EP1 俺、魔女になります。その3
さてと、あれから数日が経過する。
んで、なんだかんだと、連日のようにマーテル王国の王墓絡みのニュースが新聞に大々的に載っているんだよなぁ。
とはいえ、犯人である兄貴とヤス、それに俺に結びつく情報は、何ひとつないワケだ。
このままほとぼりが冷めてくれりゃいいが……。
ああ、説明を忘れていたな。
件のマーテル王国だけど、兎天原にある建国から八百年を数える歴史ある王政国家みたいね。
でも、広大なケモニア大陸においては中堅勢力に過ぎない上、兎天原には、オリン山の天空姫とポース山の女帝という我こそはケモニア大陸の支配者である!
なんて自称している女神が住んでいて、頭は上がらないとか――。
ま、それはさておき、俺はブックスの師事されるかたちで魔女となる修行を始めるのだった。
「おお、キョウさん、魔術を覚えるのが早いっすね! 流石は魔法少女っす!」
「おい、魔法少女って年齢じゃないだろう、アイツは……。」
「え、そうっすかぁ?」
「うっせぇな、修行に集中できん!」
うーむ、魔術を覚えるのが早いのかどうかはわからんけど、俺が覚えたモノは指先に小さな火を灯すことと、ほんの数センチのみ地面から浮遊できるようになった程度である。
ブックス曰く、レベル的には基礎中の基礎を覚えた程度だとか……ハハハ、そりゃそうだよなぁ。
肉体は別物とはいえ、俺がこの世界へやって来て数日しか経ってないしね。
「なあ、俺はいつか人間になりたいと思っているんだが、そんな俺も魔術の修行をすれば人間になれるよな?」
「人間になりたい? それなら、402ページを読んでみるんだ。そこに人間に変身させる方法を記されている筈だ。」
「402ページ? じゃあ、表紙を開くぜ、ブックス。」
ブックスは表紙にダンディーなヒゲのオッサンの顔がついていて、オマケの喋ることができるモノではあるが、なんだかんだと本なんだよな。
そのことを忘れちゃいけない。
ああ、魔道書という禁書指定されている本らしいね、コイツ。
そんなワケでトンでもない禁断の知識が記されているのかもしれない。
「ん、呪文が記されているね。ええと……ヌコネコ、コネソク、エミエミ、カタクォト、スゲリドロ? 変な呪文だなぁ。」
「うんうん、ホントに変な呪文っす……わあ、兄貴の身体が光り出したっす!」
「ウギャアアアッ! 身体が熱い! 熱いィィィ!」
「あ、兄貴ィィィ~~~!」
むう、ブックスの402ページに記されていたヘンテコリンな呪文を唱えた途端、兄貴の身体が光り出す!
「一体、何が起きるんだ!?」
「まあ、見ているんだ。これから〝面白い現象〟が起きるからな。」
「面白いこと!? お、おわああ、兄貴が人間の姿に!」
「うーん、それはいいんすけど、兄貴ってメスだったんすか!」
「ちょ、それは俺にも……っつーか、お前の方が長いつき合いだろ、ヤス!」
おわー、兄貴が兎の耳はそのままだけど、一糸まとわぬ素っ裸の金髪碧眼の美女の姿に変化した!
あの妙な呪文のせいか!?
「お、俺は人間に変身できたのか! ひゃっほうォォォ~~~!」
「あ、兄貴、とにかく、服を着なよ、服を……」
「服だって? は、そんなモノはいらん!」
「え、えええーっ!」
「俺はこのままでいいんだ!」
「き、聞いたことがあるっす。人間の中にはわざと裸を見せたがるヘンテコリンな思考の持ち主がいるって……。」
「う、うん……あ、元の兎の姿に戻ったぞ!」
「仕方がないさ。素人魔女のキョウが唱えた呪文で変化したワケだしな。」
兄貴の姿が、二足歩行の兎の姿から、一糸まとわぬ素っ裸の金髪碧眼の美女の姿に変化したのは、ほんの一、二分程度である。
ふむ、俺の能力が上がれば、さらに長時間、兄貴を人間の姿に変化させていられるかもしれないな。