EP9 俺、巨人族の少女と出逢う。その5
「アレは本来は何十発も標的に撃ち込むことを目的につくられた代物なのじゃ。」
「え、何十発も!? 回転式機関銃みたいな兵器を使って?」
「なんじゃ、それは? ま、ともかく、砂漠の巨人の大きさは、あの娘の比ではなかったからのう。奴らを小さくし、形勢逆転を狙うためには、アレを大量に撃ち込む必要があってなぁ。」
むう、物体縮小魔石が何十個も必要だった砂漠の巨人とやらのデカさは、二十メートルは確実にあったエイラを遥かに越えるスケールだったんだろうなぁ――と、この俺にも容易に思いつくぜ。
「あ、そうだ、私達トロル族は巨人に分類されるモノの中じゃ小さい方だった気がします。」
「え、そうなの!?」
「はい、私などトロル族の中ではチビな方ですよ。」
「な、なんですとー!」
身長二十メートルもあっても種族間では、エイラはチビな方だって!?
むう、それにトロル族は巨人族と種別される連中の中では、小さい方……小柄だと!?
「ところで小さなくなってみてどうだ、気分は?」
「そりゃもうハイテンションってヤツですよ!」
「そ、そうなのか、そりゃ良かったな……。」
「むう、そんなことより、皆さん、いい加減、気づいてくださいよォォォ~~~! 身体は小さくなったけど、服は一緒に小さくならなかったってことにィ!」
「あ、ゴメン、忘れてた!」
「うわあああん! いつまでも素っ裸にいるなんて耐えられないわァァァ~~~!」
う、マジで忘れてた……。
物体縮小魔石は、流石に服までは小さくすることができなかったみたいだ。
とまあ、そんなワケでエイラは素っ裸の状態だ。
「ほら、俺の水着を貸してやろう。」
「わあ、ありがとう!」
仕方がない俺が着ている水着を貸してやるか……あ、ああ、スペアがあるから大丈夫! 一瞬で着替える特技を覚えたしな!
ちなみに、エイラに渡した方の水着は赤いビキニで、スペアは白いセパレートタイプの水着だ。
「わ、イタタタァ! 許してぇー!」
むう、エイラの身体が小さくなったので、これは復讐をするチャンスとばかりに、栗鼠、鼠、雀、鳩などの小動物型の獣人&鳥人が、彼女に対し、襲いかかる。
アハハハ、そういや、コイツらの住処となっている木を倒しちまったんだったな、エイラは――。
「あ、そうそう、ここへ来る途中、怪しい黒ずくめの人間から一通の手紙を預りました! キョウさんってアナタですよね? で、ソイツはアナタに手紙を渡せって……うひゃ、齧らないで、嘴で突っつかないでーっ!」
エイラは小さな復讐者達から逃げ回りながら、物体縮小魔石の効果がなく巨大なままの水色のワンピースのポケットの中に飛び込むと、一通の手紙を取り出し、俺に手渡す。
「うわ、汚ぇ字だな!」
「ああ、ガキンチョが書いたみたいな感じだな。」
「ええと、何々……『死霊使いという同じ穴のムジナとして決闘を挑みたいと思っています!』って書いてあるね。」
「しかし、誰だぁ、まったく、俺としては断りたいんだけど……。」
エイラから手渡された一通の手紙には、俺に対し、決闘を挑みたいというモノだ。
つーか、同じ穴のムジナってなんだよ!
俺は死霊使いになった覚えはないっつうの!




