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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP15 兎天原にやって来た修学旅行生 その11

 シャムシェラの森の中で出遭った奇妙な荒魂――元聖職者を名乗るアズヴァーは、自身の遺体の行方を探し求めている。


 だが、ムシュフシュという怪物に食い殺された――と、言っているので、そんな遺体が無傷で残っているワケがないだろう。


 多分、食い散らかされて酷い状態で散乱している筈だろう。


 その前にムシュフシュに食べられてしまったのは、いつのコトなのやら……。


 さて、ムシュフシュと同じくシャムシェラの森の中に住む怪物であるバシュムと僕達は遭遇する。


 だが、コイツは自称、菜食主義者である。


 そんなワケで僕達を食べないって言っているけど、怪しんだよなぁ……外見は頭に角が生えた大蛇なワケだしねぇ。


 え、見た目で判断するなって?


 うーん、まあ、そうだけどさぁ……ま、まあ、とにかく、バシュムは荒魂であるアズヴァーから独特の臭い(?)を感じ取ったようだ。


 故に、上手く交渉できれば、アズヴァーが探し求める〝自身の遺体〟を発見するコトができるかもしれない。


「お、おい、俺達に危害を加える気がないのなら、こここはひとつ協力を要請したいのだが……」


 と、キョウがバシュムに交渉を――とばかりに話かけるのだった。


 むう、僕も交渉してみようかな……。


「イイぜ。だが、あの御方ン住処には案内しねぇぞ。んで、協力というのは――」


『私の遺体を探してほしいのです! この先にある嘆きの沼のあたりで、私はムシュフシュに食べられてしまいこの有様なのです』


 お、何気に親切な奴だゾ!


 だけど、あの御方――多分というかモルガン・ルフィエルのコトだろう。


 ソイツのもとには案内しないと明言しているから頼んだところでNOと言うだろう。


 最悪、怒らせてしまいそうだ。


「ムシュフシュの野郎は食べ残しが多い。多分、多少は残っているかもな……よし、ついて来い」


『あうう、頭蓋骨くらいは残っていてほしいですなぁ……そうじゃないと天国へ逝けません!』


「頭蓋骨が残っていないと天国へ逝けない?」


『はい、ラーティアナ教団が発行している書物の一冊に、そんな記事がありまして……』


「そ、そうなのか……じゃ、じゃあ、往ってみようぜ。嘆きの沼へ――」


 へえ、頭骸骨がないと天国へ逝けないねぇ……。


 要するに、ラーティアナ教という宗教には、遺体の一部が残っていないと成仏できない――みたいな教えがあるようだな。


「ああ、そうそう。嘆きの沼の周辺にいる連中は面倒くせぇモノばかりだ。憑かれたら大変だぜ。さ、俺の身体に乗れ――奴らを避けるコトができる筈だ」


「お、おお……って、ちょっとヌルヌルしててキモッ……あ、なんでもない!」


 バシュムの奴、見た目と相反する親切な奴だなぁ――と、僕は改めて思うのだった。


 しかし、面倒くさい奴が多いのか……ああ、そういえば、さっきから聞こえてくるんだよなぁ、荒魂共の嘆きの声が……うう、嫌な気分になるんですけど……。


『ああああーッ! あの時、あの時ッ……アレを食べていれば!』


『クソがァァァ~~~! 私の金がなくなっていく……』


『何故、俺は死ななくちゃいけないかったんだ! 神様、アナタをお恨みしますゥゥゥ~~~!』


「…………」


「ウニャアアアアアーッ! 人間に戻れなそうで怖くなってきたニャ……鬱だ……鬱だニャ……」


 こ、ここに――嘆きの沼の周辺にいるだけで、様々な理由で嘆く荒魂共と同じ気持ちになりそうだ。


 う、うお、奴らの影響を受けた清水が嘆きの叫びを張りあげたぞ。


「早速、影響を受けたモノが出てしまったな。どれ、俺は奴らを一掃してやろう」


「え、影響って……うううう、なんだか僕も嘆きたくなったきた……ああああ、この世界のずぅぅぅ~~~と一緒にいなくちゃいけないのかァァァ~~~! ゆ、憂鬱だーッ!」


「う、うおーッ! 二十万MGをスラれたコトを思い出したら嘆きたくなってきた!」


「あ、兄貴ッ! それは初耳っす……ううう、俺も考古学の手柄を他人に取られたコトを思い出して嘆きたくなったッス!」


「いかんな。皆、嘆き悲しむ荒魂共の影響を受け始めたぞ……」


「未熟者よのう。わしなどフ~ンで済ますところじゃ☆」


「それはウサエル長老だけでしょうがァァ! うう、本当の耐えるのが辛くなってきたわ……バシュムさん、頼むわ!」


「おう、では……グギャアオオオオオオーッ!」


 く、嘆きの沼の周辺を彷徨い歩く荒魂共の影響が僕達一行に拡散していく!


 だ、駄目だ……清水と同じく嘆きの叫びを張りあげてしまった……い、いかん! このままだと正気を保てなくなってきた……。


 さて、そんな状況を打開すべくバシュムは、周りに生えている巨木も弾き飛ばしてしまいそうな衝撃波の如き激しい雄叫びを張りあげるのだった。


 激しい雄叫びで荒魂共を追い払うって感じか――。


『ウギャアアアアッ!』


『やめろッ……やめろォォォ~~~!』


「おお、荒魂共が逃げていったぞ……俺は見たぜェ!」


「お、効果ありィィ……ってか?」


「いや、逆じゃ!」


「逆だと!? 兎爺さん、どういうコトだ!」


「バシュムと言ったか? お前さんの雄叫びによって多数の荒魂は逃げ出したようじゃが、逆効果的なコトを招いてしまったようじゃぞ」


「なん…だと…!? む、むうッ……俺と同じ大きさの巨大な荒魂ッ……不味い輩を呼んでしまったようだ。す、すまない……本当にすまない……」


 バシュムの雄叫びは、確かに荒魂共を追い払う効果を発揮するのだが、一部の効果がないモノ――巨大サイズの荒魂を呼び寄せる逆効果を発揮してしまったようだ。



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