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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP16 暗黒竜に転生しましたよ。その8

「ここまで来れば、多分、大丈夫だ」


「あ、ああ、だが、なんだ、アレは!? 半透明の白い人間型の奇妙なモノが、あっちこっちで飛び回っているぞ」


「アレは聖霊(ホーリーゴースト)というヤツさ。詳しいことはわからんが、天使に限りなく近い清浄な存在らしい。生前は聖人なんて呼ばれていた尊い人間だったんだろうよ」


「へ、へえ、そうなんだ。でも、奇妙なコトには変わりはないな」


 聖霊だと!? よくわからんけど、善い幽霊ってところか――天使に近い清浄な存在だってキョウが言っているワケだし。


 さて、俺達は嘆きの森の中にある泉へとやって来る――前述した聖霊というモノが、あっちこっちで飛び回っているそんな場所だ。


 オマケに、キョウ曰く、今いる嘆きの森の中で唯一、昼には陽光、夜には月光が射し込む場所なんだとか。


 なるほど、道理でここだけ清浄な感じがしたワケだ――他は薄暗い上、禍々しい不死者が蠢いているのにね。


「うん、ここは安全だが、大霊樹へ往くには、ちと遠回りなんだよなぁ……ったく、あの野郎! 余計なところに現れやがって!」


「ソ、ソレってウォーサー王のコト?」


「ああ、その通りだ。オマケに奴が率いている幽霊旅団も居やがる。奴らに遭わずぬ大霊樹へ向かわんとな」


「あ、ああ、そうだな……」


 むう、忘れていたぜ――死後、悪落ちした名君ウォーサー率いる幽霊旅団のコトを。


「なあ、アルケル。お前なら、アイツらを避けながら大霊樹のもとへ往ける方法を知っているんだろう?」


「ええ、もちろんですとも! ですが、そのためには、再び彼の力を借りる必要があります」


「ちょ、もしかして、また俺がァ?」


「あ、はい、その通りです☆」


 さて、大霊樹のもとへ無事にたどり着く方法について漆黒の鎧騎士の亡霊アルケルには、何かしらの一計があるようだ。


 ふええ、なんだかんだと、俺は切り札的存在のようだ――ウォーサー王率いる幽霊旅団を避けるための。


「お、おい、俺は何をすればいいんだ? 今度は自分からは動かねぇ……さっきみたいに調子をこいて馬野郎に踏んづけられるとか、そういう目の遭いたくはないからな」


「お、謙虚だねぇ☆ んじゃ、とりあえず、泉の周りに生えている〝その花〟で首飾りをつくるんだ」


「あ、ああ、だけど、何故、そんなモノを?」


「その花は竜牙花ってモノでね。幽霊旅団など悪霊の類を避ける香気を放つ代物なんだ」


「そ、そうなの? じゃあ、つくっておくか!」


 へえ、そんなモノがあるのね――あ、ああ、だから、今いる泉の周辺には悪霊の類とか禍々しいモノがいないワケね。


 まあ、なんだかんだと、竜牙花で首飾りをつくっておこう。絶対に悪霊の類だと思われる対ウォーサー王率いる幽霊旅団を考えて。


「うん、イイ出来栄えだぜ。ちょっと貸してみろよ――アルケル、ちょっと来い」


「ん、なんです……って、ウギャーッ! コイツはキツい!」


「アルケルの身体が半分くらい消えかかっている!」


「むう、幽霊には効果抜群みたいね。よし、これでイケるぞ」


「ワハハ、人が悪いですなぁ。危うく昇天しちゃうところでしたよー☆」


 むう、竜牙花の首飾りは近づけるだけで幽霊を成仏(?)させる効果があるのか!?


 コ、コイツは役立つかもしれないぞ――だが、幽霊は幽霊でもウォーサー王は悪霊の中の悪霊――大悪霊、即ち怨霊だと思う。


 そんな奴にも効果があるんだろうか? まあ、効果はあるだろう――が、タダ幽霊のように呆気なく昇天するワケがないと思う。


 むう、後は俺次第か? なんだかんだと、弱点っぽいし。


「よし、大霊樹へ向かうぞ。お、眼印を発見! 確か北の方角だったかぁ」


「目印?」


「あの大木だよ」


「ふ~ん……って人面樹って奴か!」


「ビンゴ! あの気味の悪い大木が目印なんだよ、大霊樹へ向かうための」


「へ、へえ、そうなんだ……し、しかし、アレに見つめられている気がするぜ」


 さて、聖霊が飛び回る泉を出ると同時に、俺の双眸に気味の悪いモノが移り込む――幹に人間の顔のようなモノが見受けられる大木だ。


 所謂、人面樹ってモノだ――と、そんな人面樹の北に嘆きの森の中にある目的の地こと大霊樹があるようだ。


『やあ、キョウ。今日はどこへ向かうのかね?』


「わ、木が喋った!」


『ん、私が喋ると何か不都合でも?』


「い、いや、それは……」


「ハハハ、コイツはお前さんを見るのが初めてなんだよ。さぁて、この森の主――大霊樹へ向かおうと思っているんだが、やっぱり〝居る〟んだろう、アイツら……」


『アイツら? ああ、幽霊旅団のことかな? まったく、迷惑な奴らですね』


「ああ、まったくだぜ。アイツらさえここへ来なければ、何も苦労せずに大霊樹のもとへ往けるのに……」


『ハハハ、そうですなぁ。アイツらここへやって来たせいで他の不死者共も騒めいているし……』


「わ、他の不死者が騒めいているって、そういうことかーッ! ゾゾゾ、ゾンビ共に囲まれているぞ!」


 う、うおー! 人面樹が喋った――だ、だが、兎である兄貴やヤスが普通に喋っているし、何も不思議じゃない展開かもしれないな。


 ちょ、それはともかく、幽霊旅団が嘆きの森へとやって来たせいで他の不死者共も騒めいているようだ。


 そんなワケで俺達の周囲には、何かしらの要因で蘇り全身が腐敗した状態ながらも動き回る禍々しいしき幽鬼の如きモノ――ゾンビが集まってきている!


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