EP8 俺、古代文明の遺跡で動くミイラと出逢う。その12
「キシャアアアアーッ! フー、シャアアアッ!」
「お、落ち着けよ! 俺達は何もしないって!」
「シャアアア、キシャアアアッ! ガルルルルーッ!
「わあ、危ない! そんなモノを振り回すな! まったく……。」
むう、興奮して我を忘れてるな、このミイラ女は……ったく、これじゃ手がつけられない野生動物だな。
なんとか警戒心を解かないと、迂闊に近寄れないな、こりゃ……。
落ち着かせる方法を考えなくちゃなぁ。
「イイことを思いついた! これならイケる!」
「ん、フレイヤ、何か思いついたのか?」
「何、簡単なことさ。ほら、あの手の輩は飢えた犬猫と同じだよ。だから〝食べ物〟で釣るのが一番なんだぜ!」
「た、食べ物ぉ!? てか、誰か持ってるヤツいないかー!」
「クッキーなら兄貴が持ってるっすよ、キョウさん!」
「わあああ、ヤス、それは俺の……。」
「ヤス、サンキュー! よし、一緒にあの女をコイツで誘惑してみようぜ!」
なんだかんだと、フレイヤの思いつきに賭けてみよう!
あのミイラ女は飢えた犬猫だって!?
うーむ、数千年もの間、何も食べずにいたワケだし、食べ物を見せつける行為は効果絶大かもしれないな……。
とにかく、食べ物で釣れば落ち着くかもしれないな……む、しかし、よく生きていたなぁ、不死者だから?
「上手く釣れればいいが……。」
「近寄ってみるっす!」
俺はヤスと一緒に、警戒心丸出しのミイラ女のもとのジリジリと近寄りながら、兄貴からぶん取ったクッキーで、そんなミイラ女を誘惑してみるのだった。
「みゅ……みゃう?」
「お、興味を示したっすね!」
「ああ! おい、コイツを食べたかったら大人しくするんだ!」
「キョウさん、俺達の言葉がわかるワケはないっすよ。何せ、現代に甦った古代人っすからね……わ、クッキーを取られたっす!」
お、おおお、クッキーに興味を示したぞ……わ、シャッと一瞬だけ俺とヤスに近づくと、その刹那、ヤスが持ってるクッキーを奪い取る。
むう、まるで鮮魚店の店先から何食わぬ顔で魚を盗み取る野良猫のような早業だな。
で、奪い取ると同時に、バッと勢いよくルビーの石棺の上に飛び乗り、クンクンと毒が入っていないかと確かめるように入念のクッキーの匂いを嗅ぎ始める。
「あうあうあうあうあうっ!」
「な、何を言っているんだ、アイツ?」
「顔を覆う古ぼけた小汚い包帯を破き始めたぞ。」
「あの包帯があったら何も食べられませんしね。」
「その通りです! この包帯が邪魔で食べられないって言っています!」
「え、アイツの言葉がわかるのかよ、メリッサ?」
「はい、私は古代語にも精通しています。」
「つーか、あうあうとしか聞こえないんですけど……。」
あうあうあう――と、メリッサ曰く、古代語を口にしながらミイラ女は、顔面を覆う古ぼけた小汚い包帯を左手でバリバリと破き始める。
「むう、長い金髪と褐色の肌が露わになったな……あ、可愛い!」
「古ぼけた小汚い包帯の下は、まさか美少女だっとは!? 身体を覆う包帯も破きませんかね、ウフフフ……。」
「アシュトン君、何を期待しているんです!」
「お、怒るなよぉ! と、とにかく、何故、干乾びていないのか気にならないか?」
「うーん、その疑問は私も……って、誤魔化すな!」
「多分、あの包帯のおかげよ。アレは巻かれたモノを長期保存することを念頭につくられた神代の魔術道具だと思う。それに石棺の中が密閉されていたので数千年間、朽ちることがなかった――とまあ、そんな感じかな?」
「え、でも、それじゃ、窒息するんじゃ……。」
「まあ、そこら辺は世界の不思議ってことで!」
ま、まあ、なんだかんだと、あの古ぼけた小汚い包帯は、ウェスタ曰く神代の魔術道具なのかもしれない。
で、その恩恵と密封されたルビーの石棺のおかげってところだろう。
それが相まってミイラ女の身体は、干乾びることなくみずみずしい肉体を維持できているワケだ。




