外伝EP13 サキュバスに転生したんですけど、何か問題でも? その17
夢魔——サキュバスといえば、妖艶な女悪魔ってイメージが強い。
だが、俺の外見は地味で、そしてダサいらしい……。
ま、まあ、派手で淫靡な格好をすりゃ俺だって——が、抵抗感も強いんだよなぁ、ああいう格好には。
なんだかんだと、俺は男のつもりだしね。
さて、そんな地味でダサい俺でも対象がオークとはいえ、誘惑できたので操れる筈だ……よし、やってみっか!
「よォし、それじゃ手始めに……ソイツをぶん殴れ! 穴の開いた兜をかぶったオークだぞ、わかったな!」
「イイイイ……イエス…マム…ウグオオオオーッ!」
「お、おい、何をする、やめッ……ブギュッ!」
「テ、テメェ! この野郎! オラアアアッ!」
「お、なんだなんだぁ! 喧嘩をするなら俺達も混ぜろやァァァ~~~!」
お、おいおい、イエスマムって、俺はお前の上司の軍人かよ!
まあ、とにかく、俺が放った誘惑光弾を食らったコトで下絶対服従の下僕と化した肌がピンク色に変色し、オマケに両目はハート型に変化したオークが、仲間の一体に殴りかかる――お、そんなワケで。他のオークも加わり、あっと言う間にオーク共は、俺達がいるコトを忘れて仲間同士で殴り合いを始める。
所謂、仲間割れってヤツだな。
だが、今が金髪ガングロギャルのような女兵士ことアルシアを追いかけて氷室内に駆け込んできたオーク共を一掃できるチャンスかも――。
「サキュラ、誘惑光弾を破壊の力に変えて、もう一度、放ってみるんだ」
「え、破壊の力に変えて、もう一度、放てだと⁉ でも、どうやって……」
「そうだな。心の中で念じてみろ。何かが爆発するイメージを思い描きながら、心の中で銃爪を引くんだ」
「あ、ああ……やってみる……」
アルシアを追って氷室内に駆け込んできたオーク共を一掃できるチャンスだな――そう思ったけど、どうやって奴らを……悩むところだ。
その前にデュシスが、先ほど、俺が無意識のうちに放った誘惑光弾を破壊の力に変えて、もう一度、放って言うけど、それがあっさりできれば困るコトはない。
うーむ、オマケにデュシスは何かが爆発するイメージを――そう言うけど、それが中々、思い浮かばないんだよなぁ……。
「うぐぐ、全然、思い浮かばないッ……こうなりゃヤケクソだ! お前ら……みんな爆発しろォォォ~~~!」
「イ……イイイ……イエスマム!」
「えっ⁉ う、うわーッ!」
ちょ、お前が爆発してどうなる!
ちゅどぉぉぉ~~~んッ——と、誘惑光弾を食らったコトで、俺の言うコトには、なんでも従うようになった下僕化したオークの身体が、ピンク色の発光し、その直後に轟音とともに爆裂するのだった。
だ、だけど、奴が爆裂したコトで仲間割れ中のオーク共が発生した爆風の奔流に飲み込まれたぞ……おお、なんだかんだと、これは僥倖なのかも⁉
「しかし、何故、アイツが爆発したんだ?」
「恐らくは、お前の誘惑光弾を食らったモノは、意のままに操れる爆弾と化すのだろう」
「そ、そうなのか……」
「はうう、そんなコトより、爆発の被害を受けました……」
「う、うお、メリッサの右腕の二の腕から下がもげてしまっているーッ!」
「あ、大丈夫です。私はゾンビですので修復さえしていただけるのあれば、この程度の損傷ならピンピンしているレベルですよ☆」
「ほ、本当にゾンビなのか、お前……」
「あ、そうだ。この糸で吹っ飛んでしまった部位を縫い合わせてください。それで治りますので――」
俺が無意識のうちに放った誘惑光弾には、対象を操るだけでなく、対象を爆弾に変えるコトもできるようだ。
これが魔族の——夢魔の力なのか⁉
さて、メリッサは本当にゾンビのようだ。
右腕の二の腕から下が、先ほどの爆発に巻き込まれて吹っ飛んでしまったにも関わらず、まるで何もなかったかのようにピンピンしているしね。
だけど、ドクドクと流れ落ちる夥しい血が痛々しい……えええ、もげた右腕の二の腕から下の部位は、糸で縫い合わせれば治るって⁉
「よ、よし、よくやった! まあ、称賛に価する行為だ」
「フン、流石は魔族だね。よくやったと称賛するよ」
「ぬう、それが褒めているって態度なのかぁ?」
「なんだとぉ! それはともかく、これで安心してタンタロズを捕えに行ける」
「その前に、あたしの仲間を助けてほしいんだけど……」
「役に立つか、それとも役に立たないよりは、数が多い方がイイな。捕まった連中を助け出しに行こうか」
ジンフリードとエティエンヌ親子に称賛されても全然、嬉しくないんだが……。
いや、その前に人を称賛するって態度ではない。
フン——と、鼻で笑いやがって……むしろ馬鹿にしているって感じだ。
それはそうとアルシアの仲間達――マーテル王国兵の一部が、オーク共に捕まっているんだったな。
とりあえず、ソイツらを助け出してから、オーク共のボスであるタンタロズを捕まえる――とまあ、そんなプランを採用してみるか。




