外伝EP13 サキュバスに転生したんですけど、何か問題でも? その23
「臭ェェェ~~~ッ!」
「う、うお、いきなり、何を言い出すんだ、クロウサヒコ!」
「おい、何も臭わないのか? トンでもない悪臭が漂っているじゃないかァ!」
「え、そうですか? 私は全然……」
「メリッサ、お前はゾンビ故、痛覚だけじゃなくて嗅覚まで麻痺しているようだな」
「わ、酷い! それはないですぅ!」
え、トンでもない悪臭が漂っている⁉
そうクロウサヒコが言うけど、特に何も……俺の嗅覚もゾンビであるメリッサと同じく麻痺してしまったのか……。
「臭いもそうだが、毒電波もギンギンと放出されているぞ。その証拠とばかりに、私の髭がギンギンと、そんな毒電波を受信し蠢いているだろう?」
今度は毒電波かよ!
シトリーの髭がギンギンと何かしらの電波でも受信しているかのように蠢いている……ちょっと気持ち悪いなぁ。
だけど、なんだかんだと、近くにタンタロズがいるコトを指し示しているのかもな。
「あ、なんかヘンテコリンな生き物がいる!」
「うぬぅ、俺をヘンテコリン呼ばわりするんじゃないィィ……って、見つかってしまったかァ!」
「見つけたぞ、タンタロズ! この私――シトリーの仲間をどこに……ん、オークの姿を模った石像が周辺に……もしや⁉」
わお、タンタロズ発見! 呆気なく奴の姿が目の前に――ん、奴の周囲にオークの姿を模った石像のようなモノが見受けられるぞ⁉
うーむ、まさかとは思うけど、コレって――。
「せ、石像が動きませんでしたぁ?」
「あ、ああ、多分というか間違いなくアレだろ、アレ——ゴーレ……」
「ゴーレムだろう。オマケに自作の——」
「お、俺が言おうと思ったんだけどなぁ……」
「な、何故だ! 何故、バレたのだァァァ~~~!」
ちょ、俺が言おうとした台詞だったのに、シトリーの奴に先を越されたぜ。
だが、なんだかんだと、わかりやすいと思うんだけどな。
動く石像といえばアレしかないだろう、アレ——人造生物の代表格みたいなモノであるゴーレムだろうってね。
「グハハハーッ! コイツの頭の中には、わしの特殊技術によって摘出されたオークの脳みそが埋め込まれているのだーッ! 所謂、意思を持つ石像——ゴーレムなのだ!」
「ふむ、それじゃ頭部を打ち砕けばいい……のか?」
「ぐ、ぐわあ、何をする! この無毛猫!」
「デハ、私モ!」
「あ、ああ、今度は骨々野郎まで! せっかく俺が丹精込めてつくったゴーレムをォォォ~~~!」
「だって、お前、ネタバレという感じで弱点を晒しちゃったワケだし、ああなって当然じゃないか?」
シトリーとヴァレリアヌスが放った衝撃波の奔流が、ゴーレムの頭をパーンと粉砕する――ま、なんだかんだと、お喋りなタンタロズが弱点をネタバレとばかりに言ってしまったワケだし、当然、攻撃する場合、誰であっても弱点である部位を狙う筈である。
「う、うわ、ぶっ壊れたゴーレムの頭の中に壊れた水槽のようなモノが……」
「ふええ、衝撃波を受けてグチャグチャの細切れになったオークの脳みそみたいなモノが、ズルッと地面に落ちるのを見てしまいました……」
「やはり嘘じゃなかったみたいだな」
うっわ……嫌なモノを見てしまったんですけど……。
ズルッと、シトリーとヴァレリアヌスが放った衝撃波によって破壊されたゴーレムの頭の中に見受けられる水槽から、そんなゴーレムの頭の中に埋め込まれたオーク脳のグチャグチャの肉片が零れ落ちる様を――。
「ヌ、ヌアアアーッ! わしの傑作がふたつもぶっ壊れてしまったァァァ~~~!」
「ハハハ、弱点をネタバレというカタチで言ってしまったお前が悪い」
「弱点ハ口ガ裂ケテモ言ッテハイケナイコトダトイウノニ……馬鹿デスネェ」
「馬鹿だと⁉ その言葉を撤回してもらおうかァァァ~~~!」
「う、うお、改造オークがたくさん出てきた!」
「あ、さっきのドテ腹に顔がある首なしオークもいる!」
「そ、そんなコトより、スライムのような粘液状の身体にされてしまったオークなんかもいる!」
「ちょ、首なしオークは、他にも……え、頭が股間に⁉ ワハハハッ……ふ、腹筋崩壊だ! わ、笑いが止まらん……ワハ、ヒヒヒ、ワハハハッ!」
オークの脳みそが入った水槽を埋め込まれたゴーレムは、製造者であるタンタロズにとっては傑作だったらしい。
そんなワケで傑作を壊れたタンタロズの怒りは爆発する――む、奴め! 怒りのせいで我を忘れて手駒である改造オークをすべて召喚したようだ。
む、しかし、先ほどの個体とは別の首なしオークは、頭が股間のところに見受けられるんだよなぁ……。
ふ、腹筋崩壊だッ……が、その一方で真っ先に戦闘不能にしてやりたい気分である!
「おう、何がおかしい! 素晴らしい姿だろう、ゴルァ!」
股間に頭がある奇妙なオークが近寄ってくる……お、おいおい、どう見たっておかしいだろう?
「ど、どう見たっておかしいだろう! わからんのか、お前!」
「フッ……わからんようだな。この美的センスが!」
「わ、わかるかーッ!」
「ウ、ウギャーッ!」
わかるか、わかるワケがないだろッ!
おっと、右足が勝手に――拒絶反応を起こしたかのように動き股間に頭あるオークのそんな〝股間の頭〟を俺は蹴り飛ばしてしまうのだった。
「う、うおお、わしの改造オークをよくもォォォ~~~!」
「こっちもなんとか……」
「ああ、首長オークまで……き、貴様ァ!」
「なあ、タダのオークの方が使えた……いや、強いんじゃないのか?」
「はい、私もそう思いました。何せ、この石ころをぶつけただけで倒せたのですから――」
タンタロズのよって改造手術を受けたオーク共だけど、改造前より弱体化しているのでは⁉
現にキリンの如き首の長い改造オークなんかは、メリッサが投げつけた石ころがドテ腹に命中しただけで、まるでボディーブローを食らってマットに沈み込むボクサーのように両膝から崩れ落ちたワケだし。
うーむ、とにかく、改造オークは改造前よりも弱いッ……筈である。




