外伝EP15 兎天原にやって来た修学旅行生 その26
不死者ってヤツを例えるなら、何かしらの要因――宇宙から降り注ぐ謎めいた微粒子や光線、または特殊な薬品などで蘇った動く死体ことゾンビかな?
現実世界だとホラー映画に出てくる代表格的な不死者だろうか?
んで、コイツらの特徴は〝死なない〟コトである。
奴らは生命活動を停止した状態であるにも関わらず蠢く禍々しい動く死体だ。
仮に活動を停止させるとしたら、手足、それに首を斬り落とす等の行為を行わないかぎり、活動し続ける筈だ――その身が腐って地に還るまでは。
さて、ゾンビと類似した何かしらの要因によって蠢く死体の一種であるミイラ共に僕達を囲まれている。
その前にコミュニケーションを唯一、取るコトができるタケシという名前のミイラ男及びミイラ女を束ねるリーダー格には、僕の身に宿る聖属性&光属性の攻撃が通用しないのか!?
ま、まあ、一応、右胸に風穴を開けるコトはできたが、活動を停止の追い込むコトはできなかった。
奴らの弱点の筈なんだけどなぁ……っと、タケシの攻撃を受けてしまった僕の意識は、今にも涅槃へと旅立とうとしている……。
本来いるべき世界では、暴力沙汰に一切、巻き込まれるようなコトはなかったのに……。
と、そんな僕の代わりの喋る上に二足歩行が可能な大鼠……いやいや、聖者モルニスが、目の前にいるミイラ共のリーダーことタケシと戦うと言い出す――不死者を殺す術があるっぽいぞ!
「さてさて、ミイラリーダー君……調子に乗っていられるのも今のうちだぜ!」
「ナンダト! フン、小賢しい鼠野郎よッ……死ねィィ!」
「なるほど、そう動くか……よし、ならば!」
「ナ、ナンダ……鼠野郎ガ消エタ!?」
「お~い、ここだ……ここにいるぞ!」
「俺ノ背後…ダト…!? ウ、ウゴーォ……俺ノ右腕ヲ返セェェェ~~~!」
さて、ミイラリーダーことタケシとモルニスの戦いが始まる――ん、戦いが始まって早々、モルニスの姿が消える……いや、違う!
目に映らないほどの高速で動きタケシの背後に回り込んだワケだ。
で、そんなモルニスの左手には、小汚い包帯に覆われた棒状の物体が握られている……んんん、それはタケシの右腕じゃないのかぁ!?
「ああ、スマンスマン。あまりにも脆かったんでつい……」
「ガアアアーッ! 俺ノ右腕ガァ……返セぇぇぇ~~~!」
「本当だぞ。お前、自分が干からびた乾燥死体だって忘れているだろう?」
「五月蠅イィィ! ソンナコトワカッテイルッ……ダガ、ソレヲ認メルワケニハイカナインダァァ!」
むう、今度はタケシの右腕をもぎ取る。
意志を持ち動くコトもできるが、なんだかんだと奴の身体は干からびた人間の死体である。
その不浄な身体は、そんなワケだから脆くなっていて当然なんだろう――が、そのコトを重々承知ながらも認めたくはないようだ。
「さあ、君もやって見給え☆」
「え、えええ、僕も……!?
「それじゃ私がやってみる! ウリャーッ!」
「グ、グワーッ! 俺ノ右足ヲ返セェ!」
「ひ、ひええ、もぎ取った右足が動いている……さ、流石は不死者の身体の一部だァ!」
先程、受けたダメージが残ってはいるおかげで動けない僕に代わって清水がタケシの右足をもぎ取ったぞ……お、おお、やるじゃないか!
だが、タケシは不死者だ。
右足をもぎ取った程度じゃ再起不能に追い込むコトはできない……ひい、もぎ取ったタケシの右足が釣りあげたばかりの生きのイイ魚の如く激しく蠢いているぞ!
「ウグウウ、コレデ勝ッタト思ウナ! モギ取ラレタ両腕ト右足ノ代ワリナラアルゾ……大量ニナァァァ~~~! 子分共、ワカッテイルダロウ!」
「代わりがある……だと!?」
「見て! タケシとかいうミイラリーダーの命令で動いた数体のミイラ男が、仲間のミイラ男の両腕と右足をもぎ取ったわ!」
「うへぇ、まさかアレをタケシに移植するのか?」
「そのまさかッス!」
むう、タケシの命令で動いた数体のミイラ男が、一斉に仲間である筈のミイラ男の一体に飛びかかる……両腕と右足をもぎ取った…だと…!?
ああ、それを接着剤のような粘着物でタケシの身体に移植したぞ!
な、なるほど! 移植とはそういうコトだったのか!
で、でも、変だ……マジで変だ! そして滑稽だ!
「オ、オイィィ! 移植スル場所ガ違ウゾ! 右足ハイイッ……ダ、ダガ、何故、尻ニ両腕を移植するゥゥゥ~~~!」
おいおい、移植するのはいいけど、両腕を尻にくっつけるだなんて……ふ、吹き出しそうだ……☆
「ワ、笑ウナァァァ~~~!」
「わ、笑ってなんかいな……ギャハハハ、駄目だ……嘘は吐けない!」
これが笑わずにいられるかッ!
だが、笑ってしまったコトでタケシがキレたぞ……ま、まあ、当然かな?
とにかく、尻に新たな腕を移植されてしまったミイラリーダーことタケシが再び襲いかかる!




