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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
729/836

外伝EP13 サキュバスに転生したんですけど、何か問題でも? その2

 そういえば、まだ名乗っていなかったな。


 俺の名前は……あ、あれ、思い出せない……いや、名前を忘れてしまったようだ。


 おいおい、何故だ……何故、名前を忘れてしまったんだ!


 ついさっき自宅の階段から転げ落ちたコトだって、バッチリ覚えているのに――。


 とりあえず、真の名前を思い出すまでの仮の名前を考えておく必要がありそうだ。


 さてさて。


「何、男だって? ハハハ、何を言ってる。誰がどう見ても、お前は女だ。それもスタイル抜群で妖艶な——人間の男ならイチコロだろうさ」


「は、はあ、信じられんけど、本当のようだ。うう、なんだか胸が重い……オマケにあるモノがない……」


 信じられないコトが、俺の身に起きたようだ――性転換(トランスセクシャル)という名の不可解な出来事が!


 そのせいか胸が重いし、股間にあるべきモノがなくなっている……。


「魔族でも夢魔と呼ばれるモノ達は、基本的は無性と聞いたコトがある。だが、〝対象物〟に合わせて男にも、それに女にも、その身を変化させられるようだが、今はお前は性別が女の状態だけなのでは?」


「それならいいんだけど……」


「フフ、まあ、そう気を落とすな。おっと、そろそろ嘆きの森の出口だ」


「あ、ああ、そうみたいだ……ん、しかし、ここら辺には特に亡霊共が多いな」


「うむ、連中は、この森の外に出ようと必死なのだろう。だが、どう足掻いても連中は外に出られないようだ」


 魔族でも夢魔と呼ばれる連中は、基本的は両性具有——要するに、男女両性を兼ね備えた存在というワケね。


 で、必要に応じて男にも、そして女にもなれる……ちょ、意外と便利な身体だな!


 それはともかく、嘆きの森の出口が見えてくる。


 だが、ここら辺にいる亡霊共の数が半端じゃない。


 斬首された自身の頭を抱えたモノ、地面を這いずる下半身のないモノなどなど、禍々しく、そして痛々しい姿のほのかの光って見える亡霊の姿が、真っ暗闇の嘆きの森の出口付近を見渡すと、あっちこっちに見受けられる!


『ウウウ……助ケテ……ケテケテケテ……』


『苦シイィィ……シイイイイ……シイシイィ……』


『外ニィィ……出タイ……タイタイ……外ニ出タイィィ……』


「う、うええ、亡霊共の言葉が聞こえる。アイツら、みんなもがき苦しんでいる……」


 俺には亡霊共の声が聞こえる。


 もがき苦しむ呻き声が――。


「放っておくがよい。イチイチ気するコトじゃない。嘆きの森では、いつものコトだ」


「い、いつものコト? 流石に、この森に棲んでいるコトだけはあるなぁ……」


「ああ、それもそうだなぁ……ああ、忘れていた。ここら辺には悪質なモノも、けっこう集まってくるコトを――」


「悪質なモノ⁉」


「アレなんてイイ例だと思う。ほら、ほのかに光っている亡霊共の中に赤みがかったモノがいるだろう?」


 嘆きの森の出口の周辺に集まる数多の亡霊の中にも、当然、悪質なモノも混じっているワケだ。


 ソイツの特徴は、ほのかに赤みがかった光を――いたッ!


 しかも、すぐ近くに――。


『ウウウ、ウガガガアア……生者発見……ソノ身体ヲ寄越セェェェ~~~!』


「むう、ヤバい展開だ。奴め、憑依する気だな!」


「憑依⁉ 肉体を奪おうって魂胆なのか?」


「うむ、その通りだ。我々、生者の身に憑りつけば、この嘆きの森の外に出るコトが可能になるというウワサを聞いたコトがある」


「な、何ィィ! じゃあ、さっさと外に出よう!」


 取り憑かれるなんて冗談ではない!


 嘆きの森の出口は、すぐそこだし、全速力で出口に向かって駆け抜けなくちゃ――ッ!


「よし、森を出たぞ。もう追っては来ない筈だ」


「あ、ああ、それは良かった……って、こっちをジッと見てるぜ。あの亡霊……」


「うむ、余程、嘆きの森の外に出たかったのだろう。さて、アレを見るんだ」


「ん、村? ああ、そういえば、さっき村があるって言ってたな」


 ほのかに赤く光る亡霊を筆頭とした亡霊共は、何故かは知らないけど、嘆きの森のから出るコトができないんだったな。


 そんなワケで出口のところから、俺とデュシスをジッと見つめている……こ、こっち見んな!


 さて、嘆きの森の外に出ると同時に、デュシスが先ほど言っていた村と思われるシルエットが、俺の双眸に映り込むのだった。


 よォし、とりあえず、向かってみるか――。


 あそこへ行けば、何故、こんなワケのわからない場所に来てしまった理由がわかるかもしれないしな。

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