外伝EP13 サキュバスに転生したんですけど、何か問題でも? その4
魔族という存在は、神々の敵——つまり魔王とか天魔とか、とにかく、〝悪魔〟のコトである。
へえ、悪魔がいるのか……兎天原は幻想世界のようだな……アハハハ、俺はトンでもない世界へ来てしまった感を凄く感じるぜ。
で、俺——真名をド忘れてしてしまった馬鹿野郎ことサキュラ(仮も魔族の一員のようである。
だが、俺は人間のつもりだ……誰がなんて言おうと人間のつもりだ!
さて。
「お前、夢魔なのか? 魔族の古老がやって来たと思ってビビったぜ!」
「つーか、隊長。大人の姿をした魔族——古老は、通称、魔王ですよ。あの手の類は、兎天原の南方から出てくるなんて稀だって話じゃなかったッスか?」
「え、そうだっけ?」
「そうッスよ! 好奇心旺盛な若い少年少女の姿をした魔族と違って古老達は、面倒くさがり屋な〝ヒッキー〟が多いって話を聞いたばかりじゃないッスか!」
「え、えええ、なんだか意外! 通称、魔王と呼ばれる魔族の古老が、まさかヒッキー……引きこもりばかりだなんてッ!」
うへぇ、意外な話を聞いてしまったぜ。
魔族の古老達――通称、魔王と呼ばれるような連中が、まさかまさかの引きこもりばかりだなんて話を……。
その前に、幻想世界(?)である兎天原にも引きこもりの俗称であるヒッキーって言葉があるだなんて――コイツも、なんだかんだと、意外だぜ。
それはともかく、俺と栗鼠の獣人デュシスは、エフェポスの村の平和と治安を守護るモノ達——エフェポス警備隊の屯所へとやって来る。
「これが今の俺か……」
「美人だが地味だな。眼鏡がダサいと思う」
「う、うっせぇ! どうせ、この眼鏡は安モノさー!」
さて、俺は洗面台の鏡に映った自分の姿をジッと見つめている。
性転換してしまった自分の姿を初めて見るワケだし、なんだかんだと、気になってしまんだよなぁ。
うーん、容姿端麗でスタイルはイイ方だと思うが、全体的には地味な方だな。
つーか、かけている眼鏡がダサいは余計だ。
俺としては、それなりにお気に入りの眼鏡だったりするワケで――。
ああ、着ている服装が黒いジャージ上下というのもダサいって言われる理由なんだろうか……。
「ああ、そうだ。お前、俺達の仲間にならないか?」
「え、仲間に? それってエフェポス警備隊の一員にならないかってコト?」
「その通りだ。なんだかんだと、人手不足なんだよ」
お、クロウサヒコからエフェポス警備隊の一員にならないかって勧誘されたぞ!
こりゃ、兎天原とかいうワケのわからん世界へ来て早々、仕事が見つかるチャンスかも――どうする、俺。
「ふむ、サキュラを仲間にしたい理由……なんとなくわかったぞ。よし、私が許可しよう」
「おお、デュシス様! 相変わらず、ご決断がお早いですね。まあ、そういうコトだ。隊員のひとりとして、よろしく頼む」
「ちょ、勝手に決めんなよなーッ!」
あのぉ、もしもし、俺はまだエフェポス警備隊の一員になるなんて決めちゃいないぞ!
ま、まあ、即、仕事が決まったワケだし、ありがたい話ではあるが――。
「さてさて、新しい隊員が加わったコトだし、早速、例の仕事に取りかかるとするか――ッ!」
「え、ええ、早速、仕事があるワケェ⁉」
うお、早速、何かしらの仕事が!
れ、例の仕事……お、おいおい、ヤバそうな匂いがしてきたぞ。
「なあ、どんな仕事に早速、取りかかるんだぁ?」
「ん、オーク退治だ。最近、ちょくちょく村に外に出没するようになってね」
「オ、オーク⁉ もしかして緑色の肌をした人間型の怪物……」
「その通りだ。しかし、奴らの容姿はわかりやすいとは思わないか?」
「あ、ああ、そうだなぁ……」
え、オーク退治⁉
オークとは人間型の悪鬼の筈だ。
その姿をありていに説明すると、斧や剣といった武器を携えた緑色の肌をした醜悪な小鬼だっけ?
うう、とにかく、ソイツらの退治が、俺の初仕事になりそうだ!




