外伝EP16 暗黒竜に転生しましたよ。その3
死んだらあの世に往くor異世界に転生する?
そんな二者選択を迫られたら、どうする、どうする、どぉする~君ならどうするぅ?
――って、簡単に決められるワケがないか。
うーむ、難しいところだ――が、そういうコトは超越的存在である神様が決めるコトだろう。
そんなワケだ。神様は身勝手だとは思わないか? 俺の意見も聞かずに勝手に異世界転移させた上、暗黒竜とかいう質の悪い伝説が残る生物に転生させたワケだし。
さて。
「ここはブルーノワールという世界? アルシュバーンという大陸のど真ん中にあるトンでもなく規模の広い盆地である兎天原? で、そんな兎天原の東方にあるエフェポスの村?」
むう、ワケのわからん言葉の波が、ドッと俺に襲いかかる――流石は異世界だぜ。
これからも、そんなワケのわからん言葉の波が、俺を襲ってくるんだろうなぁ――早く覚えておかなくちゃ混乱しそうだぜ。
「お前は何も知らないワケだし、ちったぁこの世界のコトを教えておくべきだな。さ、ついて来い」
「お、おい、ついて来いって、どこへ?」
「面白いところだ」
「むう……」
確かに俺は何も知らん――だからって、どこへ俺を連れていく気なんだ?
キョウとかいう名前の長身の女は、面白いところだって言うけど、危険な匂いがするぜ……。
「あ、ドラゴンの子供だ」
「珍しいな。アララック山から来たのか?」
「キョウさん、ドラゴンの柄付けしたのかい?」
「もしかして刷り込みをしたのか、スゲェー!」
むう、俺の姿を見るなり、まるで珍獣を見るような視線を向ける兎や猫の獣人達――複雑な気分になるぜ。
俺が知っている兎や猫は喋らないし、人間のように二足歩行で歩くコトができない生物の筈なんだが……。
それはさておき、俺はキョウにエフェポスの村の市場へと連れ出される――と、案の定、俺の姿を物珍しがる住人達が集まってきたワケだ。
「面白いところってには、ここのコトかよ」
「ん、違うぞ。目的地へ向かうためには、どうしてもここを通らなくちゃいけないんでね」
うん、市場っていうだけあって様々な店がある――武器屋に防具屋、それに魔術屋に錬金術屋! さ、流石は異世界だなって感じの店があっちこっちに見受けられるぜ。
「フフフ、人気者だな」
「む、むう……」
「あ、そうだ。面白い場所へ往く前に、これだけは言っておくぞ」
「な、何を?」
「フフフ、それじゃ単刀直入に言う――不死者がたくさんいるぞ!」
「ふ、不死者? ゾンビ……とか?」
「はい、その通りです! ですが、私のように理性を保っている個体は、多分いないと思います☆」
「あ、ああ、そうなんだ……」
おいおいーッ! 俺を禍々しい場所へ連れていく気か!
ゾ、ゾンビねぇ、目の前にいる瓶底のような分厚い眼鏡をかけた女のコことメリッサも、そんなゾンビであるが、彼女の場合、理性を保ったままの状態――生前の人格そのモノな状態のようだが、これから往く場所にいる不死者の一種であるゾンビは、多分、俺が知っている某ホラー映画の中に出でくる血肉を求めて彷徨う禍々しい動く死体ゾンビなんだろうなぁ……ああ、不安だ、超不安だァ!




