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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP12 男装王女とホッキョクグマ その24

「これで決めてやる! 大熱波——ッ!」


「うわ、熱ッ……こ、これ以上、近寄ったら黒焦げになっちまいそうだ!」


「ハハハ、シロクマじゃなくてクロクマになっちまうな、由太郎☆」


「う、うるせぇ! とにかく、今はアイロディルテの側にいると危険だーッ!」


 大熱波⁉


 その名の通り、高熱の波動を放って邪神雪像の真っ黒な巨体を一瞬で溶解する決め技的な魔術か?


「え、巨大な右手のカタチをした赤い光を放ったぞ⁉」


「熱光線ってヤツかもな」


「それより、アレを見るッス! 邪神雪像の巨体が一瞬で溶けたッス!」


「ヤ、ヤス! お前、凍ってなかったっけ?」


「ああ、アレは一瞬ッスよ、一瞬☆」


「は、はあ、そうなのか……そ、それは良かった」


 邪神雪像は真っ黒な巨体は、なんだかんだと、雪の塊である。


 そんな身体だし、当然、大熱波——右手のカタチをした熱光線を浴びりゃドロドロに溶けて蒸発するワケだ。


 あ、でも、呆気なく溶けちまったな……これで本当の終わりなのか⁉


「「「アーッ!」」」


「お、おい!」


「ウ、ウウウ、ウグエエッ……ぶ、分離しちゃったね」


「むう、余分なモノのせいで合体時間が短縮されちゃったわね」


「ちょ、その余分なモノって私のコトォ!」


 パンッ——と、そんな軽い破裂音とともに、長身でスタイル抜群の赤い髪の美女という容姿のアイロディルテの姿が、小柄で地味で、そして冴えない眼鏡の女のコという愛梨の姿に戻るのだった。


 ちなみに、合体を解除すると、アフロディーテとアスタルテは愛梨の口の中から出てくるのね……。


 合体する時も、合体を解除する時も、物凄く苦しそうだ……そ、その前に顎が外れないのかぁ⁉


「今、合体を解除すべきじゃないだろう? 邪神雪像は、まだ〝健在〟だぞ!」


「え、健在ですって⁉ ん、もしかして、あの球体のコトを言っているのかな、かな?」


「ああ、その通り……つーか、アレって邪神雪像の中枢……(コア)なのかも⁉」


 邪神雪像は、なんだかんだと、未だに健在している。


 ただし、赤い血管にような筋状のモノが、あっちこっちに見受けられる真っ黒な球体状の中枢器官——脳や心臓と同じ働きをするモノである(コア)かもしれないモノが、運良く溶解せずに残っている状態だしね。


 ちなみに、その大きさは西瓜くらいだろうか?


「まだ生きているみたいね。まったく、しぶといわね」


「あっちゃん、迂闊に近寄っちゃダメだよ!」


「大丈夫よ。アレには、もう戦う力なんて残っちゃいない筈だから……う、うわッ!」


「はぁ、戦う力が残っていない? その油断が命取りになるわね」


「あの状態だからって甘く見ない方がいいな。(コア)の状態だけど、邪神雪像は電撃を放つコトができるみたいだしな!」


 なんだかんだと、迂闊に近寄るモノじゃない。


 それを証明するとばかりに、轟ッ――と、触れた物体を一瞬で黒焦げにしてしまう轟雷の如き電流を邪神雪像の核が放出するのだった。


「危なく焼き鳥になるところだったな……ん、北京ダックかな?」


「ちょ、ふざけないで!」


「それより、アレじゃ近寄れないじゃん! どうするのよ!」


「うーむ、絶縁体の身体……ゴム人間じゃないと邪神雪像の核を触れないし、叩き割るコトもできんなぁ……」


 あの轟雷の如き電流に触れてしまったら一貫の終わりだ。


 対抗手段として絶縁体であるゴム製品を利用したいところだが、この世界――兎天原にゴムは存在しているんだろうか……。


「ゴムが欲しいのか? ここにあるぜ!」


「え、ゴム……絶縁体が⁉」


「ああ、コレな! この間、聖地アンザスから持ってきたモノがあるんだ」


「キョウ、それはゴム製のボール……なのか?」


 お、この世界にもゴム製品が⁉ それに聖地アンザス?


 とはいえ、電気を通さないモノ――絶縁体のゴムの塊をGET!


 し、しかし、その大きさはテニスとか野球用のボールである。


 そんな小さなモノで、どうやってアレを――。


「要するに、ソイツをあの核ってモノにぶつければいいワケね?」


「え、ぶつける⁉」


「うん、ぶつける……ああ、タダぶつけるだけじゃないわ。私の魔力で鋼の如き硬度に変えて投げつける!」


「よォし、なんだかんだと、コイツを由太郎じゃなくてマリエルに託すとしよう」


 キョウが言う聖地アンザスとやらが気になる一方で、アレを――ゴムのボールを邪神雪像に対し、自身の魔力で鋼の如き硬度に変えて投げつけるとマリエルが言う。


 俺が習得した熊術でも、ゴムボールを鋼の如き硬度に変えるコトができないんだよなぁ……。


 そんなワケだし、ここは彼女に任せてみるのがいいのかもしれない。


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