外伝EP11 雪の女帝とホッキョクグマ その34
どんな場所にあろうとも宝箱を発見した場合、間違いなく鍵がかかっている筈だ。
オマケに、そんな宝箱を無理矢理、開けようとすると何かしらの罠が発動するに決まっている。
うーん、箱を開けるor箱を開けない……。
だが、選択肢はひとつである……開ける方だ!
しかし、肝心の宝箱に施された南京錠のような錠前の鍵がないんだよなぁ……。
「フン、なんだかんだと、こんな錠前を開けるなんざぁ、朝飯前よ……ね?」
「お、おお、呆気なく開いたぞ! あ、でも、罠が発動しそうだ……」
な、何ィィ!
玄室の床に見受けられる穴の中にあった宝箱に施された南京錠のような錠前だけど、呆気なくアスタルテが開錠してしまう。
ちょ、こうも呆気ないと罠が発動しそうで怖いんですけど!
「……開けるわよ」
「え、ええ……」
「おい、なんて宝箱を開けないんだ? まさか罠が発動しそうで怖いのか?」
「そ、そんなワケないじゃん!」
「そうよ、そうよ! あ、そうだ……アンタが開けなさいよね!」
「え、俺がぁ? ま、まあいいが……南無三!」
お、俺に開けろって?
だ、だが、誰かが開けなくちゃいけないよな……く、南無三!
俺は意を決し、宝箱の蓋を開けるのだった。
「ん、火薬臭がしない?」
「う、うん……って、まさか⁉」
「う、うお、宝箱の中に導火線に火のついたダイナマイトがァァァ~~~!」
「ちょ、何、余計なコトをしてんのよ!」
「そうよ、そうよ! 余計なコトをしちゃってさぁ!」
「あ、開けろって言ったのは、お前らだろうが……う、うわああ、爆発するゥゥ!」
た、宝箱を開けた途端、中に仕掛けられていた導火線のようなモノが見受けられる筒状の物体が飛び出してくるのだった……ちょ、ダイナマイトじゃないか、おい!
オマケに、導火線には火がついているじゃないかァァァ~~~!
宝箱を開けたモノを爆破する仕掛けに、俺はまんまと引っかかっちまったようだ……うわああ、その刹那、宝箱の中から飛び出してきたダイナマイトが、轟音を奏でながら炸裂するのだった!
「うわあああ、爆死、爆死するぅ……あ、あれぇ?」
「ふ、ふう、何もなかったわね……」
「い、今の爆発を何だったのかしら……」
「知るかよ。だけど、俺達は命拾いをしたようだ」
な、なんだぁ、コケ脅しかよ……ビックリしたなぁ……てっきり爆死したかなって思ったよ、ホント……。
し、しかし、あのダイナマイトなんだったんだ?
轟音を奏でて間違いなく爆発した筈なんだが……。
「お前ら、運が良かったな。今の爆発音から考えると多分、即死爆音の罠が仕掛けられていたっぽいな」
「ミュ、ミューズさん、即死爆音の罠?」
「ありていに言うと、聞いたモノの心臓や脳みそ爆発させる爆音を発生させるモノだったかな……確か?」
「な、なんだってー!」
ミューズさんの声が聞こえてくる……ちょ、聞いたモノの心臓や脳みそを爆破する爆音を発生させる罠が発動した…だと…⁉
あ、あのダイナマイトがソレか……。
だが、なんだかんだと、不発に終わったっぽい。
だから、俺達は確かに運がイイ……助かったようだ。
心臓や脳が爆発し、即死するコトがなかったワケだし……ホッとしたわぁ、マジで……。
「さてさて、宝箱の中を改めて……ん、赤い色の宝石と緑色の宝石は入っているぞ」
「わあ、仄かだけど、暖かみのある光を放っているわね」
「ん、赤い石と緑の石を見て早春の魂、真夏の魂って宝石にまつわる神話のコトを思い出したわ」
さてさて、改めて宝箱の中を覗いてみるか――お、赤い色の宝石、そして緑色の宝石が見受けられる。
んで、アフロディーテが気になる神話を思い出したようだ。
よし、訊いてみるか、気になるしね。




