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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP14 兎天原の旧支配者 その10

 兎天原の東方は、砂糖の原材料であるサトウキビの一大産地なんだとか――。


 ここで収穫されたサトウキビの搾り汁は、人間達が数多く住む北方、西方に運ばれ砂糖へと加工されているそうだ。


 ああ、そうそう、黒砂糖、白砂糖、赤砂糖の他、青砂糖、緑砂糖、紫砂糖なんて種類もあるそうだ。


「う、うお、砂糖が入った袋がたくさん!」


「ここには現在入院中の館長が貯め込んだ砂糖が大量にあってね」


「ほええ、休憩室内に、こんな場所があるとは!」


「ああ、そんな現在入院中の館長は、医者の話だと糖分の過剰摂取により、習慣生活病を引き起こしたらしい」


「ハハハ、あの人は超甘党だからなぁ☆ 砂糖がないと生きていけねぇって豪語していたしな」


「ちょ、糖尿病だろ、それーッ!」


「まあ、とにかく、大量の砂糖があるワケだ。アレをつくれるのに十分な量だ、サキュラ」


「なあ、アレってなんだよ、アレってーッ!」


 超がつくほどの甘党だっていう迷宮図書館の最高責任者である館長は、現在、糖分の過剰摂取が引き起こす習慣生活病を引き起こして入院中らしい——っていうのは糖尿病だろうね、間違いなく。


 異世界である兎天原でも、あの病気を発病するモノがいるんだなぁ、当然……お、俺も気をつけないと何気に甘党だしネ!


 それはともかく、デュシスが言うアレってなんだよ、アレって――と、そんなアレをつくるためには大量の砂糖が必要らしいけど、一体、何をつくる気なんだァ?


「あ、入院中の館長の名前はエリザベート——女性です」


「は、はあ……」


「私の名前は、ちなみにアスカって言います」


「おい、無駄口はそこまでだ。奴が――ティマグァに肉体を乗っ取られたモンシアという名の職員が、砂糖の保管室へやって来るぞ!」


「あ、ああ——で、俺は何をすればいいんだ?」


 迷宮図書館に勤務する職員は、大半が人間の男性や獣人らしい。


 が、当然、人間の女性の姿もチラホラと——館長のエリザベートやアスカが、その一部だろうね。


 おっと、ティマグァにその身を乗っ取られた職員ことモンシアが間近に迫ってきているようだ。


「うむ、それでは準備ができるまで、アレと戦っていてくれ」


「ちょ、何をつくるのかは知らんけど、それが完成するまでのアレを引きつけろってか……」


「心配には及ばん。何、すぐに出来上がるさ☆」


「む、むう……」


 エフェポスの村では森の小さな賢獣なんて呼ばれているらしい小さな栗鼠の獣人ことデュシスは、ひょいと今まで座っていた俺の右肩から地面に飛び降りると、現在入院中に迷宮図書館館長エリザベートが貯め込んだという大量の砂糖袋がある休憩室の保管庫へと向かうのだった。


 やれやれ、何をつくる気なんだァ——って、俺に完成する間、ティマグァに憑かれたモンシアを近づけさせない引きつけろ役をやれって……面倒だが仕方がないなぁ。


「サキュラさん、私も引きつけ役をやります……モ、モギャーッ!」


「ああ、メリッサ! いきなり左手を溶かされたぞ……うえ、骨が見えてる……」


「大丈夫です☆ 何度も言いますが、私はゾンビですので痛みはありません」


「そ、そうだったな、お前はゾンビだったな……」


 おいおい、一緒に引きつけ役をやりましょう——って言いながら、メリッサは早々にティマグァの吐き出す溶解液を左手に浴びてしまう。


 とはいえ、彼女は不死身のゾンビである。


 例え、皮膚が溶け落ちて骨が丸見えであっても痛みはない——って、修復すれば大丈夫だって? べ、便利だなァゾンビって。


「グゲゲゲ、お前ノ身体ノ一部モ骨ニシテヤル!」


「冗談じゃないッ……これでも喰らえ、誘惑光弾!」


「無駄ヨ、無駄ナコトヲスル……ギャ、ギャボッ! ナンダ、身体ノ動キガ鈍い……違ウ、マッタク動カンッ!」


「え、効果あり?」


「多分、モンシアさんという方の身体の中にいるからでしょうね」


「そ、そうなのかッ! よし、もう一発、誘惑光弾を喰らえーッ!」


 誘惑光弾が効果あり!?


 メリッサの言う通り、モンシアの身体の中にいる間はティマグァは誘惑光弾を防ぐ手立て——バリアを張るコトができないようだ!


 今なら奴にダメージを――そしてモンシアの身体の中から引きずり出すコトができるかもしれないぞ!


 オマケにデュシスが大量の砂糖からつくり出そうとしているモノも必要がないかもしれない――が、油断大敵である。


 ティマグァの真の姿は、まだ〝見ていない〟ワケで――。

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