外伝EP15 兎天原にやって来た修学旅行生 その24
「アガガガ……ガクッ!」
「ヒ、ヒロシィィーッ! ソレガ貴様ラ生者ノヤリ方カーッ!」
「お、おい、不死者なんだろう? 首がもげたところで平然としているんじゃ……」
「違ェヨ! 俺ダッテナ……チョットシタコトで死ヌンダヨ! イヤ、活動停止スル場合モアルンダヨ!」
「あ、そうなの? へ、へえ~!」
「テメェ、馬鹿ニシテンノカ、ゴルァ! オイ、ヨシヒロ、マサオ、アイツヲヤッチマエェ!」
「ギギギィィーッ!」
「ちょ、お前ら日本人かよ! 日本人みたいな名前だな、おい!」
むう、僕が無意識のうちに放った聖属性、或いは光属性の鉄拳によってミイラ男A――ヒロシは死んだっぽい……いや、活動停止状態となったようだ。
ちょ、その前に日本人みたいな名前だな。
そんな僕達を取り囲むミイラ男共は――。
「池口、そのリーダー格のミイラ男の名前ってタケシだったりして!」
「それはないような……」
「ウ、ウオ、何故、俺ノ名前ヲーッ!」
「ちょ、ビンゴ……ビンゴだったワケェ!?」
うへぇ、ビンゴかよ。
とにかく、リーダー格のミイラ男の名前はタケシってコトだけはわかったぞ。
「ギギギガーッ!」
「何ィ、トシアキ、オ前モ加ワルだと? フン、好キニスルガイイ!」
「ウガガガー!」
「ヨシ、ソレジャ任セタゾ!」
「ちょ、大柄なミイラ男も近づいて来る!」
ヨシヒロにマサオ――オマケにトシアキという名前の三体のミイラ男が、僕のもとに迫り来る!
さ、三体一かよ……ど、どうする、僕!
「ギギガガガ!」
「ギャガガガー!」
「ゴキキキー!」
「オ前ラ! 俺ノ言ウコトニ従エ! 従ウンダァ!」
「え、仲間割れ!?」
三体のミイラ男――ヨシヒロ、マサオ、トシアキが殴り合いを始める。
うーむ、誰が最初に攻撃を仕掛けるか――等々でモメたのかもしれない。
「奴らがモメている隙を突くぞ。カルネザル草が密生している場所に移動しよう」
「隙を突くって!?」
「ああ、幸いなコトにリーダー格のミイラ男タケシを含めると動いているのは、あの四体のみだ……さあ、こっちだ、こっち!」
「お、おおッ!」
奴らがモメている間に、その隙を突いてカルネザル草が密生している場所へと向かう……だって!?
ま、まあ、今のうちなら――とそんなこんなで僕らはモルニスに続くカタチで駆け出すのだった。
あの四体のミイラ男以外は、まったく攻撃を仕掛けてくる気配が――いや、動かないので今がチャンスってワケだ。
「アギアギアー!」
「年功序列トイウヤツダ! トニカク、ヨシヒロカラ順番ニナ、順番ニ……ッテ、オイィィ!」
「ギギギーッ!」
「追ワナクテイイノカッテ? 馬鹿、追ウニ決マッテイルダロウガァーッ!」
――と、連中が気づいた時には、僕達は視界の外である。
むう、当然、追いかけてはきたけど。
「あ、この先の地面が光っている!」
「天井も光っているわ! まるで夜空で煌々と輝く星みたいだ!」
ん、どうでもいいけど、地面が……天井が輝いている!
「もしかして閃光草かのう。ああ、確か触れるだけでも危険なモノだった気がする。故に、迂闊に障るんじゃないぞ」
「ふええ、そうなのぁ……素足で踏んづけたらヤバいコトになりそうだなぁ……」
触れるだけで危険なモノ……だって!?
こ、ここは危険物が他にもありそうで怖いなァ……。
僕らが探すカルネザル草も、なんだかんだと、毒物だし――ん、モルニスが立ち止まったぞ……もしかして!?
「到着っと……さあ、好きなだけ持って行きたまえ!」
「ど、どうでもいいけど、臭いぞ……こりゃたまらん!」
「生ゴミの臭いの匹敵する悪臭だわ!」
「ハハハ、この臭いはちとヤバいが搾り汁は無臭だぞ☆」
「うう、そうなのか……と、とりあえず、採取だ!」
僕の目の前には、巨大な人間の石像が鎮座している。
え、どんな石像かって?
そうだなぁ、巨大な人間の頭に数多の手足、そして小さな人間の頭がついているヘンテコリンな石像だ。
とまあ、そんなヘンテコリンな石像のあっちこっちに生えている紫色の花が、件のカルネザル草のようだけど、ツンと鼻腔を刺す嫌な臭いを放っている――例えるなら生ゴミだ。
生ゴミの酸っぱい臭いを漂わせているんだ……お、おえ、吐きそうだ……だ、だけど、コイツを採取しなくちゃいけないんだ……が、頑張れ……頑張って採取するんだ、僕ーッ!
「気をつけろ! 花の部分に触れるなよ。臭いがしばらく取れなくなるからな」
「お、おお……よし、採取成功!」
「わあ、どうでもいいけど、ミイラ共がやって来たわ!」
花の部分に触るなって!?
当然だ、臭いがしばらく取れなくなるって話だしな。
と、それはともかく、あのミイラ男及びミイラ女共が、僕達がいるヘンテコリンな石像の前まで迫って来たぞ!
ったく、せっかくカルネザル草を採取できたっていうのに!




