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地上戦…

 ゲルマノイル帝国とローミラールの連合軍が駐屯する国境付近は、ローミラールのシャトル部隊が壊滅的な被害を受けたことでかなりの混乱を来している。


 私は敵部隊の直上に張りぼて宇宙船を移動させると、ゆっくりサイコキネシスで降下させていく。

 混乱の中、自軍以外の宇宙船が降下してきた敵軍は、予想通りレーザー兵器で攻撃を仕掛けてくる。

 私は宇宙船を覆う球状クリスタルグラスの下部を鏡面化する。

 敵レーザー光線はきれいに反射して、敵軍へと降り注いだ。


 私はクレヤボヤンスで確認しながら、敵レーザー兵器にパイロキネシスを発動する。

 金属原子の熱運動を加速し、十分に高温となってしまったレーザー銃器は、それを握りしめていた敵軍兵士の手を焼いた。

 突然熱くなった銃器を握る手は、無条件反射的に銃を取り落としてしまう。

 私は地上に落ちた銃が融解して完全に機能しなくなる温度まで、金属原子の熱運動を加速した。


 地上にはあちこちにかつて銃だった溶融金属塊が散在し、付近の地面を焼く。

 カスミちゃんも目視できる範囲で、私に倣って、最近上達してきたパイロキネシスを駆使して敵軍の無力化を援護する。


 敵軍の銃器をほぼ無力化すると、浮遊する我が宇宙船への攻撃は、ゲルマノイル帝国軍の魔法師部隊と弓兵部隊からのもののみとなった。


 当然、石つぶてや風魔法程度でダメージを受けるはずもなく、増して弓は直上の敵に対してほとんど威力を発揮できない。


 私は球体下部の鏡面化を解除し、カスミちゃんの視野を広げると、二人がかりで敵軍が飛ばしてきた石つぶてと矢をこちらのサイコキネシスで操作し、3倍のスピードでお返ししてあげた。

 とりあえず魔法が使えそうな敵と弓兵は、自らはなった石つぶてや矢の3倍返しで満身創痍となり、戦闘能力は無くなる。


 後は接近戦しかできない歩兵と騎馬兵のみだ。

 私たちは敢えて宇宙船を着陸させ、自艦の正面へとテレポートし降伏を勧告する。


「我々はアルタリア王国宇宙艦隊第1空挺部隊である。

 ゲルマノイル、ローミラール連合軍に告げる。

 ただちに武装解除して降伏せよ」

 力一杯叫んでみた。


 張りぼて宇宙船はこの一機しか無いのだが、はったりも大切だろう。

 敵軍の出方をうかがおうとすると、こちらが二人しかいないことに気づいた敵兵が突撃してきた。


 どうやら降伏の意志はないようだ。ならばやるしかあるまい。

 私は辺り一面に空気中から抽出した水蒸気を凝縮させ雨を降らせる。

 敵兵の半数は突然の雨に気を取られたらが、さすがに訓練された兵士だけのことは有り残りの半分は怯まずに突撃してくる。そこで辺り一面の物質にアブソリュートゼロを発動し、熱運動を奪う。

 よく濡れた敵兵はきれいに表面が凍り、鎧の継ぎ目に入り込んだ水も凍結したことから、関節部分が動かなくなった者から順にバランスを崩し、ばたばたと倒れていく。

 騎馬兵はもっと悲惨であった。

 馬具が凍り付いて馬ごと転倒する者や落馬する者が後を絶たず、さらには転倒した僚馬や僚兵につまずき、あっという間に立っている兵はいなくなった。


 私が敵兵の機動力を奪い終わると、カスミちゃんは、表面を鏡面化した宇宙船保護用の球体クリスタルガラスをサイコキネシスで転がし、敵兵を蹂躙していく。

 まともに立つこともできずに這いずり回って逃げる敵歩兵と騎馬兵を容赦なく轢殺すべく迫る巨大なガラス球に、周囲は阿鼻叫喚に包まれる。

 わざと逃げる余裕を与えるためにゆっくりと転がしていたのだが、パニックに陥った敵兵は逃げ惑う際にお互いを踏みつけあい、さらにはドミノ倒しなども発生する。

 その場に伏せた敵兵は、残らず凍結した地面のおかげで凍傷を負うことになる。


 死者こそ少ないが、全軍満身創痍となるのに時間はかからなかった。

 もはや敵軍に戦意は皆無だろう。


「かすみちゃん、もう一度降伏勧告するから、静かにさせましょう」

「分かったけど、これ静かにできるのかな…」


 あたりは怪我をした兵士のうめき声と逃げ惑う者たちの悲鳴で阿鼻叫喚状態なのだ。


「とりあえずサイコキネシスで片っ端から持ち上げてみましょう。

 高いところの空気を吸えば少しは静かになるんじゃないかしら…」

「分かった、やってみるね」


 私とカスミちゃんは手分けして逃げ惑う兵士や転がっている兵士をサイコキネシスで上空へと持ち上げてみる。


 最初こそ悲鳴を上げる者も多かったが、上空100メートル付近まで持ち上げてやるとほとんどの者は静かになった。

 どうやら気絶したようだ。

 空からはあまりありがたくないものが降ってくる。

 詳しくは描写しないが、どうやら発生源は上空に持ち上げられた敵兵のようだ。

 あの真下には行きたくないなと思っていると、上空からかすかに声が聞こえた。


「降伏する!頼む、命だけは助けてくれ」


 一際立派な甲冑に身を包んだ厳つい騎士が叫んでいた。

 私は、サイコキネシスでその騎士を地上に降ろし、私たちの前まで移動させる。


「私は、ゲルマノイル帝国軍軍団長、ハインリヒ・ゴルバだ。我が軍団は貴公らに降伏する」

「アルタリア王国侯爵家、アイネリア・フォン・ヘイゼンベルグよ。全員武装解除すればこれ以上攻撃しないわ」

「同じくアルタリア王国男爵家、カスミ・レム・ワットマンよ。ただちに武器を捨てるよう命じなさい」

「それにしてもアルタリアに貴公たちのような恐ろしい魔法使いがいたとは…

 それに、友軍となった異星人の飛行兵器をあっという間に無力化した飛行兵器を貴公らが持っているというのも想定外だった。

 この戦いの責任はひとえに私にある。どうか一般兵には寛大な措置を願いたい」


 ハインリヒ軍団長はなかなか潔い人物のようだ。

 私たちは静かになった敵兵を地上に降ろし、意識がある者から順に武装を解除させた。


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