外伝EP11 雪の女帝とホッキョクグマ その40
太陽の光に弱いとか、星の子って奴らは吸血鬼と同じかよ。
ん、待てよ?
奴らは遥かなる神話の時代に於いて、宇宙の暗闇からやって来たのは?
故に、太陽の光が弱点の筈がないと思うんだが……。
ま、まあ、とにかく、奴らの弱点がわかったんだ。
今なら逃げられる筈だ!
「「「「オ、オオオ、光……大嫌イィィィ~~~!」」」」
「ギャッ! なんて金切り声だ! 頭がジンジンする!」
仲間が空中溶解する様を目撃した星の子の大群が一斉に、恐怖心を抱き音程が歪みに歪みまくった金切り声を張りあげる!
う、頭がジンジンするッ……金切り声、侮り難し!
危なく意識は飛んでしまうところだったぜ……。
「お前ら無事か?」
「あ、ああ、なんとか……」
「当然! 蛇女、このわらわを誰だと思っている?」
「ん~……赤い髪のチンチクリン?」
「うわー……わらわはキュベレ……女神だ! そんなわらわに対し、チンチクリンとは不敬な物言いだぞォォォ~~~!」
「おお、それは悪かった☆ それはともかく、女神様、アンタが一番、元気そうだから頼む。私達の周りに生えている木の葉っぱを全部、吹っ飛ばしてくれ。当然、出来るだろう?」
「当たり前だ。私をナメんな……うりゃー!」
キュベレはなんだかんだとチンチクリンな身形を気にしているようだ。
それはさておき、ミューズさんが、そんなキュベレをからかいつつ周囲に生えている木の葉っぱをすべて吹っ飛ばしてくれ——と、頼むのだった。
「あ、ああ、なるほど、邪魔な木の葉を取り除いて一気に星の子を叩きのめすってワケね。アイツらは太陽光が弱点らしいし――」
「見て! 周りに木の青々と生い茂った葉っぱが独りでに散っていく!」
「わ、眩しいッ……だけど、これで奴らを一気にやっつけられるわね」
「ニャハハッ! わらわは女神よ。周囲に生えている木の葉を一斉に散らせるなんて当たり前ってもんよ☆」
見た目はチンチクリンな赤い髪の女のコだけど、なんだかんだとキュベレは女神だな。
そんなワケで大自然の力(?)を操り、俺達の周囲に生えている木を破壊するコトなく枝に鬱蒼と生い茂った葉っぱだけを一斉に散らせるのだった。
「ガ、ガアーッ!」
「グ、ギャバババ!」
「ホ、ホホ、ホンゲェェ!」
「おお、太陽光は効果抜群だな!」
「日光消毒って感じ?」
星の子共が一斉に悲鳴を張りあげる。
周囲に生えた木の葉っぱが一斉に散ったワケだし、そりゃ奴らの弱点である太陽光の浴びる量が尋常ではないしな。
むう、だが、中々、溶けないな……ったく、しぶとく耐えているのかも⁉
「ん、一体だけ残ったな。アイツ……もしかして星の子共のリーダーか⁉」
「だろうね。しぶとさが他の個体より上って感じだし」
「ヌアアアッ……俺ハ消エルワケニハイカンノダ! 消エルワケ……ニハァァァ!」
「お、おお、突っ込んできた!」
「ホ、ホゲェェェ! ボシュウウウウッ!」
「や、やっと太陽光によって浄化した……のか? う、だけど、臭い液体をまき散らすなっつうの……」
ふ、ふう、やっと星の子共が消滅したぜ。
だけど、リーダー的存在は消失する前に悪臭を放つ液体を撒き散らす。
硫酸とか肉体的に害のある液体ではなく単に強烈な悪臭を放つ液体のようだけど、それを浴びてしまったよ……。
「くさっ! 超臭いんですけど!」
「ち、近寄るな!」
「うえええ、洗っていない犬の臭いが、更に強烈になった感じだ……オエエエッ!」
「うくぅ、シャワーで洗い流し気分だぜ……」
「そんなコトより、あのコは誰? 釣り目で赤い長い髪をツインテール状に束ねた……キュベレさんに似た雰囲気がする巨大な狼に跨った女のコが、影の森の入り口にいるのです」
「ム、ムムムッ……アイツはまさか⁉」
「え、知り合いか?」
「ま、まあ、そうだが……くせぇ!」
「うう、くせぇくせぇってみんなで言いやがって! とにかく、誰だよ、アイツ……」
星の子共は全滅したのに……一難去って、また一難なのか⁉
なんだか面倒くさそうな輩が、影の森の入り口のところで待ち構えている。
ソイツはキュベレ絡みっぽいので余計に面倒くさそうだぞ。
ったく、何者なんだぁ……ん、ひょっとキュベレのお仲間である女神の一柱なのか⁉
「アイツは……あの女は……雪の女帝だ!」
「な、なんだってー! うーん、イメージがなんか違うなぁ……」
雪の女帝だと⁉
ちょ、なんだかトンでもない奴が現れたぞ。
むう、とにかく、どんな用事で現れたのやら……。




