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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP15 兎天原にやって来た修学旅行生 その5

「喜びと怒りの狭間へ到着だ。ここまで来れば、あの魔女が引きこもっている遺跡も近いぞ!」


 僕がいる兎天原の東方の各地には、古代遺跡が点在しているようだ。


 しかも未発掘の古代遺跡も多々!


 そんなワケだから大儲けのチャンス、そして兎天原に於いてだけど、多大な名声を得るチャンスでもある。


 はああ~……僕も、そんな大波(ビックウェーブ)に乗ってみたいもんだ。


 と、それはともかく、僕達は喜びと怒りの狭間という場所へとやって来るのだった。


「喜びと怒りの狭間?」


「うむ、この先の区域では、黄金茸を発見してしまったぞ、ラッキー! と、そんな喜ばしいコトは起きない場所なのじゃ」


「それは一体どういうコトなんだニャ?」


「ありていに言おう――この先は〝怒り〟の側面のみが反映された危険な区域というワケじゃ」


「だから、この先では喜ばしいコトは起きないッス」


「ウギャーッ! 早速、痛い目に……く、毬栗(イガグリ)を踏んでしまったァァァ~~~!」


「今のは兄貴の不注意だと思うッス」


「な、なんだとーッ!」


「ま、まあ、とにかく、この先は慎重に進まないといけないなぁ……」


 喜怒哀楽の怒りの側面のみが反映された区域…だと…!?


 シャムシェラの森の中は、時間帯(?)によって喜怒哀楽という僕達、生き物が抱く気持ち――四つの感情に似た側面が反映される場所のようだけど、特定の――怒りの感情のみが反映されている区画があっても、別段、不思議じゃないと僕は思った。


 怒りに満ちた区画かァ、そんなワケだから多分……。


『グオオオオーッ! 許さんッ……許さないぞ、絶対にィィ!』


「わ、怒鳴り声だーッ!」


「この先に誰かいるっぽい……喧嘩でもしてるのかニャ?」


「ありゃ、喧嘩をしている馬鹿野郎の声じゃねぇぞ……荒魂(あらみたま)の叫び声だ」


「あ、荒魂?」


「ありていに説明すると怨霊ッス! ここには恨みを抱いたまま死んだモノの魂が集まって来るッス!」


「ほ、ほええ、なんだか物騒だなァ……」


 恨みを抱いたまま死んだモノの魂こと荒魂――怨霊が集まって来る森でもある…だと…!?


 な、なんという物騒なッ……いや、禍々しいって言った方が正しいかな?


「さてさて、この先へ進むにあたって言っておくコトがある。所謂、忠告という奴じゃよ」


「な、なんだよ。その言っておきたいコトって……」


「取り憑かれないように気をつけよう――と、わしから忠告しておくかのう」


「む、むう……」


 うへぇ、やっぱり、そういう展開が待ち受けているのか……。


 し、しかし、しかし……取り憑かれないように気をつけろって言われてもなァ、どうすればいいのか僕にはさっぱりだァァァ~~~!


「な、な、取り憑かれないためには、僕はどうしたら……」


「うむ、では、見本を見せてやろう。わしの後について来るのじゃ」


「あ、ああ……」


 荒魂こと悪霊、怨霊といった性質の悪い亡霊に取り憑かれないための方法――とまあ、その見本を見せてやるとウサエルが言い出す……って、おい! 早速、怒りに満ちた区画へ進むのかよ!


 あ、ああ、心の準備がまだなのになぁ……。


「アタシはついて行くニャー!」


「ま、待てよ、清水……って、もうあんなところまで……足が速いよ。あの皺くちゃ兎……」


 ウサエルは百年は生きている兎の獣人だ。


 しかも人間並みにデカい兎であり――と、とにかく、足が速いぞ!


 気づいた時には、僕がいる喜びと怒りの狭間にある木のところから数えると、間違いなく百歩は先に進んでいるじゃないか!


「ま、ここら辺で良いじゃろう」


「む、立ち止まったけど、ここで何を……」


「先ほども言ったじゃろう。見本を見せると――」


「あ、ああ、見本かァ!」


「うむ、丁度良いくらいに集まってきているしのう」


「え、ええ、荒魂が!?」


「うむ、これが見本だ……キエエエ、キキキエエエエーッツ!」


「うわ、耳が痛い!」


「き、奇声を張りあげた! 突然、何を……み、見本を見せるんじゃなかったのかよ!」


 タダでさえ人間並みの巨大な図体を誇るウサエルの身体が、ほんの数秒だけど、二倍くらいに膨張した気がする――と、その刹那、雷鳴の如き奇声を張りあげるのだった。


 ちょ、奇声を張りあげるコトが荒魂が取り憑くという最悪の事態から身を守る方法なのかよ!


『グ、グワーッ!』


「お、おお、悲鳴!?」


「うむ、そこそこ効果があったようじゃのう。よし、しばらくは安全じゃ」


「き、奇声で追い払ったってコトでいいのニャ?」


「うむ、そうなるのう。ちなみに、わしは奇声を張りあげたつもりはない――祓いの言葉を言い放ったのじゃ」


「へ、へえ、奇声じゃなくて祓いの言葉ねぇ……」


 え、えええ、金切り声のような奇声じゃなくて祓いの言葉だったのか!?


 むう、そうは聞こえなかったんだけど、僕達の周囲に集まって来ていた荒魂を追い払うコトができたワケだし――。

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