外伝EP14 兎天原の旧支配者 その22
「う、うわあ、巨大化しちゃいないかァ?」
「う、うむ、厄介なコトになったな。アレでは対処にしようがない……」
「ちょ、一体、どうすれば……」
うへぇ、なんてこった!
デュシスと一緒に瞬間移動した先であるサコンとかいうエフェポスの村に住む数少ない人間の邸宅の外に出た途端、俺はトンでもないモノを見てしまう。
そ、それは――。
「く、首なしの大巨人だ!」
「あれはズェランゾラの擬態煙が暴走は、まだ続いているんだろう。だが、姿だけは落ち着いたようだ」
「姿だけは落ち着いたかぁ……ま、ワケのわからん姿よりはマシだな。おっと、そんなコトを言っている場合じゃない!」
「うむ、とりあえず、メリッサ達がいたところへ戻るとしよう」
う、うわあ、首のない煙の大巨人だ。
デュラハンとかいう首なしの騎士、もしくは妖精がいた気がするけど、アレが二十メートルを超える超巨大な姿で現れたようなモノだ。
むう、とにかく、アレは暴走は一旦、落ち着いたっぽいズェランゾラの真の姿を覆い尽す擬態煙のようだが、あそこまで巨大化、そして膨張するだなんて……。
「ん、もしかすると、なんとかできるかもしれん。この村には何人かいるんだ」
「ちょ、対処できるかもしれないって……って、何が何人いるんだよ、デュシス?」
「それは魔族――お前の同胞だ、サキュラ」
「い、いるのかよ、俺と同じ魔族が――」
な、何ィ、俺と同じ魔族がなんとかできる……勝利の鍵的な存在だと!?
うーん、しかし、そう簡単に見つかるのかぁ? エフェポスの村に何人かはいるようだけど――。
「ん、丁度良いところに――」
「も、もしかして、あのアヒルと一緒にいる地味な眼鏡の女のコか?」
「うむ、だが、お前は他人のコトを地味――と、言えるのか?」
「うっせぇ! そんなツッコミはどうでもいいじゃん。とりあえず、声をかけてみっか……」
うは、即、同胞の魔族を発見! ん、でも、俺の頭にも生えている魔族の特徴のひとつである羊、もしくは山羊のような渦巻き状の角が生えているなどなど、魔族の特徴が見受けられないような……。
ちなみに、ソイツの容姿は小柄で地味な眼鏡の女のコだ……え、お前も地味だろうって?
デュシスにも、そこら辺のコトをツッコミを入れられけど、今は地味な眼鏡の女のコという容姿の同胞に強力を要請してみるか――。
「そ、そこの君達!」
「わー! 巨大な首なし巨人だ!」
「アフロディーテさん、そんなコトを言っている場合じゃないです!」
「ん~……よ~く見るとモウモウと立ち込めた煙が、たまたま巨大な首なしの人間に見えるだけかも?」
「あ、今、そっぽを向きましたね!」
「聞いてないのかぁ……な、なあ、ちょっといいかな……かな?」
「私の話を聞いてよね!」
「んんん、なんか言った?」
「おい、そこの漫才コンビ! 相槌を打ってないで俺の話を聞けェェェ~~~!」
「「わ、いきなり大声を張りあげるとか、一体、なんなのよ!」」
「う、うう、そこら辺だけ声を合わせるのかよ、お前ら!」
こ、このボケとツッコミを繰り返す漫才コンビめ! 話しかけたんだ、さっさと反応しやがれ!
ま、まあ、とにかく、再度、協力を要請してみるか――。
「なあ、眼鏡ちゃん……俺と同じ魔族なんだっけ?」
「あ、はい、一応、魔族ですが……って、私の名前は愛梨です。眼鏡ちゃんと呼ばないでください」
「お、おう、愛梨と呼ばせてもらうよ。よし、それじゃ、あの煙の首なし大巨人を吹っ飛ばす手伝いをしてほしいんだ」
「え、アレを吹っ飛ばす手伝いを? まあ、いいですけど、どうやって……」
「そうだな。お前達、ふたりの魔力を合わせてアレを跡形もなく吹っ飛ばせるほどの強力な風系魔術を引き起こすのが一番手っ取り早い方法だろう」
「ええと、地味なお姉さんと私の魔力を合わせる……所謂、合体魔術みたいな感じですか、喋る栗鼠さん? うーん、でも、私の魔術の腕前ですが素人に毛の生えた程度です。そんな私にもアレを吹っ飛ばせる魔術が使えるのかどうかわかりませんよ?」
「私も協力するわ。で、愛梨、魔術に関しては私と合体してアイロディーテに変身すればなんとかなるわ。それにそうとアンタ達、魔族の発する言葉は超自然現象を故意に引き起こす〝力ある言葉〟に変換させるコトができるらしいわね。上手くいけば、合体しなくてもイケちゃうかも――。」
「あ、はい、それなら……そ、それじゃやってみましょう。あの煙の大巨人を野放しにしちゃいけない気がしますしね」
「話が早いな。それじゃよろしく頼むぜ!」
地味な眼鏡の女のコの名前は愛梨というらしい……う、地味なお姉さん……だと!? 否定できんなぁ……。
さ、そんな愛梨とアフロディーテと名乗るアヒルの協力を得られたぞ。
これで暴走し、煙の大蛇、名状しがたき姿、そして煙の大巨人と化したズェランゾラをなんとかできるかもしれないチャンスが到来したかもしれないな……よし、やってやるぜ!




