外伝EP11 雪の女帝とホッキョクグマ その33
俺自身も信じられないコトである。
兎天原の考古学者でさえお手上げな難解な古代文字——ウサルカ文字をなんとなくだけど読めてしまうワケだしね。
ん、じゃあ、読んでみろって?
ああ、そのつもりさ!
「それじゃ、読んでみるぞ。ええと……『我が墓は、ここではない。馬鹿め、騙されたな!』って読める」
「な、なんだと⁉ じゃあ、ここはニャガルタの墓ではない……偽物だったのか!」
「そ、そうなるんじゃないか? その石棺の破片に刻まれたウサルカ文字の意味が本当ならな」
うーん、当然だろうなぁ……と、俺は思うのだった。
仮にニャガルタ遺跡が、古代の大富豪ニャガルタの墓だった場合、簡単に見つかる代物じゃないと思うしね。
そんなニャガルタは、兎天原の古代世界において当時、東方を支配していた王を凌駕する財産の持ち主だったワケだし、死後に財産を狙うモノ達がいた筈だ。
現に、彼の墓を探し回るモノが絶えなかったという伝説が残っているらしいし――。
故に、ニャガルタは生きているうちに、いくつもの偽物の墓をつくっていた筈である。
俺だって同じコトを考えるぞ。
まあ、莫大な財産があればの話だけどね。
「やれやれ、何もないとは期待外れもいいところだ」
「ですなぁ。すでに盗掘され尽しているっぽいし……」
「あ、でも、ここは偽物のニャガルタの墓って感じの場所なんでしょう? じゃあ、あの壊れた石棺の中には、当然、何もなかったんでしょうかね?」
「さあな……ん、何をやっているんだ、熊公、それに黒アヒル?」
「ん……あ、ああ、ここに小さな穴を見つけてね」
「私なら潜れそうだわ。あ、でも、少し広げてみないとダメね。由太郎、ランタンの灯りで穴を照らしていてくれるかな?」
「穴を広げるなら、この私に任せろ! 穴掘りは得意なんだ」
おっと、忘れちゃいけない。
今いる場所は真っ暗闇の地下室である。
そんなこんなで照明器具のランタンや懐中電灯といったモノの灯りが、ここでは必要不可欠だったりするんだよなぁ。
幸いなコトに、ミューズさんやドリスを筆頭とした古代遺跡ぶっ壊し隊の連中が、携帯用の小型のランタンを所持していたので、何気に玄室内は明るかったりするワケだ。
それはともかく、俺とアスタルテは玄室の床に小さな穴を発見する。
んで、穴掘りが得意だというアタランテが、ガリガリと両前足の鋭い鉤爪を展開し、床の穴を広げていく。
「もういいわ。これくらいなら潜れるわ……あ、箱があるわ!」
「アスタルテ、それって宝箱じゃないの? ちょ、見せてちょうだい!」
「う、アフロディーテ、無理矢理、潜り込むな!」
む、玄室の床に見受けられる穴の中に宝箱がある…だと…⁉
おいおい、こりゃ、ある意味で大発見だぞ!
う、アフロディーテは俺を押し退けるカタチでアタランテが広げた床の穴の中に飛び込むのだった。
まったく、欲深いアヒルちゃんだなァァァ~~~!
「穴の中はけっこう広いわね。よし、宝箱を開けるわよ」
「ちょ、私が開けるんだ! ソレに触るんじゃない!」
「うっさいわね。私が開けるったら開けるのよ!」
「それは私の台詞だ、ゴルァ!」
「どうでもいいけど、鍵がかかっているぞ。その宝箱に……」
馬鹿だなぁ、鍵がかかっているだろう、絶対に――な、ビンゴだろう?
宝箱をランタンの灯りで照らすと、南京錠のような物体が、宝箱に取りつけられているしね。
うーん、こうなると開ける術を考えなくちゃいけないな。
なんだかんだと、中身が気になるしねぇ……。




