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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
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外伝EP12 男装王女とホッキョクグマ その15

「サムイ……サムイ……アタタカイコーヒーガノミタイ……」


「お前、喋る余裕があるのかよ!」


 バリスの奴、カチンコチンの氷漬けの状態ながらも、なんだかんだと、喋る余裕があるようだ。


 タフなのか、それとも無理をしているのか――。


 とにかく、そんな氷漬け状態のバリスをエフェポスの村にある商店街の噴水広場へと運ぶのだった。


 アジトの近場ってコトで――。


「ふう、重かった……。んで、コイツをここに運ぶコトでお前の糞兄貴……マーデルを誘き出るんだろうな?」


「うん、兄上は多分……いや、間違いなく商店街のどこかに潜んでいる筈よ。こういう場所が大好きな人だからね」


「へえ、そうなのか」


 フーン、商店街のどこかに潜んでいるのか――。


 ま、身を潜めるなら丁度いい場所だなぁとは思う。


 エフェポスの村があるのは、兎天原の東方の辺境だ。


 そのせいか希少動物の宝庫だったり、未だに数多の未発掘状態の古代遺跡が数多く存在していたり、オマケに金山、銀山、何かしらの宝石の原石が採掘できる鉱山なんかも点在しているようだ。


 とまあ、そんな一攫千金を得られるスポットが多い故、冒険者達の穴場的場所、そして考古学者を筆頭とした学者連中、大半が砂漠地帯だって話の兎天原の南方へと向かうキャラバン隊が中継点として利用しているんだとか――。


 故に、ソイツらの中に紛れ込んでいるんだろう、多分。


「お、ソレは出来のイイ氷像だね」


「うわぁ、物凄くリアルだね。まるで本物の人間がカチンコチンに凍りついたみたいだね、コレ」


 本物です、本物の人間が氷漬け状態になったモノですよ、お客さん。


 さて、氷漬け状態のバリスが物珍しかったのか、商店街にドッと野次馬が押しかけてくる。


 ったく、物好きだなぁ、季節は冬なんだし、オマケに村の外は雪だらけってワケだし、好きだけ氷像&雪像をつくれるのにねぇ。


「ん、人間の姿もちらほらと見受けられるぞ」


「マリエル、クソ兄貴は、あの中にいる?」


「うん、探してみる……意外と人間が多いわね。ま、でも、わかりやすいんだよね。ちょっとした特徴があるしね」


「ちょっとした特徴⁉ ん、ちとキツい薔薇の香水の匂いが漂っているんだが、まさか!」


 エフェポスの村は獣人の村である。


 が、なんだかんだと、人間の姿も見受けられるんだよなぁ。


 まあ、七対三の割合で少数派ではあるが、エフェポスの村の住んでいる人間もいるようだしね。


 それはともかく、俺の鼻腔をキツい薔薇の香水が刺激する。


 誰だよ、薔薇の香水をかけすぎだっつうの!


 ん、待てよ、マリエル曰く、兄のマーデルには、ちょっとした特徴があるらしいけど、もしかして――。


「くっせぇ! 香水のイイ香りが、これじゃドブ川の悪臭と同じだぜェェェ~~~!」


「そ、そうッスね、兄貴。かけすぎは良くないッス」


「くはぁ~……鼻が痛い! どこのどいつだ! 薔薇の香水をこれでもかってくらいぶっかけてる奴は!」


「むう、アイツだ。あの如何にもキザな色男だ!」


 拡散させるコトで擬似的とはいえ、花園にでもいる気分を味わえるのが香水ってモノなんだろうけど、かけすぎちゃいけないな。


 それのせいで鼻腔を強烈に刺激する悪臭に変わってしまうモノだしねぇ……。


 うー……しかし、キツいな……これじゃ香水の意味がないじゃん!


 ハニエルはドブ川の悪臭と同じだって言うけど、それとはまったく違った不快なニオイを漂わせる如何にもキザな色男の姿が、野次馬の中に見受けられるぞ。


「うわ、間違いないッ……アレは私の兄だ! 兄のマーデルだ……おっと、変装しなくちゃ!」


 えええ、あの色男がマーデル⁉


 さて、そんなこんなでバレてしまっては不味いとばかりにマリエルは変装をする。


 とはいえ、帽子をかぶっただけなんだよなぁ……。


「うぬぅ、アレは大親友バリスが人間に変身した時の姿にそっくりなのだが、ボクの気のせいなんだろうか? 君はどう思う?」


「さ、さあねぇ……」


 刺激臭のような強烈な薔薇の香りが、コイツが動く度に、ブワッと拡散し、俺の鼻腔を刺激しやがる。


 とまあ、周りに迷惑をかけているなんて露とも知らないマーデルが話しかけてきたぞ。


「うーむ、やっぱり、アレはバリスだ。しかし、何故、あんな目に……君、理由を知っているかい?」


「多分、何かしらの悪さをしたんでしょうね。それで、その悪さの報いを受けているんでしょう」


「悪さの報い? ハハハ、そんな筈はないさ。このボクもだけど、大親友のバリスも一日一善を心掛ける善人だからネ☆」


「は、はあ、そうなんだぁ……」


 むう、一日一善を心掛ける善人だって⁉


 実の妹を多額の賞金首として陥れた奴が、何を言うってヤツだ。


 どうでもいいけど、単に帽子をかぶっただけという単純極まりない変装をした実の妹のマリエルが、すぐ側にいるんだが、そのコトにマーデルの奴は、まったく気づいていない様子である。


 おいおい、普通なら即、気づくぞってレベルだと思うんだが……。

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