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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP14 兎天原の旧支配者 その27

 な、何が起きたんだ!?


 自身の身体に不死の呪いをかけ〝生けるミイラ〟――即ち不死者となった筈である古代の悪魔こと旧支配者を従えるモノを自称するカミバーヤ王の身体が、風雨、そして打ち寄せる波によって破壊される砂の城の如く崩れ落ちるのだった。


 不死者化したとはいえ、ミイラ化した干からびた肉体から膨大な魔力を放出すると、肉体が崩れ落ちる――と、そんなデメリットがあるというワケか?


「ふ、ふう、なんとか無事に、ここから出られるかも……」


「う、うん、カミバーヤ王の干からびた身体が崩れ落ちてしまったし……」


「死んだわ、奴は死んだわ!」


「元から死んでいるぞ。奴は不死者――死という概念を受け入れない地上を彷徨う亡者だからな」


 よし、カミバーヤ王は再起不能だ。


 しかし、本当に再起不能になったんだろうか? 悪い予感がするんだよなぁ……。


 そんなワケだし、さっさと天空廃墟から脱出すべきだろう。


 俺の背中には翼がある――空を飛んで地上へと帰還だ!


『貴様ら、どこへ……どこへ行くのだッ!』


「ゲ、ゲェーッ! この声は……」


「カミバーヤ王の声よ! あ、でも、崩れ落ちた奴の身体が再生したワケではないわね」


「で、でも、どこから声が……」


「むう、天井を見ろ!」


 わ、悪い予感が的中か!?


 不死者化したとはいえ、身体が崩れ落ちちゃ再起不能だろう――と、思ったいたカミバーヤ王の声が雷鳴の如く響きわたる。


「な、なんだ、あの紫色に光る球体は!?」


「むう、アレはカミバーヤ王の魂だ。呪われし干からびた肉体を捨て魂だけの存在となったのだ」


「ま、不死者は何も肉体を持っているとは限らないしね」


「つまり幽霊みたいな?」


「ま、そんなところね。故に空を飛んで移動できない? んで、ここから――雲の上から落っこちても致命傷を受けるコトもないわね。さっさと干からびた肉体を捨てれば良かったのではないかしら?」


『グ、グヌヌッ……初めから肉体を捨てていれば良かった気がしてきたぞ、余は……』


「今になって思いついたのかぁ? アンタってホントに肝心なコトを思いつかないド阿呆なんだね……」


『そ、それは認めるが腑に落ちない気分を貴様らで晴らしてくれるッ!』


 ちょ、コイツッ! 気薄な魂だけの存在になってまでまだ俺達を……だ、だが、今の姿こそ油断大敵な気がするんだ!


『デュフフフ……覚悟しろ、下郎!』


「う、うわあ、気持ちの悪い笑い声を張りあげながら飛んできた!」


「ん、愛梨を狙っているわね、アイツ!」


『その身体、貰い受ける! 余の新たなる身体となれィィィ~~~!』


 今のカミバーヤ王の姿をありていに例えるなら人魂だ――紫色に輝く炎をまとった禍々しい空飛ぶ不死者だ。


 さて、そんなカミバーヤ王の狙いは愛梨だ――むう、肉体を乗っ取る気なのか!?


「ちょっとアンタッ! 愛梨に憑依するのはいいけど、弱体化は必須よ!」


『なん…だと…!?』


「ふえええ、アフロディーテさん……酷いィ!」


「いや、マジだから」


『む、むうッ……ならば考え直すか……』


「ちょ、マジで考え直すのかよ……って、動きが止まったぞ!」


「サキュラ、今だ! 誘惑光弾で撃ち落とすんだ!」


「お、おお……やってみる!」


 愛梨に憑依すると弱体化する!?


 そうアフロディーテが叫ぶ……ちょ、酷くないか?


 仮にも愛梨は相棒なワケだし――と、それはともかく、人魂の如き禍々しい紫色の炎となって愛梨の身体を乗っ取ろうと目論むカミバーヤ王の動きが止まったぞ!?


 好機ッ! デュシスの言う通り、誘惑光弾で撃ち落としてやる!


『グ、グオオオオーッ!』


「よしッ……命中だァ! で、でも……」


『おおおッ……おのォォォれェェェ~~! 余は……そ、その程度の魔力の塊で斃そうなどとは愚かなりッ!』


「う、うわ、コイツ……全然、効いてない……って、おい、なんで追いかけてくるんだァァァ~~~!」


『あの小娘の身体を狙うのは止めだッ……夢魔の娘よ、お前の身体を寄越せェ!』


「ちょ、ターゲットを俺に変更かよ!」


 む、むう、誘惑光弾は間違いなく人魂――カミバーヤ王に直撃したのに、まったくダメージを受けてないぞ!


 そ、それはともかく、俺の身体を奪う…だと…!? タ、ターゲットを愛梨から俺に変更したのかよーッ!


「お、おい、俺の身体なんて奪っても意味がないぞゥ!」


『いいのだ、細かいコトは――とにかく、寄越せェ!」


「うえええ、冗談じゃないぞ……ウリャーッ!」


『効かぬ、効かぬわッ! ハハハ、叫び、泣けッ……そして諦めるのだ! 余のこの人魂に酷似した燃え盛る身体は氷の魔術以外を効かぬ!」


「あ、そう……氷の魔術は効果はあるのね☆」


『う、うお、しまったァ……つ、ついつい口が滑って……ギャアアアーッ!』


 おいおい、自分から弱点を口にしてしまうとか、コイツ……かなりの阿呆かもしれないぞ。


 とにかく、俺は己の魔力を介し、周囲の水蒸気を急速冷凍してつくった野球ボールほどの大きさの氷の弾丸をカミバーヤ王、目掛けて投げつけるのだった。


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