外伝EP14 兎天原の旧支配者 その14
古代の兎天原を支配していたモノ達――旧支配者は、例外なくティマグァやタンタロズのようなグロテスクな姿をしているんだなぁと思っていたけど、古蛇族のエヌメネスのようなやや控え目なモノもいる模様である。
とはいえ、頭と両手が蛇であるが――。
さて。
「クォラァァァ! エヌメネス氏を出したやがれェェェ~~~!」
「だが、断る!」
「即、断られた! だが、ここで引くワケにはいかん……ウリャーッ!!」
「コイツ、いきなり殴りかかってきた!」
再びエフェポスの村にやって来た襲撃者共――オーク共の一体が、拳を振りあげて突撃してくる。
俺はやんわりと断ったつもりなんだけどなぁ……。
「あ、危ないッ……いきなり殴りかかってくるなんて物騒な奴め!」
「お前が断ったからだ……ギャ、ギャブッ!」
「そりゃ断るさ。匿ってくれって頼まれたし……」
俺って義理堅いだろう?
味方なのか、それとも敵なのか? それすらわからん奴だけど、匿ってくれって言われちゃ放っておけない性質なワケで――。
ま、そんなワケで俺は反撃とばかりに、拳を振りあげて襲いかかってきたオーク共の一体を誘惑光弾で弾き飛ばす。
「誘惑光弾を精神ダメージから物理ダメージに変換したな、サキュラ」
「ああ、だが、ダメージはイマイチだなぁ」
基本、誘惑光弾は対象の精神にダメージを与え骨抜きにして動けなくするところだが、今回は物理ダメージに変換して放出してみたワケだ。
だが、威力の方はイマイチである――ほら、何事もなかったかのようにオークは立ちあがったし。
「ガハハッ! なんだなぁ、そのヘナチョコな魔術は?」
「チッ……効かんかったか、それじゃもう一発!」
「フン、そんなヘナチョコ魔術、軽く粉砕してやる……オラァ!」
「お止めなさい。まったく、アナタ達はすぐに暴力で解決しようとする悪い癖の持ち主ばかりで困ります。まさに野蛮とはお前らの如きモノのコトを言うのでしょうね」
「う、その声はズェランゾラの兄貴!」
「ズェランゾラ!? 確かエヌメネスさんを探しているという……」
「エヌメネスの名前を口にしましたね。悪いコトは言いません。彼をここに連れてくるのです」
ヘナチョコな魔術で悪かったな、豚野郎!
精神ダメージを物理ダメージに変換するのは初めてなんだ、仕方がないだろう!
さて、あのエヌメネスを探している同胞の古蛇族のズェランゾラが、子分であるオーク共の押し退けながら、俺達の目の前にやって来る。
む、丁寧な言葉で語りかけてきたが、裏で何を考えているかわからん怪しさ抜群な雰囲気を醸し出しているんだよなぁ、この手の類は――。
「断ったらどうなる?」
「そうですね……カモン、ダブジュラ!」
「う、うわあ、巨大な蚯蚓が地面からッ!」
「落ち着け、メリッサ……つーか、断ったらソイツが俺達に襲いかかるって言うんだろう?」
「ご名答です。さあ、どうします?」
う、鋭い鉤状の牙が生えた口からダラダラと涎を垂らす巨大な蚯蚓が、ドーンッと地面から飛び出してくる――ズェランゾラの野郎、子分のオーク共を野蛮呼ばわりしているクセに自分も同じような姑息な行動を……ち、どうする?
「ここは私達に任せろーッ!」
「ウオリャーッ! 怪物狩りだーッ!」
「「ウギャーッ!」」
「ああ、クーとハスが食べられた!」
ヌルヌルした異形の小人――蛸人間ことクーと烏賊人間ことハスが、俺の足許に……い、いたのかよ、お前ら。
ま、まあとにかく、クーとハスがズェランゾラのペット(?)の巨大蚯蚓ダブジュラに飛びかかるのだが、呆気なく返り討ちに……う、うお、ダブジュラに丸呑みされてしまったぞ。
「クックックック、アナタ方も不気味なお仲間のように食べられてしまいますよ。返答次第では――」
「う、うぐぐ……」
「さあ、早く返事をするのです。さあ、早く……ん、ダブジュラ、どうしたのだ?」
「ズェランゾラの旦那ぁ、急に腹が痛くなったッス!」
「ちょ、喋れるのか、ソイツ!」
「あ、はい、そりゃもちろん……ウゴエエエッ!」
「クーとハスを吐き出したわ!」
「ま、まあ、アイツら丸呑みしたワケだし、仕方がないさ……」
巨大蚯蚓ダブジュラは喋るコトができるのか……い、意外だなぁ!
さて、そんなダブジュラだが、先ほど丸呑みした筈のクーとハスを吐き出すのだった。
まあ、アイツらを丸呑みすりゃ否応なし、腹痛を起こすさ。
キレイな金色の眼をしてはいるが、全体的には如何にも毒々しい姿だしなぁ。




