EP1 俺、魔女になります。その4
「チクショー! せっかく人間になれたのに!」
「あ、兄貴……」
ドヨヨ~ンと兄貴は落ち込む。
ほんの一、二分ほどしか人間に変身できなかったのが、そんなにショックだったのかよ……。
「てか、兄貴って実はメスなんすか? じゃあ、姉貴って呼んだ方がいいんすかね?」
「むう、それはお前の好きにしろ……」
「じゃあ、これまで通り、兄貴って呼ばせてもらうっす!」
人間のように二足歩行ができるし、オマケに喋ることができるけど、兄貴は兎だ。
見た目じゃ性別がわからなくても当然だよな。
或いは、俺が唱えたヘンテコリンな呪文のせいで、一時的に金髪碧眼の人間の美女の姿に変身しただけなのかもしれない。
「うおおおっ……俺は自力で人間になる!」
「あ、兄貴、立ち直るの早っ!」
立ち直るのが早い兄貴は単細胞だからだな――あ、俺が言えた義理じゃないかな?
ここが異世界だってことを呆気なく受け入れたワケだし……。
「素晴らしい! 私は感動したぞ! よし、お前もキョウと一緒に魔術師になるんだ!」
「おう! 任せておけ! 舎弟よりも早く俺は魔術師になる!」
兄貴はホントに単純だなぁ、そして忘れてるよ。
王家の墓からアジトへと戻ったその日に、ブックスの1~10ページに記されていた魔術師の心得についての文言を一緒に読んだ時、頭が痛くなるって文句を言ってたいたクセに……。
「さて、修行を再開しよう――と、その前に、いくつかそろえるモノがある故、買い出しに出かけようじゃいないか。」
「え、買い物? 何を買いそろえるんだよ?」
「それはだな。私の30ページを読めばわかる。」
「あ、ああ、そういや、あれこれと初級魔術が取得方法を記されて11~29ページまで読んでいたな、俺は――。」
さっきはいきなり高レベルの魔術が記されたページを読んだっぽいなぁ、何せ402ページだしねぇ。
さてと、ブックスの30ページに何が記されているんだろう?
早速、読んで、そこに記されたモノを買いに行ってみるかぁ――アジトの近場にはエフェポスという村だったか町があるっぽいしね。




