外伝EP16 暗黒竜に転生しましたよ。その19
禍々しい動く骸骨馬の姿モノ――エビルスタリオンは、元から骸骨馬の姿をした幻獣とのこと――。
オマケに、そんな姿ながらも実は不死者の類ではないようだ――神獣だ。
ヤスが片時も離さず持ち歩いている兎天原大図鑑に於いて、アレは神獣として記録されている。
そんなワケだ。幽霊のようで幽霊じゃないモノなので、エビルスタリオンは実体を持っている――当然、俺達が仕掛ける物理攻撃が通じるワケだし、その反対も然りってヤツだな。
し、しかし、見かけは地獄の底から地上に這い出してきた禍々しいモノって感じのになぁ、それが神の化身でもある神獣だなんて意外だ。
さて、コイツをどうするか……って、ミュール公の亡霊のせいでトンでもないモノに遭遇しちまったもんだ。
『む、むう、この怪物め! 今度こそ……今度こそ退ける!』
『ほう、強気だな。しかし、身を潜めながら、その言葉を吐くとは失笑もいいところだ』
「あ、ああ、確かになァ……」
『こ、怖くなんかないぞ! 私は復讐者だ! うおおおーッ!』
「き、消えたッ……ちょ、逃げるなァァァ~~~!」
おいおい、お前は復讐者なんじゃなかったのか? ミュール公の亡霊の姿が、吹き抜けていく風によって跡形もなく吹っ飛ぶ煙の如く消え失せる――逃げたな、この野郎!
「お、おい、どうする? 俺達でなんとかするのか?」
「当然ッ……だが、どうしようかねぇ……よし、あの手でいこう!」
「わ、わあー! キョウさん、アレをなんとか出来る手立てがあるなら早くしてくれッス! ふ、踏み潰される前にィィ!」
ミュール公の亡霊が俺達の目の前からいなくなった――その刹那! 見た目は地獄からやって来た禍々しい巨大骸骨馬だが、その実は神の化身である神獣というギャップが信じられんモノことエビルスタリオンは、青白い妖光をまとった巨大な右の前足を俺達の頭上に振り下ろす! ちょ、巨大な蹄がクリーンヒットしてしまったら、俺達はペシャンコだぞ! どうする、どうする、俺ーッ!
『ウ、ウグオオオッ!』
「エビルスタリオンの動きが止まった――奴の巨大な右の前足の一撃を避けるなら今だァァァ~~~!」
ナ、ナニが起きたのかはさっぱりだ。とにかく、エビルスタリオンの動きがピタリと止まる――い、今だッ! 俺達を踏み潰そうと降り下ろす奴の右の前足の一撃を避けるのは、今しかない!
『ハハハ、何が起きたのかは知らんがチャンスは今しかない! さあ、ウーザー王の墓へと往くぞ!』
「あ、お前ッ……だ、だが、確かにチャンスだな」
むう、俺の背後に不気味なシルエットが――ミュール公の亡霊だ。
エビルスタリオンが何かしらの原因で動けなくなったのはチャンスと見て舞い戻ってきたようだ。
だが、奴の言う通りだ――ウーザー王の墓へ往くなら今がチャンス! 今しかない!




