する。

「そうね。

 もしこの技術をローミラールが持っていたのなら、先の戦いでもっと苦戦したはずだわ」

「いったい、誰がつくったのかしら。

 過去の文献でもこのような技術はなかったと思うけど…」

「アイネちゃん。

 この世界の昔話にとても優れた賢者の伝説があるのを知っている?」

「ええ、大昔人々に英知を授け、歴史の影に何度か登場したという老人の話よね。

 けどこの世界の有史以来何度か現れたその賢者は、数百年間隔で目撃されていて、とても同一人物とは思えないから、ただのおとぎ話だと思っていたわ」

「あの賢者伝説で老人は南から来て南に帰るのよね…」

「そうね」

「老人がもたらした知識は、貨幣、貴族や国家の制度、質量や長さの単位、古くは言語の基礎や文字すら老人が与えたことになっているわ」

「将に賢き人よね…

 まさか、カスミちゃんこの扉…」

「その可能性があると思わない…」

「調べてみる価値はあるわね」


 私たちは扉に手をかけ押してみる。

 重そうな金属の扉は、たいした力もかけないのに静かに開く。

 そこには、前世で見慣れた制御室と思われる装置がびっしりと並んでいた。


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