EP9 俺、巨人族の少女と出逢う。その4
「はううー、怨嗟の視線を感じる!」
「そりゃそうだ。コイツらの家となっている木を倒しちゃったんだろう?」
シャッと栗鼠の獣人に一匹が、俺の右肩にあがってくる。
コイツもそうだけど、俺の足許にいる連中は、皆、例外なく凄く怒っている。
俺の右肩にいる栗鼠の獣人なんて、全身の毛を逆立てながら、地団駄を踏んでいるし……。
「うむ、早速、彼女の身体を縮小させよう。」
「え、でも、どうやって?」
「これを使うんだ……ペッ!」
「うへ、なんか湿った青い石だぁ、これ……ん、象形文字のようなモノが刻まれているな。」
ブックスの表紙に見受けられるダンディーなヒゲのおじさんの顔が、カッと閃光を放つと、ペッと口から象形文字のようなモノが刻まれた大体、十センチかそこらの青い石を吐き出す。
「あ、その青い石に刻まれているのは、古代の魔術王ピルヌスが考案した魔術文字のルディリア文字ですね。」
「お、それは父上がつくった護符石ではないか! 刻まれた文字から察すると、巨人を縮小させるモノのようだな。」
「え、父上!? ピルケさんの父親って、あの魔術王ピルヌスなんですか?」
「うむ、そうじゃ……って、父上は後世において魔術王と呼ばれているのか!? まあ、そうじゃろう。ちと調べてみたが、ジャンルに問わず現在、様々な分野で行使されている魔術は、そのすべてがわらわの父上が考案したモノが原典みたいだのう。」
「へ、へえ、そうなんだ。ピルケの父親はすげぇなぁ……。」
へえ、古の魔術王が父親ねぇ。
ああ、なるほど、何かしらの罪を犯した娘のピルケに対し、定期的に大量の水分を摂取しなくちゃ干乾びたミイラになってしまう〝呪い〟をかけたのは、きっとそんな古の魔術王ピルヌスかもしれないなぁ。
オマケにピルケが、数千年という年月を生き長らえることができたのも……むう、とにかく、凄いの一言だ!
「さ、キョウ、その青い石を――物体縮小魔石をエイラに手渡すんだ。フフフ、きっと面白い現象が起きるぞ。」
「お、おう! じゃあ、コイツを受け取ってくれ。落とさないようにな。」
「はーい……っと、小っちゃすぎて落としそうですよ!」
「さてさて、効果はすぐに現れる筈だ。」
「はわ、なんだろう、私の身体が光り始めました……うみゅーっ!」
しかしデカい手だな。
まあ、身長が二十メートルはある巨人だし、仕方がないか――と、物体縮小魔石の効果が、即、エイラの身体に現れ始めたぞ!
「わ、私の身体が小さくなっていませんか?」
「あ、ああ、否定はしないぜ。」
きょ、巨大なエイラの身体が光を放ちながら、シュルシュルと縮小し始める! まさか本当に小さなくなってしまうだなんて――。
「私は小人になったんでしょうかね?」
「うーん、それでもまだデカい方だな……。」
「人間の女の平均身長を越えてるな。二メートルくらいあるしね。」
「え、そうなんですか? 実感が湧きませんねぇ……。」
エイラの身体は、確かに小さくなったが、それでもかなりの長身だ。
なんだかんだと、身長二メートルはあるんじゃないかな?
「うむ、縮小化に成功したみたいじゃのう。流石は父上がつくった対巨人用兵器だ。」
「え、コイツは兵器なワケ?」
「ああ、その青い石は砂漠の巨人という悪しき巨人を弱体化させるために父上がつくったモノだからのう。」
「魔術王の巨人退治という伝説は真実だったのか、それじゃ……。」
物体縮小魔石は兵器だって!?
さて、そんな物体縮小魔石が実際に使われた話が、どうやら伝説として語り継がれているようだ。




