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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
823/836

外伝EP16 暗黒竜に転生しましたよ。その12

「う、うわー! 人面樹以外の樹木も枯れ始めた!」


「こりゃ不味いな。計算外だったぜ――だが、俺にイイ考えがある!」


「マ、マジか! じゃあ、そのイイ考えってヤツを教えてくれ!」


「それはな――大霊樹のもとへ走ることだ、うおりゃー!」


「ちょ、おまっ――それはイイ考えじゃない。とにかく、逃げろってことじゃん! だが、そうするしかないよな。今の状況下だと」


 この世界に於いての俺の親かもしれない絶滅危惧種——暗黒竜の成竜が吐き出した暗黒竜吐息はヤバいぞ!


 鬱陶しいゾンビ共を白骨化させるだけに止まらず俺達がいる嘆きの森の奴、三割の樹木を一瞬で枯れさせる――ちょ、どんだけの広範囲にまで及んだんだぁ!?


 ちなみに、あの人面樹だけは無事だ――バリアでも張ったのか!?


「なあ、逃げられるのか?」


「知るか! とにかく走れーッ!」


「む、無責任な奴めェ!」


「無駄口を叩く暇があったら走れっての! 拡散した暗黒竜吐息は、すぐそこまで迫っているんだぜ」


「う、うおー! クソォ、空を飛んで逃げれりゃなぁ……」


 ああ、俺もバリアを張りたいなぁ――本気でそう思ったぞ。


 むう、バリアが張れなくてもせめて空を飛べればなぁ。


「空を飛んで逃げる? お前、翼を持ってねぇ俺らを馬鹿にしているのか?」


「なん…だと…!?」


「おい、自分でも気がついてねぇのか?」


「アンタはすでに翼を羽ばたかせて、空を飛んでいるじゃないッスかぁ!」


「え、えええーッ! マ、マジだ……だ、だが、いつの間に背中に翼なんか生えたんだァ?」


 う、うお、俺はいつの間にか空を飛んでいる――いつの間にか生えていた一対の翼を羽ばたかせて空中に浮遊しているー!


「よし、俺達を安全地帯――大霊樹のもとまで運んでもらうぜ。なんだかんだと出来るだろう?」


「ちょ、何故ェー!」


「早くしないと暗黒竜吐息が、こっちまでー!」


「早く飛べッ……大霊樹のもとへ!」


「ぐええ、重いィィ! これじゃ飛べん!」


「何を言ってる。お前は普通に空を飛んでいるぜ」


「お、おお、自分で言うのもなんだが意外だ……意外すぎる」


 こ、これが暗黒竜の力ってヤツ!? 幼生というワケで小さな俺の身体にキョウ達がしがみついたまま空を普通に飛んでいる――この調子なら嘆きの森の中にある目的地こと大霊樹のもとへ疲労困憊することなく飛んでいけそうだ。


「ハハハ、そんな小さなナリで俺達全員を持ちあげた状態で空を飛べるとは流石は竜種!」


「兄貴ッ……いつの間に!?」


「穴に落っこちて行方不明になったような……」


「いいんだよ、細けぇこたぁ!」


「まあ、とにかく、大霊樹はあっちだ。俺の指差す方向へ飛べッ!」


「お、おお、わかったぜ! なんだかんだと、ここからさっさと離れるべきだしな」


 あるぇー! 兄貴は確か偶然なのか、それとも――とにかく、穴の中に落っこちて行方不明になった気がするんだけど、いつの間にかキョウ達と同様、俺の身体にしがみついている。


 むう、そんな兄貴のことは後回しだ! 俺の親かもしれん暗黒竜の成竜が吐き出した広範囲に拡散した暗黒竜吐息が、すぐそこまで迫っている――グズグズしていられるか! さっさとキョウが指差す方向へ飛ぶんだ、俺!


『グ、ギャアアアア! コイツはヤベェ! ん、お前ら……あの暗黒竜の仲間だな、許さん!』


「ん、今の声は?」


「ああ、多分、リッチのクボタ君じゃないかな?」


「リッチ? 古代の魔術師が自ら不死者となった――みたいな存在だっけ?」


「イエース! 嘆きの森には、ああいうのもいるんだよ――っと、面倒くせぇ奴だから無視だ、無視!」


「あ、ああ……」


 ゾンビ共より面倒なモノがいるようだなぁ――って、件の古代の魔術師が自ら不死者化した存在であるリッチことクボタ君が、どうやらこっちへ向かって来ているようだぞ。


 

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