EP9 俺、巨人族の少女と出逢う。その12
「ところでお面の死霊使いさん、ひとつ訊いていいかな?」
「OK、なんでも訊いてくれぃ!」
「んじゃ、訊くわ。アナタの背後に控えている骸骨達は、墓場や古戦場を掘り返して手に入れた白骨遺体に悪霊を憑依させたモノ達でしょう?」
「ビンゴ、その通り! アンタは見る目が違うねぇ。」
「そりゃ外見だけなら俺と同世代の女のコだが、実際は無駄に長生きしているババアだし……ふぎぇっ!」
「はいはい、デュオニス君、余計ないことを今は言わない!」
と、余計なことを言うデュオニスのぶん殴りながらウェスタは、マルスに対し、質問をする――ふむふむ、マルスの背後に控えている動く骸骨達は、同じ動く骸骨でもアシュトンとか勝手が違う存在のようだな。
「アシュトンの場合は、〝白骨遺体〟そのモノにご本人の魂を定着させたんだったな、ブックス?」
「ああ、深淵の水には、そういう効果があるからな。」
そういえば、聞いたことがある。
死んで間もない遺体の周りには、そんな遺体のご本人様の魂が漂っているってね。
肉体と魂を繋ぐ糸が切れていないからだって話があるけど、実際のところはどうなんだろうねぇ。
「おいおい、俺達が悪霊だって!?」
「違うぞ、俺はマルス様に勧誘された亡霊であって、決して悪霊なんかじゃないぞ!」
「つーかさぁ、地上に留まっている俺達って知らず知らずのうちに悪霊になっているのかも……。」
「だあああ、とにかく、俺達を悪霊呼ばわりすんなァァァ~~!」
ホントにそうなの!?
とまあ、マルスの背後に控えている動く骸骨達が一斉に、そんな文句を言い始めるのだった。
ウェスタに悪霊呼ばわりされたのが腑に落ちなかった様子である。
「マルス様、生意気なアイツらをぶん殴らせてください!」
「おう、俺もぶん殴りてぇ!」
「悪霊呼ばわりした罰を与えてやりたいっすわ!」
「おお、骸骨君達は殺る気満々だぞ、マルスちゃん。」
「うむ、これで楽しい決闘になりそうだ!」
「待て待て、俺は決闘なんて受ける気なんかないぞ。お前らも決闘する気なんかないよな?」
「無論です。私は非戦闘系ですから――。」
「私は場合によって戦います……。」
「んー、俺も場合によって……かな?」
「わらわは疲れるからやめておく。」
「な、なにィィィ~~~!」
ふう、なんだかんだと、俺は決闘する気なんかない。
俺はどちらかっつうと、非戦闘系の魔女だしね。
とまあ、そんな俺の代わりにマルス一味と戦うのは――。
「ええと、私がキョウさん達の代わりに決闘を受けます。」
ビッと右腕を頭上で掲げながら、そう名乗り出たのはエイラである。
「小娘ェェェ~~~! お前が代わりだとぉ! ふざけおって……スケルトン一号、軽く叩きのめしてあげなさい!」
不気味な仮面で素顔を覆い隠しているのでわからないけど、俺の予想だとアレスの顔面は、怒り狂って真っ赤に紅潮しているはずだ。
で、背後に控えている動く骸骨に一体に命令するワケだ。
エイラを叩き潰せって――。
「OK、アレス様! 行くぞ、覚悟しやがぇ!」
「ヒイイイッ! 骸骨さんはこっちへ向かって来ました……えいっ!」
なんだかんだと、動き回る骸骨であるスケルトン一号が近寄って来たら、誰だって悲鳴をあげるはずだ。
と、それはエイラも例外なく――が、次の瞬間、悲鳴を張りあげながら、目の前に突き出したエイラの右手が巨大化し、迫り来るスケルトン一号を弾き飛ばす!
「ひゃ、ひゃあ、右手が一瞬だけど、元の状態に……修行のせいかですかね?」
「よ、よし! とにかく、骸骨野郎を一体やっつけたんじゃないか?」
「ですね! でも、カタカタと頭蓋骨が動いている! さ、流石は不死者……。」
「どうでもいいけど、俺の身体を壊すんじゃねぇよ!」
身体に肉が一切存在しない骨々な身体は、意外にも脆いようだ。
が、スケルトン一号は再起不能したワケではなく一時的に動けなくなっただけっぽいぞ。
骨々な胴体はバラバラに吹っ飛んだけど、頭蓋骨の顎がカタカタと動いているし、不満そうにぶつくさと文句を言っているし……。




