EP9 俺、巨人族の少女と出逢う。その3
登場人物紹介
・エイラ――魔術師になろうとしている巨人族の少女。
きょ、巨人だ! 容姿は可愛いけど、コイツは間違いなく巨人だ!
うーむ、猫や兎といった小動物の目線から見た人間って、こんなにでかいのか!?
俺はそれを体感していることになるんだよなぁ……。
「ああ、驚かせてしまったようですね。悪いことをしたかな……。」
「い、いや、そんなことはないぞ。」
「う、うん、だから気にしなくていいですわよ。」
「はうー、同じ顔をした小人さん、それなら良かったです。ああ、私はトロル族のエイラと言います。」
「トロル族? 霧の巨人とも言われる男女の問わず毛むくじゃらな巨人?」
「はう、それは違います! 毛むくじゃらというのは、どこぞの誰かさんが別物を私達と見間違えたのが通説となったモノで、実際は私のような人間と大した変わらない姿をしているのです。」
「そ、そうなんだ……。」
巨人の少女は、ペコリと俺達に一礼をしながら、トロル族のエイラと名乗る。
トロルは俺が本来いるべき世界でも、そこそこ有名な巨人だった気がする。
某童話の主人公みたいな存在だしね。
しかし、毛むくじゃらじゃないのが意外である。
トロルとかいう巨人は、毛むくじゃらの巨人だった気がするし……。
で、エイラは身長は二十メートルはあるけど、普通の人間と変わらない姿だしなぁ。
「さてと、小人さん達の中に魔法使いがいるようですが、誰ですかね?」
と、エイラは俺達を頭上から見回す。
巨人なんだから仕方がないと思うけど、複雑な気分だなぁ。
「はいはいー、私ですよ! ここら辺に住んでいる魔女の中では、一、二を争う有名人かもしれません。」
「え、アナタですか! じゃあ、師匠って呼んでいいですか? 私……魔術師になりたいんです!」
魔術師になりたい!?
と、宣言するとエイラはプールがあるアジトの庭へと回り込んでくる。
「あ、ゴメンなさい! お家の一部を壊しちゃったみたいですね……テヘ☆」
む、むう、バキッとエイラの右腕の肘がぶつかったアジトの屋根の一部が破損する。
やれやれ、可愛い見た目とは裏腹に巨大なナリをしているのが困りモノだなぁ。
「うああ、俺のアジトがぁぁぁ~~~!」
と、兄貴が悲鳴をあげる。
なんだかんだと、元ラーティアナ教の教団施設を再利用しているアジトは、兄貴にとってはお気に入りの建物だ。
そりゃもう悲鳴をあげる当然だよな。
「さて、私にイイ考えがある。」
「イイ考え?」
「うむ! ところで巨人娘……いや、エイラ、君は小さな身体になりたくはないか?」
ん、イイ考えある!?
そう言うとブックスは、フワリと空中に舞いあがる。
まったく、コイツが本であることを忘れそうになるぜ。
「わ、本が空を飛んでいる! あ、わかった、アナタは人造魔法生物ですね……ああ、当然、小さくなりたいです!」
「むう、即答かよ。」
「素直でよろしい。」
「はうう、どうも私は皆さんだけでなく、他にも迷惑をかけたっぽいので……。」
「ん、俺達だけじゃなくて!?」
「お姉様、栗鼠や鼠、それに雀や鳩なんかの小型の獣人や鳥人が、いつの間にか集まっていますわ!」
わあ、いつの間にか、俺の足許ではワイワイガヤガヤと騒ぐ小動物の姿が――。
「きっと、アイツらの住処になってる木を倒したんじゃないか?」
「うん、そうみたいだ。みんな怒ってるぞ!」
「ありゃりゃ、ここへ来る時に倒してしまった木がたくさんあったけど、まさか……はうう、申しワケないです!」
むう、エイラはアジトへ来る途中、俺の足許にいる栗鼠や鼠、雀や鳩といった小動物系獣人、鳥人達の住まいとなっている木を倒してしまったようだ。




