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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP14 兎天原の旧支配者 その21

 しかし、意外だなァ……いや、矛盾しちゃいないか? ズェランゾラの弱点がさぁ。


 邪神形態こと煙の大蛇と化しながらも、実は煙が弱点という。


 だが、なんだかんだと試してみなくちゃわからん。


 そんなワケで俺は奴、目掛けてエヌメネスから手渡されたモウモウと真っ白な煙が吹き出す煙玉を投げつけてみるのだった。


「ん、なんです、それは……ギャ、ギャアアアアーッ!」


「お、おおおッ……効果ありィィってヤツか!?」


「こ、このッ……この煙はッ……ナグァイア草の! エヌメネス氏、何故、アレを……アレは絶滅した筈の植物ですよォ! ガ、ガアア、堪らん……グ、グアアアーッ!」


「フフフ、手に入れるのに苦労したんだ。きっと、あの御方とやらもびっくりするだろうサ!」


「ちょ、なんだ、これ……鼻の中がピリピリする!」


 ナグァイア草……絶滅植物の香りが煙の中に!?


 その前に、そんなモノをどこから……。


 ん、そういえば、嗅いだコトがない妙な……甘い匂いが……う、鼻の中がビリビリしてきたぞ!


「ああ、早いとこズェランゾラのもとから離れた方がいい。巻き添えを喰らって鼻が腐れ落ちるぞ」


「ほう、ナグァイア草か。確かにアレは危険な植物だ。長時間、香りを嗅いでいると、そんな嗅いだモノの身体を内側から溶かす……悪魔の植物だからな」


「な、なんだってー!」


「ちなみにナグァイア草は、我々、古蛇がもっとも忌み嫌う植物なのだ。ああ、この俺を除いてだが」


「お前を除いてかよ!」


「ああ、アレは……ナグァイア草の香りは最高だッ! あの甘美な香りは……脳を刺激するんだ……爆発する彼の如くッッ!」


「は、はあ、そうなのか……」


「さてさて、ナグァイア草の煙の効果が出て来たみたいだ」


「え……お、おわあああーッ! きょ、狂暴化しちゃいないかァ!?」


「ですねー……って、また首ちょんぱにされちゃいました☆」


「お、おいいィ!」


 流石はゾンビ! 例え斬首されても平気なワケで――。


 とまえ、そんなメリッサのコトはともかく、ズェランゾラが狂暴化したかも――。


 邪神形態こと煙の大蛇という形状が、何がモデルになっているのか?


 それがさわっぱりわからなモノ――名状しがたきモノへと見る見るうちに変化していく!


「アガガガッ……グ、グギギギーッ! ななな、なんてコトをしてくれたのですッ……ア、アナタ達のせいで、私の力が暴走し始めましたッ……どうなっても知りませんよ、ガアアアッ!」


「暴走…だと…!?」


「あちゃー……失敗かな?」


「失敗だって! あのナグァイア草の臭いが混じった煙は弱点じゃなかったのかよ!」


「ん、弱点で間違いはない。しかし、そんな弱点が奴を暴走させてしまったらしいね、うんうん」


「ちょ、何を悠長に……う、うわッ!」


「あああ、サキュラさんが捕まってしまったッ……煙の触手にィ!」


 ぼ、暴走だと!? だから名状しがたき姿になってしまったのか!?


 そ、それはともかく、名状しがたき姿に変異したズェランゾラの本体を覆う煙の一部が触手のようなモノと化し、俺の身体を包み込むッ……ヤ、ヤバイ、捕まってしまったか!


「ギ、ギギギッ……勝手に私の真の姿を覆う擬態が動き出したんだ、ウ、ウグギギッ!」


「ちょ、なんだよ、それ! グ、グワーッ……お、おい、本当に煙なのかよ……く、苦しいィィ!」


 な、なんだって、真の姿を覆い隠す煙が勝手に動き出したって!?


 ふざけんなッ……そんな言いワケが通用するかッ!


 と、とにかく、苦しい……本当に実体のない煙の触手なのかよ!


 ま、まるで実体があるかのようにグイグイと身体が絞めつけられる……こ、このままだと俺は圧死だ、間違いなく!


「このままではいかんな。よし、私に任せろ!」


「デュシス、何がイイ手立てがあるのか……グ、グウウ、これ以上はヤバいぞ!」


「うむ、確かに、これ以上は……よし、手助けをしよう!」


「う、うう、眩しいッ!」


 俺と一緒に実体を持つかの如く煙――ズェランゾラの擬態煙の触手に包み込まれ拘束された状態であるデュシスの小さな身体が光る! と、その刹那――。


「わ、サキュラさんの身体が消えていく!?」


「一緒にいたデュシスって栗鼠もだ!」


 え、俺とデュシスが消えた!?


 ぐ、ぐわ、ドンッ――と、そんな声が聞こえた次の瞬間、何かに頭をぶつけたぞ、イタタタァ……。


「き、君ィ、どこから私の家の中に!」


「ど、泥棒ッ!」


「え、えええ、泥棒……って、ここはどこだァ!?」


「上手い具合に瞬間移動ができたようだ。ああ、ここはエフェポスの村に住む数少ない人間のひとりサコン氏夫婦の邸宅だろう、多分」


「そ、その前に瞬間移動だってェ!?」


 ん、目の前に剣を持ったオッサンとその妻と思われる小太りのおばさんの姿が――ん、エフェポスの村に住む数少ない人間のひとりであるサコン氏の邸宅!?


 ちょ、なんでそんな場所に瞬間移動なんて……しゅ、瞬間移動!?


 と、とにかく、デュシスが使う瞬間移動(?)という能力のおかげでズェランゾラの擬態煙の中から脱出できたってコトだな。


「ああ、瞬間移動は週に一回しか使えないくらい魔力を消費するワケだ」


「ちょ、充電時間長すぎッ! ま、まあ、とにかく、戻ってアイツをどうにかする方法を考えなくちゃな……っと、ザコンさん、悪かったな。すぐに出て行くよ」


 む、むう、なんだかんだと、サコンとかいうオッサンの邸宅にいつまでもいるワケにはいかないよね。


 さてと、なんとかズェランゾラの暴走を止める方法を考えながら、ここから出なくちゃいけないな。

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