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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP14 兎天原の旧支配者 その9

「奴は――ティマグァは死んだ。私はそう思いたい。で、ティマグァのようなモノを旧支配者と呼ぼうじゃないか!」


「旧支配者ねぇ。まあ、そうなるんだろうなぁ……」


 ティマグァやタンタロズ——アイツらのような異形のモノによって支配されていた時代の太古の兎天原のコトを想像するとゾッとするぜ。


 その前に、アイツらの異形の姿なんざァ序の口だろうね。


 多分……いや、間違いなくアイツら以上にグロテスクなナリをした怪物もいた筈だ。


 個人的には遭いたくない……絶対にね!


「教授、もうアレは来ませんよね?」


「それはわからん。故に、警戒を怠ってはならんぞ」


「あ、はい、ここにいない職員達にも通達しておきます」


 ティマグァは蜻蛉や蠅といった昆虫の翅、青白い突起物の生えた尻尾、そして空飛ぶ溶解液を吐き出す口を持つ西瓜——とまあ、そんな異形の抜け殻を残し姿を消す。


 奴は間違いなく〝いる〟――広大で迷宮のように入り組んだ迷宮図書館内のどこかに確実に潜んでいる筈だ。


「そういや、アレに弱点は汗だったな」


「汗というか塩分だ、ガルシア」


「ああ、そうだったな……ん、どうでもいいけど、お前、右目から黒い涙のようなモノが流れているぞ」


「はあ、お前、何を……」


「う、本当だ。なんだ、その黒い涙は……」


 そういえば、ガルシアという超汗かきな迷宮図書館の職員がドバドバと垂れ流す汗に含まれる塩分のおかげでティマグァは一時的とはいえ追い払うコトができたコトを俺は思い出す。


 さて、そんなガルシアの仲間である迷宮図書館の職員のひとりに奇妙な変化が見受けられる――右目から黒い涙を流しているじゃないか!

 

「ウ、ウゴゲゴッ……グルルガァー!」


「お、おい、何をするんだァ!」


 え、突然の仲間割れ……というか何が起きたんだァ!?


 右目から黒い涙を流す職員が、獣じみた絶叫を張りあげながら、ガルシアに飛びかかる。


「や、やめろッ……ぐ、ぐわ、熱い、お前の涎が垂れ落ちた部分が超熱いんですけど!」


「それは涎じゃない……恐らくは硫酸だ! デヤーッ!」


「ガ、ガゴギゴガガガッ!」


 硫酸の涎…だと…⁉


 さて、間一髪のところでジンフリードが蹴り飛ばさなかったら、今頃、ガルシアの顔面は酷い火傷を負った筈だろう。


 し、しかし、突然、何が……職員の身に何が起きたんだ⁉


 いきなり仲間であるガルシアに襲いかかった上、硫酸の涎を垂らすとか――ま、まさか⁉


「いかん、ソイツの〝中〟にアレが入り込んでいる!」


「デュシス、もしかして……」


「ああ、あの職員の身体の中にはティマグァがいる。しかし、どうやって……私にも、どうやって身体の中に入り込んだのか見当がつかん」


「ゲ、ゲゲ、ゲピッ……どうした……んだ? 何故、逃げる、ガルシア……ガガガピピュ……」


「いきなり襲いかかっておいて都合のいい物言いだな、モンシア! ——って、ゲロを吐きながら近寄るんじゃないッ……うわああ、床が溶けている!」


「ソイツは知らず知らずのうちに肉体を乗っ取られたんだ。だが、まだ精神までは完全に……」


「そ、そうなか……って、おい! 耳からニュルニュルとした何かがでてきたんですけど!」


「アガッガアッ……アピュララ……やめッ……俺の頭の中で暴れッ……るな……グギャギャギャ!」


 モンシアって名前なのか――と、それはともかく、そんなモンシアの身体の中には、アイツが――ティマグァがいつの間にか入り込んでいたようだ。


 なるほど、それで仲間割れとばかりにガルシアに襲いかかったワケね。


 だが、精神は完全に乗っ取られてはいないようだ――が、多分、もうティマグァに対し、抗うコトはできないだろう。


 両耳の穴の中からニュルニュルした触手っぽいモノが出てきたワケだし、両目がカタツムリの眼を連想させるモノへと変貌し、眼窩からボコンと飛び出す。


 モンシアの身体がティマグァに完全に乗っ取られた証ってところか⁉


「グヒャハハハーッ! 新シイ身体ハ心地ガイイゼェェェ~~~! サア、第二ラウンドトイコウカ!」


「ゲ、ゲェーッ! やっぱり、お前はティマグァなのかー?」


「グギャグギャ、今ラ何ヲ言ウノダ! サテ、新タナ肉体ノウォーミングアップダ!」


「うむ、ソイツは肉体を変えながら闇に生きるモノらしい」


「うへ、なんだよ、それ! うわ、危ないッ!」


 肉体を変えながら、兎天原の暗闇の中を太古の昔から生き続けてきたってのか⁉


 むう、それはともかく、姿を変えても溶解液を吐くコトだけは変わらないようだ……ったく、面倒くさい奴だな!


「モンシアの身体の中から、あの化け物を追い払う方法はないんですか、教授!」


「うむ、弱点の塩をぶっかければ……」


「よし、再びガルシアの出番だな!」


「無駄ナコトヨ! コノ人間ノ身体ノ中ニイレバ、塩ナンゾ怖クハナイッ!」


「な、何ィィ! く、塩じゃなくて砂糖なら大量にあるんだけどなぁ……」


「砂糖が大量にあるだと? うむ、では、役に立つかはわからんがアレをつくってみよう。そしてティマグァをモンシアとかいう職員の身体の中から引きずり出すぞ、サキュラ」


「あ、あれってなんだよ、おい!」


 モンシアの身体の中にいるうちは、弱点である塩も効果がない——と、そう言いたいのか、ティマグァの奴は⁉


 ん、役に立つかは知らないがモンシアの身体の中に潜むティマグァをそんなモンシアの身体の中から引きずり出すべく大量の砂糖を使ってアレをつくるぞってデュシスが言い出す――おいおい、その前にアレってなんだーッ!

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