外伝EP15 兎天原にやって来た修学旅行生 その30
広大な盆地である兎天原――主に東方に住んでいる連中は人間の姿になるコトを夢見ているモノが多いようだ。
ああ、そんな兎天原の東方に住んでいるモノの大半が獣人だ。
獣人のままでもいいじゃん——って、僕は思うんだけど、連中は人間に対し、何かしらの憧れを抱いているっぽい。
故に、人化の法とかいう変身術を考え出し、なんだかんだと、その身を人間のモノに変化させようと試みているようだ。
――が、成功例は少ない様だ。
し、しかし、あんなトンでもない薬が人化の法の成功率を格段にあげたっぽい。
まあ、そんなこんなで兎獣人の兄貴ことハニエルが金髪碧眼の美女の姿に変身したぞ!
あ、ついでに――。
「おおお、俺も人間の姿を維持できているッスーッ!」
「ワハハハ、でも、冴えない眼鏡の少年って感じだな☆」
「うえええ、それは言わないでほしいッス!」
「まあ、それはともかく、アレのおかげで仲間を人間の姿に戻せるな、池口!」
「う、うん、多分ね……」
例の薬のおかげで格段と成功率があがった人化の法を行使したコトによってヤスも人間の姿に変身し、それを維持できているようだ――が、冴えない眼鏡の少年なんだよなぁ。
ちなみにヤスご本人は、イケメンになれると思っていたっぽいので物凄く残念そうだ、
ん、それはともかく、見た目はアレだけど、カルザネル草からつくり出した薬が完成したワケだ。
これで光桜学園の仲間達を獣の姿から人間の姿に戻せるぞ……多分!
「グ、グワーッ!」
「え、えええ、上手くいかなかった!?」
だ、だけど、実際には中々、上手くいかないモノである。
試しにっていうか最初にアレを飲むと志願した同級生の及川――豚の姿に変わってしまった同級生が悲鳴をあげて失神してしまったワケだし……。
「お、おい、大丈夫か?」
「う、うーん……オ、オオオーッ!」
「お、及川の身体が光っている……あ、ああ、人間の姿に戻ったぞ!」
「でも、赤ちゃんになってしまったわよ!」
「ううむ、成功っちゃ成功だな☆」
「お、おい、これが成功って言えんの?」
「ま、まあ、赤ちゃんの姿になってしまったとはいえ、人間の姿に戻れたし、これを成功と言わずになんというってヤツだ」
悲鳴をあげて失神してしまった及川の身体が光り輝く!
その刹那、そんな及川の身体が豚から人間に変化する――が、赤ちゃんと化してしまう。
ちょ、獣化の呪いは解けたっぽいが若返っちゃいないかァ!?
「ワハハハ、赤ちゃんに戻っちまったか~☆」
「う、うるちゃい! おれはあかちゃんなんかじゃないじょ!」
「お、喋れるのかぁ! うん、こりゃタダの赤ちゃんじゃねぇなァ」
及川の奴、赤ちゃんになっちまったけど、喋るコトはできるようだな。
ん、そんなこんなでタダの赤ちゃんではないのかも――魔術とか超能力とか使えりして!
「と、とりあえず、オシメを……」
「やめ……やめるでちゅー!」
「ウ、ウギャーッ! し、痺れるゥゥゥ~~~ッ!」
「ハハハ、全身から電流を放出するとはな! 凄い赤ちゃんになっちまったな、コイツ☆」
ウギャーッ! 及川の奴、本当に魔術を――全身から電流を放出するという絶技を披露する!
おかげで僕は、そんな電流の奔流を間近で浴びてしまう……ぼ、僕は豚の姿から人間の姿に戻してやったじゃないかぁ……と、胸中でつぶやいた途端、僕の意識は深淵へとズブズブと埋没していくのだった……。




