外伝EP16 暗黒竜に転生しましたよ。その10
卵から孵ったばかりの幼生体故の弱さが露見してしまったカタチになっちまったなぁ。
人間から暗黒竜に転生し、物体を腐敗させれる暗黒竜吐息を吐けるようになったが連続で吐くことができないのが痛いな。
ふう、連続で暗黒吐息を吐けりゃ、周囲にゾワゾワと集まってきている全身が腐敗した状態ながらも動き回る禍々しい屍共――ゾンビを一掃できるんだがなぁ。
「うーん、ちと計算外だったかぁ……」
「ス、スマン! 俺は幼竜だから連続で暗黒竜吐息を吐けなくて……」
「いや、ソイツァ仕方がないさ。だが、もしかすると……」
「もしかすると?」
「ああ、ここには〝まだ生息〟しているかもしれん!」
「キョウ、わかったぞ! 暗黒竜のことだろう? だが、アレは絶滅した筈だ。そこいるチビスケを覗いて」
「チ、チビスケとは失礼な! だが、言われても仕方がないかも……」
「暗黒竜の成竜がいれば、鬱陶しいゾンビ共を一掃できそうだな、おい」
「だけど、まだ生息している可能性がある暗黒竜の成竜を呼び寄せる方法ってあるんスか、キョウさん」
ゾンビ共は増え続けている気がする――わ、わかるぞ。鼻が曲がるような腐敗臭が立ち込める範囲が広がっているしね。
さて、俺以外の個体は絶滅したっぽい暗黒竜が、今いる嘆きの森の中になら生息しているっぽいぞ。
だが、どうやって、ここへ呼び寄せるかが問題だな。
「な、なあ、どうやって暗黒竜を呼び出すんだ?」
「クククク、それはな……」
「ちょ、何、見てんだよ……え、俺が何かするワケェ?」
む、むう、絶滅危惧種である暗黒竜の成竜を呼び出す方法って、まさか俺が鍵なワケ?
ま、まさか幼竜だから?
「よし、それじゃ叫べ!」
「叫べって? 何故?」
「わからんのか? ママ、助けてってな!」
「な、何ィィ! 何故、そんなことを!」
「おいおい、お前以外の暗黒竜がいるとしたら、当然、親だろう?」
「つーか、竜の墓場から持ってきた卵の化石から孵ったのが、ソイツだぞ。そんなワケだから、ソイツの親竜はすでに……」
「むう、とにかく、可能性に賭けよう! 叫べ、ママ、助けてってな!」
ちょ、嘆きの森の中にいるかもしれない暗黒竜を呼び出す方法が恥ずかしいんですけど……と、とにかく、叫んでみるか! すっげぇ嫌だけどな……。
「SOS~~~ッ! 助けてくれェェェ~~~~! マッ……マザーッ!」
「マザーじゃねぇ違うだろ、ママだろう?」
「む、むう、だが、これ以上、言わせるなよ……ん、んんん、今、大きな音が聞こえてこないか?」
「う、うひゃ-! じ、地震ッス……うお、何か地面から飛び出してきたッス!」
『暗黒竜ですね。やあ、お久し振りぃ☆』
むう、恥ずかしい! もうマザー助けて、ママ助けて――なんて叫びたくないぜ!
おっと、それはともかく、地震だ……立っていられないほどの大地震だ! とまあ、そんな地震の直後である地面から頭に角、背中に一対の翼が生えた巨大で全身が真っ黒な爬虫類が飛び出してくる。
あ、ああ、コイツが嘆きの森に住む絶滅種――俺の同胞である暗黒竜の成竜だ!
「誰だァァァ~~~ッ! 我を起こしたのは……く、臭ェ! 我が眠っている間にゾンビ共が徘徊する場所と化したのか、嘆きの森はッ――解せぬ! 汚物は消毒せねばならん!」
「ちょ、待てッ! いきなり暗黒竜吐息を吐くな――幼竜が吐き出すモノと違ってアンタが吐き出すモノとは質量自体が違う! 巻き込まれて、俺達まで腐敗しちまうぜーッ! に、逃げろ、みんな逃げろォォォ~~~~!」
暗黒竜の成竜君の奴、不機嫌なご様子だぞ――ああ、地中で眠っていたのを俺が助けてマザーって感じで起こしてしまったせいだな。
だ、だが、いきなり暗黒竜吐息でゾンビ共を消毒ってのは気が早すぎじゃね?
せめて俺達が暗黒竜吐息に巻き込まれない場所まで逃げるのを待ってくれてもいいだろうに――そ、そういうワケにもいかないかな? ゾンビ共は暗黒竜の成竜君にとっては、足許に出現したゴキブリ、或いは顔の周りを飛び交う蠅の如き鬱陶しい害虫と等しいモノの筈だし……。




