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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP15 兎天原にやって来た修学旅行生 その14

 生暖かくて酸っぱい臭いが漂う不快で真っ暗闇な空間――今、そんな場所に僕はいる。


 最悪だ……ここは多分……いや、間違いなくムシュフシュとかいう怪物の胃袋の中である。


 そう……僕はアレに丸呑みにされたんだ……そして、今、ここにいる。


 あ、ああ、そういえば、兄貴や清水も、ここにいる筈なんだが――。


「ふえええ、トンでもない臭いだニャァ……」


「おお、姿は見えないけど、無事のようだな!」


「当然だニャ! あたしがあの程度で死ぬかっつうニョ!」


「そういえば、兄貴はどこにいるんだろう」


「先に食べられた筈だから、きっと胃液で……」


「ああ、多分な……ご冥福をお祈りいたします、兄貴!」


「ば、馬鹿野郎ッ! 俺はまだ死んじゃいねぇよォォォ~~~!」


「あ、兄貴……生きていたのかァ!」


「当たり前だ、ゴルァァァ~~~! 兎を……兎獣人をナメんなァァァ~~~!」


 お、おお、兄貴も清水も無事のようだ――とはいえ、姿が見えないんだよなぁ。


 むう、ここが――ムシュフシュの胃袋の中に照明器具があれば……って、そんなモノが都合よくあるワケがないよなぁ。


「痛ッ……何かに頭をぶつけたぞ……ぐお、背中に何かある……ギャッ! ひ、肘をぶつけたァ……く、暗くて何も見えないのが癪に障るなぁ! 灯りが欲しいところだ……」


 うぐ、暗くて何も見えないけど、僕の周囲にはゴツゴツした物体があるようだ……ったく、頭や肘をぶつけてしまった……一体、何があるんだよ!


「灯りならあるぞ。だが、そんな灯りのせいで後悔するコトになるぜ」


「わ、俺達以外にも誰かいる!」


「す、姿を見せるニャ!」


 あ、灯りがある…だと…!?


 そんな声が聞こえてくる……むう、僕と清水、それに兄貴以外の気配を感じる……ナ、ナニがいるんだぁ!


「ここだよ、ここ――アンタの足許だよ。ま、人間さんの眼は暗い場所に対応していないから見えないかもしれないけど、俺は間違いなくアンタの足許にいるぜ」


「あ、足許……う、うおおお、目が……目がたくさん! しかも光ってる……ななな、なんだァ!」


「むう、アタシは猫だニャ! だから夜目が利く! そんなワケで池口の足許に見受けられる〝たくさんの光る眼〟の正体がわかるニャ!」


「お、おお、それじゃ一体……」


「うむ、それは……鼠だニャ! たくさんの鼠が池口の足許にいるニャーッ!」


「た、たくさんの鼠…だと…!?」


 な、なぬーッ! さっきの声は、僕の足許にいるらしい〝たくさんの光る眼〟――いや、たくさんの鼠の一匹の声のようだ。


「フフフフ、ようこそ! ムシュフシュの胃袋の中――いや、鼠王国へ! だけど、ここへ出たければイイ方法があるぞ!」


「出る方法!?」


「ある場所を潜れば外へ出るコトができるんだ」


「そ、そのある場所って、まさか……」


「はい、ちょっと……いや、物凄く臭いけど、ムシュフシュの身体の外に出るならなら、アソコでしょ☆」


 ここはムシュフシュの胃袋の中では!?


 そんな場所に国をつくったのか、鼠達は――って、外に出る場所がある!?


 うう、トンでもない悪臭に襲われそうな予感……脱出場所は限定されてくるしね……。


「あ、ああ、思い出した。あの場所へ出張らなくても外へ出る方法もあったんだ」


「なんだぁ、それを早く言ってくれよォ!」


 嫌味か、貴様ーッ!


 思わずそう言いたくなってしまったよ……ったく、とにかく、どこからムシュフシュの身体の外に出られるんだぁ!


「さあ、こっちこっち!」


「暗くて何も見えないぞ。お前達の光る眼を頼りに進めってか?」


「あたしが案内するニャ」


「お、おお……って、清水の眼も光っている!」


 とりあえず、鼠達、オマケに清水の後をついて行こう。


 アイツらの眼が真っ暗闇の中で光っているしね。


「明るくなってきたぞ」


「鼠王国とやらに到着か?」


「そうみたいだな。し、しかし、こんな場所に国をつくるだなんて物好きだなぁ……」


 さて、なんだかんだと、僕の周囲が明るくなってきた――んんん、小さな長屋風の建物が立ち並ぶ場所へとやって来たゾ!


「あ、ああ、やっぱり、ここはムシュフシュの胃袋内のようだ」


「天井がピンク色……ああ、胃壁かニャ?」


「泉がある……いや、あれは胃液か? 無色透明のようだけど、酸っぱい臭いが漂っているなぁ……」


 鼠王国を構成する建物は、ムシュフシュの胃袋の中に溜まった胃液の周辺を囲むように存在しているようだ――お、王様の居住地っぽい他の建物より、〝ちょっとだけ大きな建物〟も見受けられるぞ。


「ここなら俺達の姿が見えるだろう?」


「あ、ああ、しかし、こんなにもたくさんの鼠に寄生されているとはなぁ……」


「寄生虫呼ばわりをすんな! 住めば都って言うだろう?」


「そ、そうなのかなぁ……ん、暗くてわからなかったけど、王様鼠も一緒っぽいね」


 鼠王国を構成する小さな長屋風の建物ひとつひとつから滲み出す煌々とした灯りのおかげで、俺の足許にいる連中――ムシュフシュの胃袋の中に寄生する鼠達野姿がようやく見えるようになったぞ。


 ふええ、百匹は確実にいるぞ――ん、王冠をかぶった鼠もいるけど、もしかして王様か!?

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