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EP8 俺、古代文明の遺跡で動くミイラと出逢う。その15

「う、動けん! どういうことじゃ、どういうことじゃ! か、身体が言うことを聞かん! うぎいいいっ!」


「無理に動かない方がいいぞ! 関節が外れてしまってもいいなら、ハイどうぞ!」


「何ィィ、どういうことだ! 貴様、わらわの身体に何をした!」


「ん、何もしていないぞ。俺は単に命令しただけさ――使い魔に動くなってね。」


「つ、使い魔だと!?」


「ああ、使い魔さ! アンタは俺の使い魔になったんだよ!」


「な、なんだってー!」


 ピルケは動くことはできないけど、喋ることだけはできる。


 そんなワケで大声を張りあげて驚く。


 ハハハ、なんか楽しいなぁ、こういう偉ぶった生意気な奴を好きにできるっていうのは!


 ま、とにかく、素直に使い魔になることを認めなそうだな、コイツ……。


「ふむ、使い魔としてお前に仕えるのもいいかもしれん。」


「えっ!?」


「わらわはとてつもない罪を犯したのじゃ。故に父上を激怒させ、あの石棺の中に生きたまま閉じ込められてしまったしのう。これはわらわの犯した罪を洗い流すための絶好の機会かもしれん!」


「む、むう……。」


 ちょ、予想外かも……。


 絶対に使い魔になんかなるものか――と、激しく抵抗するかと思ったのになぁ。


「さてと、これからわらわはお前の使い魔じゃ、よろしく頼むぞ……っと、忘れていた。」


「忘れていた?」


「うむ、わらわが目覚めると、ここが崩れるように設計されているらしいってことを――。」


「「「「な、なんだってー!」」」」


 うわあああ、それを早く言え……って、なんか地響きが聞こえないか!?


 うがー、ホントの話っぽいぞ、こりゃああああっ!


「やっべ、揺れが激しくなってきたな!」


「あ、ああ、さっさとここから出ようぜ、姐さん!」


「ひゃ、天井が崩れてきましたわ、お姉様!」


「うひゃあ、さっさと脱出だーっ!」


 天井が崩れてきたぞ! ドガッ――と、巨石が地面の落っこちてきたしな!


 こりゃさっさと玄室から出ないと生き埋めになっちまう!


「お、おい、ルビーの石棺をあのままにするのかよ! 一攫千金のチャンスがァァァ~~~!」


「兄貴、そんなことを言っている暇なんてないっす! 金よりも命っすゥゥゥ~~~!」


「兄貴、早く来いよ! まったく……。」


 確かに金より命だな!


 俺は渋る兄貴を抱きかかえながら、玄室の外へと飛び出す……ふ、ふうう、間一髪のところで崩れた天井から落下してきた巨石が命中するところだったぜ!


「うあああああ、俺のお宝がっ……。」


 兄貴は地面を転げまわって悔しがる。


 いい加減、諦めればいいのにねぇ……。


「兄貴、ルビーの石棺は諦めろよ。俺達は代わりとして、こんな滾々と沸き出す地下水脈を発見したんだし……。」


「う、うむ……。」


「欲深いウサ公だな。仕方がない、これをやろう。」


「お、おおお、これはサファイアの原石ではないか! 加工すりゃけっこうな値段で売れそうだぞ!」


 ん、ピルケは自身の身体を覆っているボロボロに朽ちた包帯の中から、人間の大人の親指ほどの大きさの青い石を取り出し、それを兄貴に手渡すのだった……え、サファイアの原石だって!?


「わらわの美しい身体を覆っている包帯のあっちこっちには、そこにいる欲深いウサ公に手渡したモノと同じモノが、まだあるかもしれん……お、あったぞ!」


「わお、それはエメラルドの原石!」


「うむ、父上の仕業だろう。いつかわらわが目覚めた時、金銭的に困らぬようにと――おっと、そんなことより、(マスター)に言っておくことがある。」


「え、主って俺のこと?」


「うむ、わらわの主は、アナタをおいてどこにいるというのじゃ? さてと、わらわの身体は、さっきの不格好な器と同等の大きさの器に並々に満たされた水と同等の水分を定期的に摂取しないと砂漠で野垂れ死んだモノのような干乾びた乾燥遺体に近い形状になってしまうと言っておこう。」


「へ、へえ、そうなんだ……。」


 むう、ピルケの身体は油断すると、砂漠で野垂れ死んだ人間の末路である熱砂と天空で燦々と輝く太陽の熱によって水分を奪われ自然乾燥した遺体のような形状になってしまうようだ。


 故に、定期的にバケツ一杯分の大量の水を摂取する必要があるみたいね。


 ふえええ、面倒くさい身体だなぁ……。


「ま、そんなワケだ。今後ともよろしく!」

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