外伝EP15 兎天原にやって来た修学旅行生 その4
魔女モルガン・ルフィエルは、厄災をもたらすモノとして、兎天原に伝わる恐怖話に必ずと言っていいほど登場するんだとか――。
とはいえ、そんな魔女モルガン・ルフィエルの名を語る偽物も多いらしい。
エフェポスの村の長老ウサエルが五十年ほど前に出遭ったモノも、そのひとりなのでは!?
そう僕は推測している。
で、ソイツが五十年前に引きこもった場所であるシャムシェラの森へと僕らは往くのだった。
「わ、人面樹!」
「気持ちが悪いニャー!」
「ここがシャムシェラの森じゃよ。そんなこんなで幹に人間の顔のように見える模様が見受けられる樹木が密生する森というワケじゃ」
「う、うん、そんなんだ……」
「件の魔女モルガン・ルフィエルは、この森の奥にある古代遺跡に身を潜めているっぽいぜ」
「へえ、古代遺跡があるのかぁ」
シャムシェラの森……なんという不気味な森だ!
辺り一面、幹に人間の顔のような模様がある樹木が密生している禍々しいが百点満点の森だ!
うーむ、しかし、人間の顔のような模様だけど、どれも嬉しそうな顔に見えるんだが――。
で、そんなシャムシェラの森の奥に遺跡が存在しているようだ……実に興味深いぞ。
だが、そこに件の魔女モルガン・ルフィエルが身を潜めているようだ。
「ん、長老が一緒だなんて珍しいなぁ」
「なんじゃ、わしが一緒なのが嫌なのか、ハニエル?」
「い、いや、そんなコトは……」
「それはともかく、わしらはシャムシェラの森の喜びの側面が反映された場所へ来たようじゃ」
「喜びの側面?」
「この森は喜怒哀楽の四つの感情が反映されているかの如く側面を持つ森ッス!」
「あ、ああ、ヤス! それは俺が言おうとしたのに……」
「兄貴は何もかもが遅いんスよ」
「な、なんだとーッ!」
「まあ、口論はそこまでじゃ。さて、喜びの側面が反映しているうちに森の奥へ往くぞ。怒りや哀しみの側面が反映している時間帯だと、ち~とばっかしヤバいコトが起きるからのう」
へえ、兄貴の真名はハニエルって言うのね。
それさておき、シャムシェラの森は喜怒哀楽という人間が持つ四つの感情が、時間によって(?)反映される奇妙な森のようだ。
ん~……喜怒哀楽の喜と楽の側面が反映されている時間帯だと、何か良いコトが起きそうだなぁ。
でも、その反面、怒と哀の側面が反映されている時間だと、ウサエルが言う通り、ヤバいコトが起きそうな予感……ムムム、御御籤で大凶を引いた気分と同じ気持ちかもしれないなぁ、今の僕は――。
「お、おお、足を踏み入れて早々、喜ばしいコトが起きたぞ」
「わお、黄金茸発見ッス!」
「き、金色に輝くキノコ…だと…!?」
「当然、高く売れるよニェ?」
「おう、アレは一個につき百万……」
「百万MGと同じ価値があるッス!」
「ヤ、ヤス、お前ッ! それは俺が……」
「ヒューッ! なんだかんだと、ここにいれば大金持ちになれるなぁ~☆」
今は喜怒哀楽の喜の側面が反映されている時間だ。
そんなワケだから良いコトが起きる――ってコトでいいのか?
シャムシェラの森の中に足を踏み入れた途端、百万MGとやらと同価値がある黄金に輝きキノコ――その名の通りの黄金茸を発見したゾ!
「MGっていうのはマーテルゴールドの略ッス」
「兎天原全域で使える通貨のコトさ。ちなみに発行元は、兎天原の支配国家マーテル王国王立第一銀行が発行しているんだ……ヨッシャー! ヤスより先に説明できたぞ☆」
「へえ、なんだかんだと、兎天原にも支配国家があるようだな」
「そうそう、嫌味な人間が最高権力者っつう不満を除けばイイ~国なんだけどな」
「うむ、その話は暇な時にでも――今は急いで、あの人面樹を目指すのじゃ!」
マーテル王国かぁ、兎天原の支配国家であり、最高権力者――要するに王様が人間のようだ。
さて、ウサエルが、この先にあるそびえ立つ人面樹を指差す――むう、とにかく往ってみるとしよう。




